15 / 16
15話
しおりを挟む
「……………は?何、は?」
「今言ったことが全てです」
「………………………は?え、なに、付き合ってないじゃん」
「うん」
「え………………?」
翌朝。俺が用意したトーストを齧っていた楓が、ポロッと手から全部落とした。上に乗っていた目玉焼きが、皿の上でぺちゃっと潰れる。
「え……?え……?ホテル連れ込まれてそのまま?!」
「……うん、まあ、そうです」
「お前本ッッ当に見る目無いよ!!は?!ダメだろそんな男!!!!」
「やー返す言葉もございません………えっ、なんで楓が泣いてんの」
「うるさいバカ、泣いてねえし!!!」
朝、少し早く起きて簡単な朝食を用意して楓が起きてくるのを待った。
ちょうど目玉焼きが焼き上がった頃に寝癖だらけの楓が起きてきて、珍しいとひとこと言った。
せめてもの罪滅ぼしと楓のご機嫌取りのため、半熟の目玉焼きとトーストを用意してから俺は全部楓に打ち明けた。楓は表情をころころかえて驚いたり怒ったりして、最後には少し涙ぐんでいた。
俺は軽蔑されるのが一番怖かったから、いつもの楓のままでいてくれたことが嬉しかった。
楓がガシガシと目元を擦る。
ずる、と鼻を啜りながら俺をキッと睨んだ。
「……縁切って。今すぐ。先輩に電話して」
「今?!良いけど…今週末最後に会うからその時」
「ダメ、お前流されるだろどうせ。今振って、そんで空いた週末は2人でなんかどっか行こう」
「ええ…分かったって」
楓に睨まれるまま先輩に電話をかける。
数コールで繋がってしまって少し焦った。
俺は別れ話を切り出したことが無いからどうすれば良いのか分からずたらたら雑談をしてしまって、また楓にじとっと睨まれる。
まあ、別れ話もなにも付き合って無いし。
適当でいいかと腹を括った。
「あー…あと先輩、その、……ちゃんと恋人できたんで、今度の予定無しでいいすか?」
「うん、……もう全部無しで。はい、じゃあ……」
そこまで言うと楓にスマホを取り上げられる。
俺が文句を言うより前に楓は通話を切り、連絡先をブロック削除、ついでに先輩と繋がってすらなかったSNSまでわざわざブロックされた。
…てか、なんでSNS知ってるんだよ。
「わー完全に連絡手段絶たれた」
「当たり前だろ、流石にもう関わっちゃダメ。お前サークルもやめなよ、あれどうせ飲みサーでしょ?普段ろくに顔も出してないんだし」
「まあそうだけど……顔合わせるのしんどいしその方がいっか」
楓がブロックするまで知らなかった、先輩のSNSを少しだけのぞいた。
当たり障りない投稿ばかりだった。ラーメンとコーヒーと、旅行の写真。
俺との写真が一枚も無かったことに少し安心した。
楓がゆっくりまた座り直して、コップに注いであった麦茶を一気に飲む。
少し落ち着いたのか、皿の上で潰れた目玉焼きに気がついて、少し申し訳なさそうな顔をして食パンの上に載せ直し始めた。
「…………………あとさ。恋人って、僕のこと?」
それから、小さい声でぼそっとそんな事を言った。
「………………えっうん。え……違うの?」
「違くはない、恋人。うん。恋人………で、合ってる」
「あは、また泣いてる。そんな涙もろかった?」
「………ぼくが、何年、…どんな思いで、片想いしてたと思ってんだよ」
もう誤魔化せないくらいボロボロ涙が溢れてから、楓は開き直って隠すのをやめた。
鼻を啜って少し俯いて小さな声でそう言った。
なんとなく昔を思い出す。
俺は何かあるとわっと泣くタイプの子供だったけれど、楓はいつもこうやって黙ってぼたぼた涙を溢していた。
泣き顔は変わっていない。全然変わっていなくて笑ってしまう。
「昔喧嘩して、俺が楓のこと嫌いって言った時、同じ顔して泣いてた」
「…なに、なんだよ急に」
「思い出しただけ。ごめんな、泣かせて」
「本当だよバカ。全部お前のせいなんだから、僕が泣くのも悩むのも落ち込むのも」
「大好きじゃん俺のこと」
「そうじゃなきゃおかしいでしょ、僕がやってきたこと全部」
むすっとした顔のまま、ちょっと恥ずかしくなるようなことをつらつらと楓は言った。
素直なんだから捻くれてるのかよくわからない良い草に笑ってしまう。
「……本当にいいの?僕で。お前、男が好きなわけじゃ無いでしょ」
