先輩のことが大大大好きな俺となんだかんだ全部許してくれる先輩

りちょ

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5話

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「……でも俺は黒崎さんが初めてだったから、なんで急にキスされたのかなってずっとドキドキしてたのに、黒崎さん結局誰とでもするんじゃん」

「俺?!何急に、そんなことねえよ!」

胃に落ちたワインがどろどろと腹の底で熱をもっている。ふわっとアルコールが広がって、頭が重たくなるような心地になる。

「うそだぁ、神田さんとだってしてた癖に」

「あの人はちょっと違うじゃん!嫌がってもしてくるし」

「それにさっき箸同じの使ってたもん。しかも口入れてもらってた、あれ何食ってたんだっけ…メンマ、メンマだ」

「急にどうしちゃったんだよ…いや俺そういうのあんまり気にしないタイプだからさ」

「じゃあ俺もされたい、あーんしてください」

「なんでだよ……」

恥ずかしいのと情けないのと、それからさっき感じたもやもやが、アルコールのせいで膨れ上がって、ふわふわした頭の中を占めていって止まらなくなる。
矢継ぎ早に無理な要求を告げて、呆れた顔をしている黒崎に詰め寄った。

ちょっとだけ眉間に皺を寄せて、でも笑ったままで黒崎が俺の手からコップを取り上げる。それからさりげなく俺の周りに置いてあったワインのボトルも缶チューハイも、つまみのお菓子まで遠ざけた。多分、もう飲むなってことだろう。…そんなに酔ってるかなあ俺。


「…好きだね~、俺のこと」


俺が飲んでいたレモン味の缶を数回振って中身が無いかを確認しながら、そんな軽さで黒崎が言った。
2本目の空缶にはほんの一口分中身が残っていたらしく、黒崎は少し悩んでから自分で飲み干して、炭酸の抜けたぬるい酒にちょっと顔を顰めた。

そんな雑に尋ねられたからか、いつもよりずっと素直に俺も答える。


「好きですよ、めちゃくちゃ懐いてますからね。俺黒崎さんの誘い断らないじゃん」

「あはは、確かに断られたこと無かったわ」

「俺インドア派なんだから、黒崎さん意外に誘われてもこんなに出てこないよ」

「そうだったの」


黒崎が手を止めて俺を見る。それから頭に手を置かれ、ぽんぽん撫でて嗜められた。伸びた前髪が目に刺さって痛む。
驚いているような、話半分で何も聞いていないようにも聞こえるような、微妙な返事を黒崎がした。自分の顔を隠すように俺の頭に手を置いているせいで、表情はよく見えない。

こういう時に照れもしないで、まっすぐ好意を受け止められるところは、黒崎のすごいところだと思う。人のことを上手に信用できる性格なのも、居心地良くて好きだった。


「俺マジで好きなのかな、黒崎さんのこと」

「……うん?」 


ぽろりと、考えがまとまらないまま、口から言葉が溢れ出た。

「キスでドキドキして嫉妬して、またキスしたくなっちゃったのって、黒崎さんのこと本気で好きなのかな」

俺のこと好きだねと言われて、なんだか妙に納得した自分がいたのだ。確かに好きだ。気持ちの正体までは分からないけど、とりあえず、この人のことが好きなんだと納得した。

「…俺に聞くの?それ」

「だって分かんないんだもん。もう一回チューしてみます?」

げほ、と黒崎がむせる。
心なしか耳元が赤い。なんだか急に可愛く見える。

「いや……まあ、じゃあ最後ね」


黒崎が俺の方に手を伸ばして、肩に手を置いで引き寄せる。軽く目を伏せた黒崎の顔が近づいてきて、そっと唇が重なる。

不意打ちじゃ無いキスは目を閉じるタイミングも分からなくて、ぼうっとする頭でずっと黒崎の顔を見ていた。むに、と唇を押し付けて、その後すぐに顔が離れる。

もう終わりなんだと寂しく思った。もうちょっと唇の感触と、伏せた瞼を見ていたかった。


「好きです俺黒崎さんのこと」

「…結論出すの早いなぁ」


黒崎が困ったように笑った。
今度は片付けながらじゃなくて、俺の方を向いたままただただ話を聞いてくれた。


「うう、好きだったんだ、そっか。めっちゃ好きだったら他の人とベタベタしてるの見るのは嫌だもんな。なんかすっごい嫌だった。ごめん黒崎さん引いてます?引くよね、こんな急に」

「引いてはないよ、びっくりしてるけど」

「本当に?…また遊び誘ってくれます?」

「誘うよ、俺もお前のこと気に入ってるんだから。…だからそんな顔すんなって」

「そんな顔ってなんすか、変な顔してないもん」

「捨てられそうな犬みたいな顔してるよ」


そう言うと、今度はけらけら笑う。

笑った時に見える犬歯が尖って見えて、それが可愛いなと思った。急に俺がこうやって胸の内を打ち明けても、とりあえず受け止めてくれるんだから黒崎は優しい。多分こういう優しいところが俺は好きなんだった。

いよいよアルコールが回ってきて、ズキズキと頭が痛くなってきた。瞼が重い。テーブルに肘をついてこめかみのあたりを抑えてぼんやりしていると、黒崎が水を差し出してくれる。

「飲ませすぎちゃったね。水飲んだら先風呂行ってきなよ、部屋着用意しておくから」
「…ありがとうございます」

立ち上がると思ったより酔っていて、足元がふわふわ頼りない。自分で引いて開けたドアにゴツンと頭をぶつけると、黒崎が風呂場まで付き添ってくれた。一緒に入るんすか?と聞くと馬鹿とだけ返され、脱衣所に放り込まれる。

熱いシャワーを頭から被った。それでもまだ酔いは覚めなかった。
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