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「まぁまぁ。ドレスはただのドレスであって、どう着こなすかが大事なんではないのかい? このお嬢さんは君と同じドレスを着ているはずなのに素敵にアレンジしていて全然違うものに見えるよね。君ならどうこのドレスに手を加えるんだい? 私はそれが気になって仕方がない」
レオノーラにグラスを渡した男性が、すっとビビアンとレオノーラの間に入り、にこやかにビビアンにそう言う。煽りや嫌味に聞こえるが、その男性は純粋な興味で提案しているようだ。
それまでは女同士の戦いみたいになっていた争いで男性は遠巻きになって眺めているだけだったが、女性ではなく、男性が表立ってかばってくれたことは大きかった。
ビビアンは予期せぬ物言いに、明らかにつまっていた。しかも、そこにまた新たな人間が増えた。
「レオノーラ! 今日も最高だね!」
レオノーラの幼馴染のフィリップだ。
今日の彼は姉のエスコート役としてレオノーラとは別口で園遊会に来ていて、この騒ぎにやや遅れて会場に到着していた。
ビビアンはそれを見越してこの騒ぎを起こしたのかもしれない。
レオノーラの味方しかしないフィリップがいたら勝算が悪くなるだろうから。
フィリップは空気をあえて無視するかのようにレオノーラに近づくと彼女を抱きしめる。
「レオノーラはどんな格好をしてても素敵だけど、そのドレスも可愛いよ」
「フィリップったら」
フィリップが子犬のようにレオノーラにまとわりついたことで、ビビアンはますます頭に血が上ったらしい。
「私のドレスのデザインを盗んだような性格が悪い女なのよ!? そんな女をよく素敵だなんて言えるわね」
そうフィリップに向かって突きつける。
「レオノーラ、あの子のドレスのデザイン盗んだのかい?」
「まさか」
「だろうな」
知ってた、と頷くフィリップ。そして彼はビビアンの方に向き直る。
「ごめん。俺にとってはドレスって、そんなに重要なものと思わないからどうでもいいし、たとえレオノーラが盗んだとしても許すし、そもそもレオノーラはそんなことする必要ないくらいお洒落で素敵だから盗んでないと思うよ。君は何を勘違いしているのかな?」
女のドレスは戦闘服。しかし、男にとってはどうでもいい。そんな男の本音というかお洒落を理解しない人間の気持ちを代弁するフィリップ。
「そもそもお洒落している姿は見てて綺麗だから楽しいけど、似合ってればよくないか? 流行とか追いかけたり、唯一のデザインとか、なんで大事なんだ? それに申し訳ないけど君にはそのドレスは似合っていると思わないんだよな。それがオリジナルなら、君のデザイナーはセンスなくない?」
そこまで言う必要ないじゃない、というようなことまでズケズケと言うフィリップに、本性を表したか、とレオノーラはため息をつく。幼馴染だから知っている。彼はこういうところがあるのだ。
可哀想にビビアンは青ざめてわなわなと震えている。
フィリップが言っていることは、レオノーラも思っていた。
同じようなドレスを着ていても、着ている人が違えばイメージが変わる。
言うならばレオノーラは長身でスレンダーであり、ビビアンは小柄でグラマラスである。
いつもレオノーラはビビアンを見ながら、自分のファッションなど真似しないで、ビビアンに似合うドレスを着ればいいのに、と思いながら彼女を見ていた。特に女としてその胸元は羨ましいのに。
「戻ってきた時間を考えるとドレスを着たまま作業をしたのだろう? 君は相当布に慣れているんだね」
目の前のイケメンは、そうレオノーラに囁いた。そしてそのまま興味深そうにレオノーラの姿を見ている。何をどう変えているのか、まるでそれを見抜こうとするかのような鋭い視線に居心地が悪くなった。
「あんまり淑女を見つめるのは失礼ですよ?」
「ああ、そうだね、申し訳ない。こんなに発想力豊かな人が、わざわざ誰かのドレスのデザインを盗む必要ないね」
