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第百二十四話 王都出発までの日々③
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師匠に相談した翌日の昼過ぎ。
アポは取ったのか?と言うジョウに、師匠は胸を張り、得意気に鼻息を鳴らす。
「緊急でしたからね!確実にアポが取れるよう、昨日、ジョハンナに魔鳥を送っておきました」
「そうか、ならいい」
アポ無し訪問という前科がある師匠だ。ジョウが確認するのも無理からぬことだ。
♢
「やっぱり揺れるなぁ」
ガタガタと揺れる馬車の座席に座るきゅうちゃんが、馬車の振動と一緒にポヨンポヨンと跳ね、楽しんでいる。
「ミオ、どうしました?」
私の呟きを聞いた師匠が、声をかけてきた。
「いやぁ、王都への交通手段って馬車じゃないですか?」
「そうですね?」
それがなにか?と言うふうに首を傾げる彼は、不思議そうな表情をしている。
「街に降りてきて、初めて馬車に何度か乗りましたけど……」
「あぁ!ガタガタ揺れるし、跳ねるし。お尻が痛いんですね?」
納得しました!と言わんばかりの微笑みである。
「ミオ……まさかとは思うが、サスペンションをつける気か?流石に、王都出発まで日がないぞ?」
足元に寝そべっていたジョウが半身を起こす。元々、師匠には相談しようと思っていたし、丁度いい。
「ん~、でもさ。商業ギルドなら、ドワーフの職人とか紹介して貰えないかな?車軸と馬車本体の台座の間に菱形を横長に伸ばしたような形の板を上下別に作って、端と端を接合するの。それと上下の板の真ん中の位置を、車軸と台座の前後に一つずつ接合すれば、終わり。車輪にも、衝撃吸収の素材を巻けば、少しは違うと思うよ?」
初めは、ゴムというか、ベルトを機織り機のように交差させた編み目のトランポリンを作りたかったんだけど、流石に時間がなかった。切実にゴムが欲しいよ!……今度、亜熱帯気候の木材について調べてみようかな?
「それぐらいならば、職人のスケジュール次第で引き受けてくれるかもしれんが……」
と苦い表情のジョウ。
(此奴の生涯年収が、また増えるか。しかし、アイディア登録と夫婦にならんと気が済まんのか?此奴は)と、勘ぐってしまうジョウ。
「私、いますよ」
「へ?」
なにがいるんだ?
唐突に入り込んで来た師匠の、会話の主語がお留守なことに困惑し、私は間の抜けた声を出してしまった。
「ですから、ドワーフの知り合いがいるんですよ」
「え?エルフとドワーフって仲が悪いのでは?」
ラノベあるあるの情報を呟けば、師匠は『またその話題ですか?』と言わんばかりに顔をクシャッと歪めた。
きっと異世界でも、そうゆう認識がまかり通っているだろうな。でもさ、どこの一族にもいるじゃない?変わり者と称される人類が。きっと師匠は、エルフ族の中の変わり者なんだよ、うんうん。
「なにを考えているのか敢えてお聞きしませんが、900年近くも生きていれば、ドワーフの一人や二人、知り合いにもなるんですよ?」
「……はひ」
おどろおどろしい空気の中、私は噛み噛みのお返事を返すしかなかった。
今、懐中電灯をしたから浴びせられたら、きっと私、気絶しちゃう。
「着きましたよ」
そんな漫才師弟が乗車する馬車が、目的の薬師ギルドに到着したようだ。
「私の古い友人で、今はアターキル領で鍛冶職人として定住しています。幸い、私の家には、もう一台馬車があります。それを貸与しますので、ミオの気が済むまでやってみなさい」
「いいんですか!?壊しちゃうかもですよ?」
師匠の申し出に、私は目をパチクリとさせる。有り難いけど、いいのかな?いや、私も頼もうとは思ってたけどさ。
「かまいませんよ。どちらにしろ、廃棄する予定の馬車ですし。なにか廃材が使えないか?と残しておいただけの馬車ですからね」
「おぉう…ありがとうございます、師匠」
「どういたしまして」
廃棄処分寸前の馬車。そりゃ、快く貸してくれるはずだよ(笑)。
でもこれで、心置きなく実験(←おい)が出来るぞ!?
「……さぁ、参りましょうか」
ジョハンナさんが受付へ話を通してくれていたらしい。
ギルドの扉を潜った私たちの姿を認めた受付のお姉さんが、音もなくシュバッと現れ、深くお辞儀をしてくれた。
流石、薬師ギルドの名誉副会長。まっこと丁寧な対応である。
次回予告。
「ようこそ、副会長。会長からお話は伺っております。ご案内致しますので、こちらへお願い致します」
粛々と手で示された道へと吸い込まれていく私たち。その後の私たちを見た者は、誰もいなかった。
「ミオ!なにをしてくれたのさ!?」
「ぴょえ~~~!?」
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