「楓がいいなって思ったから」
「…僕、別れる気無いからね。気の迷いだったとか言っても聞く気無いよ」
「あはは!なんだよそれ」
脅迫まがいの告白は初めてされたから、今度は素直に笑ってしまった。楓らしいなとも思った。
「俺も大好きだよ、楓のこと」
「……どこが好きなの」
「まずセンス良いところ、楓が誘ってくれる場所は全部楽しいし楓が好きなものは全部俺もハマるし」
「何それ、初めて聞いた」
「言ってないもん。あとはマメなところ。俺が好きなもの黙って用意してくれるとことか」
「マメって……え、そんな風に思ってたの?」
「うん。それとこういう面倒くさいとこも割と好きかも。可愛げあっていいよ。重いほうがいいな、安心できるし」
「面倒くさくないし。…他には」
「んー、性格とか、顔とか、色々あるよ」
冷めてしまったトーストを齧る。
照れているのを隠すように、楓はまだ仏頂面をしていた。
「…あ、エッチも良かったよ。楓が一番」
「……バカ。いいよそれは別に、言わなくて」
「今言ったことが全てです」
「………………………は?え、なに、付き合ってないじゃん」
「うん」
「え………………?」
翌朝。俺が用意したトーストを齧っていた楓が、ポロッと手から全部落とした。上に乗っていた目玉焼きが、皿の上でぺちゃっと潰れる。
「え……?え……?ホテル連れ込まれてそのまま?!」
「……うん、まあ、そうです」
「お前本ッッ当に見る目無いよ!!は?!ダメだろそんな男!!!!」
「やー返す言葉もございません………えっ、なんで楓が泣いてんの」
「うるさいバカ、泣いてねえし!!!」
朝、少し早く起きて簡単な朝食を用意して楓が起きてくるのを待った。
ちょうど目玉焼きが焼き上がった頃に寝癖だらけの楓が起きてきて、珍しいとひとこと言った。
せめてもの罪滅ぼしと楓のご機嫌取りのため、半熟の目玉焼きとトーストを用意してから俺は全部楓に打ち明けた。楓は表情をころころかえて驚いたり怒ったりして、最後には少し涙ぐんでいた。
俺は軽蔑されるのが一番怖かったから、いつもの楓のままでいてくれたことが嬉しかった。
楓がガシガシと目元を擦る。
ずる、と鼻を啜りながら俺をキッと睨んだ。
「……縁切って。今すぐ。先輩に電話して」
「今?!良いけど…今週末最後に会うからその時」
「ダメ、お前流されるだろどうせ。今振って、そんで空いた週末は2人でなんかどっか行こう」
「ええ…分かったって」
楓に睨まれるまま先輩に電話をかける。
数コールで繋がってしまって少し焦った。
俺は別れ話を切り出したことが無いからどうすれば良いのか分からずたらたら雑談をしてしまって、また楓にじとっと睨まれる。
まあ、別れ話もなにも付き合って無いし。
適当でいいかと腹を括った。
「あー…あと先輩、その、……ちゃんと恋人できたんで、今度の予定無しでいいすか?」
「うん、……もう全部無しで。はい、じゃあ……」
そこまで言うと楓にスマホを取り上げられる。
俺が文句を言うより前に楓は通話を切り、連絡先をブロック削除、ついでに先輩と繋がってすらなかったSNSまでわざわざブロックされた。
…てか、なんでSNS知ってるんだよ。
「わー完全に連絡手段絶たれた」
「当たり前だろ、流石にもう関わっちゃダメ。お前サークルもやめなよ、あれどうせ飲みサーでしょ?普段ろくに顔も出してないんだし」
「まあそうだけど……顔合わせるのしんどいしその方がいっか」
楓がブロックするまで知らなかった、先輩のSNSを少しだけのぞいた。
当たり障りない投稿ばかりだった。ラーメンとコーヒーと、旅行の写真。
俺との写真が一枚も無かったことに少し安心した。
楓がゆっくりまた座り直して、コップに注いであった麦茶を一気に飲む。
少し落ち着いたのか、皿の上で潰れた目玉焼きに気がついて、少し申し訳なさそうな顔をして食パンの上に載せ直し始めた。
「…………………あとさ。恋人って、僕のこと?」
それから、小さい声でぼそっとそんな事を言った。
「………………えっうん。え……違うの?」
「違くはない、恋人。うん。恋人………で、合ってる」
「あは、また泣いてる。そんな涙もろかった?」
「………ぼくが、何年、…どんな思いで、片想いしてたと思ってんだよ」
