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そんなある日、プリシラとエルドラのところに従弟がやってきた。ハルバートという名の彼はプリシラの婚約の知らせを聞き、婚約式の前にお祝いを告げにわざわざ来てくれたのだ。
「ハルバート、久しぶり! 随分と大きくなったわね」
「プリシラ姉さまもエルドラ姉さまもお久しぶりです。お二人とも変わらずお美しく……」
「ふふ、口が上手くなったわね」
エルドラたちは1つ年下の従弟に会うのは数年ぶりのことである。
以前に会った時は自分たちより背が低かったのに、いつの間にかはるか上から見下ろされて驚いてしまう。
ハルバートはプリシラとエルドラのそれぞれに握手で挨拶をして、そしてエルドラの手の甲には口づけを落とす。
貴族としての正式な挨拶まで卒なくこなした彼はもう、一人前の紳士だ。
そんな二人を見てたランドルは、ぐいっとエルドラの腕を引いて、ハルバートから距離を取らせるようにする。
「え、なに、ランドル」
驚いてランドルの方を見るエルドラだが、ランドルはエルドラの方を見ずにハルバートを睨んでいる。
そしてプリシラとエルドラの背に手を置くと歩かせ、ハルバートに背を向け屋内に強引に入らされた。メイドにハルバートを閉めだすように、扉に鍵をかけるよういいつけているランドルに慌てる。
「ちょっと待ってよ、なんでそんなことするの!?」
「そうですよ、ランドル!」
エルドラだけでなく、普段は大人しいプリシラもさすがに目に余ったのだろう。ランドルに食ってかかる。
「あいつならそのうち君の父上が応対するだろ。ほっとけよ」
しかし、ランドルは無視しようとさせてくる。
これがハルバートがプリシラに言い寄った相手ならその態度はまだわかる。しかし、そんなこともしてないし、どちらかというとされたのはエルドラの方だ。
もともとハルバートは昔からプリシラよりエルドラの方に懐いていたところもあるし、そもそもランドルが文句を言うべき相手ではない。
「ほっとけないわよ、なんで勝手なことをするのよ!」
「勝手じゃないだろ。俺はもうこの家の一員と同じなんだし」
「そんなこと言ったらハルバートは既にこの家の関係者なのよ!?」
「従弟ってだけだろ? エルドラには俺がいるんだし、俺がこれからも守るよ」
「……どういうこと?」
プリシラ、と言い間違えたのだろうか。
しかしランドルは自信満々だ。彼の言うことが本気でわからず、エルドラは言葉を止める。エルドラだけでなくプリシラも意味がわからないようで、二人で顔を見合わせた。
「プリシラだけでなく俺がこの先、エルドラの面倒も見るつもりだよ。 エルドラとプリシラは一緒にいるのが当たり前だ。だから俺がこの家に入って、二人とも養うよ。いい考えだろ?」
「いい考えなわけないでしょ? なんで私とプリシラがいつまでも一緒にいるのが当たり前なのよ。私は今後好きな人と結婚して、その人と暮らしたいわよ。それにこの家はもうハルバートが継ぐことになってるし」
エルドラがそう告げると、ランドルはぽかんと口を開けている。
「え? 君かプリシラのどちらかの夫が継ぐというわけでなく?」
「そうよ。限嗣相続って知ってる? うちは元々広い土地が基盤となって男爵位をもらった家なのよ。だから、相続にあたって子孫が土地を分割しないように、相続人一人が全財産を継ぐよう決められているの。そして直系一族に女子しか相続人がいなかった場合、傍系男子に相続が行くって決まりがあるから、私とプリシラの下に男の子が産まれていない以上、ハルバートが相続するって決まっているのよ。もっとも、私かプリシラのどちらかがハルバートと結婚すれば、ハルバートがこの家に来るでしょうけれどね」
別にハルバートはエルドラやプリシラと結婚しなくても全財産を相続するので、いつかはこの屋敷も全て彼のものになるだろう。
しょせんランドルには関係ないことなのでそこまで説明するつもりがなかったエルドラだが。
「ふざけるな!」
ランドルがなぜか唐突に怒り始めたので、言葉をつぐんだ。
「ハルバート、久しぶり! 随分と大きくなったわね」
「プリシラ姉さまもエルドラ姉さまもお久しぶりです。お二人とも変わらずお美しく……」
「ふふ、口が上手くなったわね」
エルドラたちは1つ年下の従弟に会うのは数年ぶりのことである。
以前に会った時は自分たちより背が低かったのに、いつの間にかはるか上から見下ろされて驚いてしまう。
ハルバートはプリシラとエルドラのそれぞれに握手で挨拶をして、そしてエルドラの手の甲には口づけを落とす。
貴族としての正式な挨拶まで卒なくこなした彼はもう、一人前の紳士だ。
そんな二人を見てたランドルは、ぐいっとエルドラの腕を引いて、ハルバートから距離を取らせるようにする。
「え、なに、ランドル」
驚いてランドルの方を見るエルドラだが、ランドルはエルドラの方を見ずにハルバートを睨んでいる。
そしてプリシラとエルドラの背に手を置くと歩かせ、ハルバートに背を向け屋内に強引に入らされた。メイドにハルバートを閉めだすように、扉に鍵をかけるよういいつけているランドルに慌てる。
「ちょっと待ってよ、なんでそんなことするの!?」
「そうですよ、ランドル!」
エルドラだけでなく、普段は大人しいプリシラもさすがに目に余ったのだろう。ランドルに食ってかかる。
「あいつならそのうち君の父上が応対するだろ。ほっとけよ」
しかし、ランドルは無視しようとさせてくる。
これがハルバートがプリシラに言い寄った相手ならその態度はまだわかる。しかし、そんなこともしてないし、どちらかというとされたのはエルドラの方だ。
もともとハルバートは昔からプリシラよりエルドラの方に懐いていたところもあるし、そもそもランドルが文句を言うべき相手ではない。
「ほっとけないわよ、なんで勝手なことをするのよ!」
「勝手じゃないだろ。俺はもうこの家の一員と同じなんだし」
「そんなこと言ったらハルバートは既にこの家の関係者なのよ!?」
「従弟ってだけだろ? エルドラには俺がいるんだし、俺がこれからも守るよ」
「……どういうこと?」
プリシラ、と言い間違えたのだろうか。
しかしランドルは自信満々だ。彼の言うことが本気でわからず、エルドラは言葉を止める。エルドラだけでなくプリシラも意味がわからないようで、二人で顔を見合わせた。
「プリシラだけでなく俺がこの先、エルドラの面倒も見るつもりだよ。 エルドラとプリシラは一緒にいるのが当たり前だ。だから俺がこの家に入って、二人とも養うよ。いい考えだろ?」
「いい考えなわけないでしょ? なんで私とプリシラがいつまでも一緒にいるのが当たり前なのよ。私は今後好きな人と結婚して、その人と暮らしたいわよ。それにこの家はもうハルバートが継ぐことになってるし」
エルドラがそう告げると、ランドルはぽかんと口を開けている。
「え? 君かプリシラのどちらかの夫が継ぐというわけでなく?」
「そうよ。限嗣相続って知ってる? うちは元々広い土地が基盤となって男爵位をもらった家なのよ。だから、相続にあたって子孫が土地を分割しないように、相続人一人が全財産を継ぐよう決められているの。そして直系一族に女子しか相続人がいなかった場合、傍系男子に相続が行くって決まりがあるから、私とプリシラの下に男の子が産まれていない以上、ハルバートが相続するって決まっているのよ。もっとも、私かプリシラのどちらかがハルバートと結婚すれば、ハルバートがこの家に来るでしょうけれどね」
別にハルバートはエルドラやプリシラと結婚しなくても全財産を相続するので、いつかはこの屋敷も全て彼のものになるだろう。
しょせんランドルには関係ないことなのでそこまで説明するつもりがなかったエルドラだが。
「ふざけるな!」
ランドルがなぜか唐突に怒り始めたので、言葉をつぐんだ。
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