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エルヴィラ……主人公。バートランド伯爵家令嬢
セラフィム……サイモン侯爵家令息。異常なほどの動物好き
* * *
(いくらペットを飼うのが流行りだとはいえ、これはあまりにも多すぎるんじゃないかしら)
エルヴィラは必死になって扇で顔を扇ぎながら、流れる汗で化粧を崩さないようにハンカチで何度も額を押さえていた。
「部屋の中がジャングルみたいになってますわね」
蒸し暑く設定されているこの部屋の中は、熱帯から取り寄せた動物たちが暮らしているようだ。
このサイモン侯爵家はどこでも動物にあふれていて、廊下をすれ違う執事や使用人たちも肩身が狭そうに歩いている。
まるで動物園のような屋敷の中。
そんなに動物優先で人間の方が扱いが低いのはなぜかしら、とエルヴィラはため息をついた。
エルヴィラの婚約者のセラフィムは動物好きな人だ。
セラフィムの親であるサイモン侯爵夫妻はこの状況をご存じあるのだろうか。いや、きっと知らないのでいるのだろう。
息子がある程度成長すると管理を任せてこの侯爵家に放置し、自分たちは領地の方に引きこもっているという。
父親同士のやりとりで、エルヴィラとセラフィムの婚約は成立したというが、一面識もないまま自分たちの婚約が成立したという。
もっとも父とセラフィムも一度我が家で会ったきりだったので、サイモン侯爵邸がここまでの動物屋敷だとは父も知らないままの婚約だったのだが。
動物好きな相手と婚約がととのったと親からきいた時は、「優しそうな人」と好感を抱いたものだったが、セラフィムの場合はただ好きなだけでなく、異常なほど動物を愛し、動物以外とまともに交流ができない偏屈な人間だったとほどなくして気づいた。
異国から輸入してきた猿。
古代種の狼の血を引く犬。
高いところまで元気よく飛び回っている多種多様な猫。
人の言葉を話すオウム。
そのような珍しい動物ばかりが放し飼いとなって一緒に暮らしている。
動物の世話があるから、と外でのデートもすることなく、話す会話も飼っている動物のことばかりでは変わりばえがなくて面白くもない。
親同士が決めた婚約者同士なのだから、愛される必要があるとは思っていない。しかし、尊重されていないのでは、と不安にもなってくる。
「自分の意思で彼らはここにいるわけではないから、愛情を注いで挙げなきゃ」
そうセラフィムは言うが。
(うちだってペットの犬のレオンがいるから、セラフィム様の言いたいことはわかるわ。でも私に甘えすぎじゃないかしら。私は婚約者なのよ)
客人として来ているエルヴィラを放置してセラフィムはせっせと犬にブラシをかけたり、鳥小屋の餌を変えたり、猿に芸を仕込んだりしている。
婚約後、月に一度は会うよう義務付けられているからで、エルヴィラが来たくて来ているわけではない。
退屈しながらも黙ってセラフィムを見ていた
セラフィム……サイモン侯爵家令息。異常なほどの動物好き
* * *
(いくらペットを飼うのが流行りだとはいえ、これはあまりにも多すぎるんじゃないかしら)
エルヴィラは必死になって扇で顔を扇ぎながら、流れる汗で化粧を崩さないようにハンカチで何度も額を押さえていた。
「部屋の中がジャングルみたいになってますわね」
蒸し暑く設定されているこの部屋の中は、熱帯から取り寄せた動物たちが暮らしているようだ。
このサイモン侯爵家はどこでも動物にあふれていて、廊下をすれ違う執事や使用人たちも肩身が狭そうに歩いている。
まるで動物園のような屋敷の中。
そんなに動物優先で人間の方が扱いが低いのはなぜかしら、とエルヴィラはため息をついた。
エルヴィラの婚約者のセラフィムは動物好きな人だ。
セラフィムの親であるサイモン侯爵夫妻はこの状況をご存じあるのだろうか。いや、きっと知らないのでいるのだろう。
息子がある程度成長すると管理を任せてこの侯爵家に放置し、自分たちは領地の方に引きこもっているという。
父親同士のやりとりで、エルヴィラとセラフィムの婚約は成立したというが、一面識もないまま自分たちの婚約が成立したという。
もっとも父とセラフィムも一度我が家で会ったきりだったので、サイモン侯爵邸がここまでの動物屋敷だとは父も知らないままの婚約だったのだが。
動物好きな相手と婚約がととのったと親からきいた時は、「優しそうな人」と好感を抱いたものだったが、セラフィムの場合はただ好きなだけでなく、異常なほど動物を愛し、動物以外とまともに交流ができない偏屈な人間だったとほどなくして気づいた。
異国から輸入してきた猿。
古代種の狼の血を引く犬。
高いところまで元気よく飛び回っている多種多様な猫。
人の言葉を話すオウム。
そのような珍しい動物ばかりが放し飼いとなって一緒に暮らしている。
動物の世話があるから、と外でのデートもすることなく、話す会話も飼っている動物のことばかりでは変わりばえがなくて面白くもない。
親同士が決めた婚約者同士なのだから、愛される必要があるとは思っていない。しかし、尊重されていないのでは、と不安にもなってくる。
「自分の意思で彼らはここにいるわけではないから、愛情を注いで挙げなきゃ」
そうセラフィムは言うが。
(うちだってペットの犬のレオンがいるから、セラフィム様の言いたいことはわかるわ。でも私に甘えすぎじゃないかしら。私は婚約者なのよ)
客人として来ているエルヴィラを放置してセラフィムはせっせと犬にブラシをかけたり、鳥小屋の餌を変えたり、猿に芸を仕込んだりしている。
婚約後、月に一度は会うよう義務付けられているからで、エルヴィラが来たくて来ているわけではない。
退屈しながらも黙ってセラフィムを見ていた
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