もう誤魔化せないくらいボロボロ涙が溢れてから、楓は開き直って隠すのをやめた。
鼻を啜って少し俯いて小さな声でそう言った。
なんとなく昔を思い出す。
俺は何かあるとわっと泣くタイプの子供だったけれど、楓はいつもこうやって黙ってぼたぼた涙を溢していた。
泣き顔は変わっていない。全然変わっていなくて笑ってしまう。
「昔喧嘩して、俺が楓のこと嫌いって言った時、同じ顔して泣いてた」
「…なに、なんだよ急に」
「思い出しただけ。ごめんな、泣かせて」
「本当だよバカ。全部お前のせいなんだから、僕が泣くのも悩むのも落ち込むのも」
「大好きじゃん俺のこと」
「そうじゃなきゃおかしいでしょ、僕がやってきたこと全部」
むすっとした顔のまま、ちょっと恥ずかしくなるようなことをつらつらと楓は言った。
素直なんだから捻くれてるのかよくわからない良い草に笑ってしまう。
「……本当にいいの?僕で。お前、男が好きなわけじゃ無いでしょ」
「楓がいいなって思ったから」
「…僕、別れる気無いからね。気の迷いだったとか言っても聞く気無いよ」
「あはは!なんだよそれ」
脅迫まがいの告白は初めてされたから、今度は素直に笑ってしまった。楓らしいなとも思った。
「俺も大好きだよ、楓のこと」
「……どこが好きなの」
「まずセンス良いところ、楓が誘ってくれる場所は全部楽しいし楓が好きなものは全部俺もハマるし」
「何それ、初めて聞いた」
「言ってないもん。あとはマメなところ。俺が好きなもの黙って用意してくれるとことか」
「マメって……え、そんな風に思ってたの?」
「うん。それとこういう面倒くさいとこも割と好きかも。可愛げあっていいよ。重いほうがいいな、安心できるし」
「面倒くさくないし。…他には」
「んー、性格とか、顔とか、色々あるよ」
冷めてしまったトーストを齧る。
照れているのを隠すように、楓はまだ仏頂面をしていた。
「…あ、エッチも良かったよ。楓が一番」
「……バカ。いいよそれは別に、言わなくて」
7
あなたにおすすめの小説
腹を隠さず舌も出す
梅したら
BL
「後悔はしてるんだよ。これでもね」
幼馴染の佐田はいつも同じことを言う。
ポメガバースという体質の俺は、疲れてポメラニアンに変化したところ、この男に飼われてしまった。
=====
ヤンデレ×ポメガバース
悲壮感はあんまりないです
他サイトにも掲載
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した
あと
BL
「また物が置かれてる!」
最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…?
⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。
攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。
ちょっと怖い場面が含まれています。
ミステリー要素があります。
一応ハピエンです。
主人公:七瀬明
幼馴染:月城颯
ストーカー:不明
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
【花言葉】
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。
◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス
「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された
あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると…
「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」
気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
初めましてです。お手柔らかにお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる