先輩のことが大大大好きな俺となんだかんだ全部許してくれる先輩

りちょ

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19話

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「なんか最近、黒崎真面目になったね」
「…どういう意味?それ」

サークル活動の日。更衣室で運動着に着替えていた時に、そんな会話が後ろで聞こえた。
盗み聞きするのは少し気が引けたが、真後ろで繰り広げられているなら聞こえてしまっても仕方ないか、と自分に言い聞かせてわざとのろのろ着替えて耳をそば立てた。

「前まではもっとふわふわしてたというか、うーん……なんだろ」
「なんだそれ、アホっぽかったってこと?」
「アホっぽいんじゃなくてこう、なんでも言うこと聞いちゃう感じ、適当な感じがなくなった気がする」
「…小宮って俺のことそんな風に思ってたの」

ちらりと振り返ると、会話の相手は黒崎と同期の先輩だと分かった。人が良くて穏やかで、黒崎とも仲が良い人だ。よく2人でレポートの話をしていたり出かける話をしているのを見かける。

「だって黒崎、たとえば約束すっぽかされたり、すごい遅刻されたりした時とか、前まで全然怒れなかったじゃん。この前ちゃんと怒ってんの見てびっくりした」
「そうだっけ?よくみてるね俺のこと」
「うん。なんか変わったなと思った」
「そうかなあ。あんまり自覚がないんだけど」

パタンとロッカーの閉まる音がして、2人がコートに向かっていく。話を聞くのに夢中で中途半端にシャツを被って手が止まっていた俺は、慌てて着替えを済ませた。


練習中、ボールを打ち返しながらなんとなくさっきの会話が気になって、ふとした時に頭の中に浮かんできた。
一緒に過ごしていても黒崎は俺には結構怒るし拗ねるし文句を言うし、あまり先輩が言ったような印象を受けることが少なかった。
そもそも俺が黒崎に対して、遅れたり予定を忘れたりした事が無かったのも関係しているかもしれないけれど。

くたびれて一度休憩するのに体育館の隅の方に移動した。何人か同期も集まっていて、壁に寄りかかって座り、くだらない話をしながらコートを眺めた。

ぱしん、とボールが弾ける軽い音が響いている。ちょうど目の前で黒崎がサーブを打ったところだった。経験者というだけあって、黒崎が打つボールは鋭い角度でコートに落ちる。こういう時は素直にカッコいいなと思う。
そこそこ長く練習を続けていたのか、少し汗ばんでいてほっぺたも赤らんでいた。

あっ、と思った。
赤くなった頬に、一度待ち合わせに大遅刻してしまった時のことを思い出したのだ。

まだ付き合う前、真冬にいつものように黒崎に飯に誘われて、講義終わりに待ち合わせをしたことがあった。
その時たまたま俺は最後のコマが実習で、上手く成果物が仕上がらずに作業が長引いてしまったのだった。しかも連絡するにもスマホの充電が切れてしまい、黒崎があきれて先に帰っていることを祈って1時間くらい遅刻して急いで待ち合わせの場所に俺は向かった。

外に出ただけで鼻先が痛むほど寒い日だった。もう日も落ちて真っ暗で、頼りなさげに背の高いライトが光っていた。
ぼんやりした光が照らしているベンチに、黒崎は1人で座っていた。口を覆うくらいマフラーを巻いて、今みたいに鼻先も頬も赤くして俺のことを待っていた。

「すみません!せっかく誘ってくれてたのに、遅れる連絡もできなくて…」
「いやいいよ、誘ったの俺だし。今日実習だよね、俺も去年同じの取ってたから、なんとなく分かったし」

その時のヘラヘラ笑う顔を思い出した。
怒っているというより、寂しそうだった横顔を見て、なんだか子供みたいだと思ったのを覚えている。
あの時は優しいんだな、くらいにしか思わなかった。


同期に肩を叩かれハッとした。
聞くとレポートのテーマについて話していて、綾瀬はどう?と聞かれていたところだった。
ちょうど同じところで行き詰まっていた俺はすぐにそっちの会話に集中する。
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