フィリップだけでなく、明確にレオノーラの肩を持つその人に、ビビアンは悔しそうに足音高く、その場を去っていった。
レオノーラにグラスを渡した男性が、すっとビビアンとレオノーラの間に入り、にこやかにビビアンにそう言う。煽りや嫌味に聞こえるが、その男性は純粋な興味で提案しているようだ。
それまでは女同士の戦いみたいになっていた争いで男性は遠巻きになって眺めているだけだったが、女性ではなく、男性が表立ってかばってくれたことは大きかった。
ビビアンは予期せぬ物言いに、明らかにつまっていた。しかも、そこにまた新たな人間が増えた。
「レオノーラ! 今日も最高だね!」
レオノーラの幼馴染のフィリップだ。
今日の彼は姉のエスコート役としてレオノーラとは別口で園遊会に来ていて、この騒ぎにやや遅れて会場に到着していた。
ビビアンはそれを見越してこの騒ぎを起こしたのかもしれない。
レオノーラの味方しかしないフィリップがいたら勝算が悪くなるだろうから。
フィリップは空気をあえて無視するかのようにレオノーラに近づくと彼女を抱きしめる。
「レオノーラはどんな格好をしてても素敵だけど、そのドレスも可愛いよ」
「フィリップったら」
フィリップが子犬のようにレオノーラにまとわりついたことで、ビビアンはますます頭に血が上ったらしい。
「私のドレスのデザインを盗んだような性格が悪い女なのよ!? そんな女をよく素敵だなんて言えるわね」
そうフィリップに向かって突きつける。
「レオノーラ、あの子のドレスのデザイン盗んだのかい?」
「まさか」
「だろうな」
知ってた、と頷くフィリップ。そして彼はビビアンの方に向き直る。
「ごめん。俺にとってはドレスって、そんなに重要なものと思わないからどうでもいいし、たとえレオノーラが盗んだとしても許すし、そもそもレオノーラはそんなことする必要ないくらいお洒落で素敵だから盗んでないと思うよ。君は何を勘違いしているのかな?」
女のドレスは戦闘服。しかし、男にとってはどうでもいい。そんな男の本音というかお洒落を理解しない人間の気持ちを代弁するフィリップ。
「そもそもお洒落している姿は見てて綺麗だから楽しいけど、似合ってればよくないか? 流行とか追いかけたり、唯一のデザインとか、なんで大事なんだ? それに申し訳ないけど君にはそのドレスは似合っていると思わないんだよな。それがオリジナルなら、君のデザイナーはセンスなくない?」
そこまで言う必要ないじゃない、というようなことまでズケズケと言うフィリップに、本性を表したか、とレオノーラはため息をつく。幼馴染だから知っている。彼はこういうところがあるのだ。
可哀想にビビアンは青ざめてわなわなと震えている。
フィリップが言っていることは、レオノーラも思っていた。
同じようなドレスを着ていても、着ている人が違えばイメージが変わる。
言うならばレオノーラは長身でスレンダーであり、ビビアンは小柄でグラマラスである。
いつもレオノーラはビビアンを見ながら、自分のファッションなど真似しないで、ビビアンに似合うドレスを着ればいいのに、と思いながら彼女を見ていた。特に女としてその胸元は羨ましいのに。
「戻ってきた時間を考えるとドレスを着たまま作業をしたのだろう? 君は相当布に慣れているんだね」
目の前のイケメンは、そうレオノーラに囁いた。そしてそのまま興味深そうにレオノーラの姿を見ている。何をどう変えているのか、まるでそれを見抜こうとするかのような鋭い視線に居心地が悪くなった。
「あんまり淑女を見つめるのは失礼ですよ?」
「ああ、そうだね、申し訳ない。こんなに発想力豊かな人が、わざわざ誰かのドレスのデザインを盗む必要ないね」
フィリップだけでなく、明確にレオノーラの肩を持つその人に、ビビアンは悔しそうに足音高く、その場を去っていった。
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