【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)

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第三十一話 事後報告

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「私からは3点あります」

 3…と指で数を示しながら、師匠が話し始めた。ジョウは未だソッポを向いている。

「一つは、認定証の為の辺境伯との面会が決定したこと。日時は明日の午後。『明日ぅ!?』・・・もう一つは、面会後に会っていただきたい人物がいること。彼女は、私でも解析不能な困難な病状を抱えており、現在闘病中です。その際には、面会時のジョウの形態が人化状態になって頂くということです」
「はいぃ?」

 私の身分証明が褒賞メダルだから、貴族の面会はもしかしたら・・・とは思ってたよ?だけどさすがに、急すぎないかい?マナーや作法は、前世(?)の一般知識しか知らないぞ。貴族に合う服だって、ドレスなんて持っていない。

 しかも更に疑問を深めた、師匠の『ジョウの人化」発言だ。私は、先ほどから挙動がおかしいジョウに疑いの眼差しを突き刺す。

(ちょっと!どういうこうか・・・洗いざらい説明してもらおうじゃないの!?)
(別に・・・昨夜屋根の上で語らった際に、エイルが気落ちしておったから話を聞いまでだ。ただその流れで、聖獣扱いされかけたから、異界の獣神見習いであることを述べただけだ。ついでにミオと吾輩に、彼女の診察をお願いされただけで・・・) 

 最後にはモゴモゴと尻すぼみになっていくジョウの言葉に、私は呆気に取られ、盛大な溜息を吐くしかなかった。

 私が気持ち良くぐ~すか熟睡している屋根で、そんな話し合いが行われていたとは・・・ちくしょう。混ざりたかった。だって、私好きなんだもの。そういう語らい。

 眉間に皺を寄せる私に勘違いした師匠が、「ミオ!ジョウは悪くありませんからね!?昨夜の話も、私が強引にお願いした結果ですから!」と、ジョウを庇い、頭をナデナデしていた。
 ジョウは、気持ち良さそうに、目を細めている・・・くぅ!?昨夜だけで、あんなに距離を縮めて!どんな語らいが繰り広げられたというのさ!?

「・・・お話は分かりました。でも、辺境伯との面会が明日だなんて、急すぎませんか?私、ドレスなんて持ってませんけど・・・。挨拶だって、貴族のマナーは分かりませんよ?」

 挨拶のカーテシーだって、見様見真似だ。付け焼き刃もいいところ。

 不安そうな表情を浮かべる私の側に来た師匠は、膝を折り、私と目線を合わせた。服の裾が床に付いてしまったが、部屋の中だからセーフかな?

「大丈夫ですよ?辺境と言う田舎だけあって、貴族のマナーは余程でなければ気にされません。いつものミオなら、歓迎されますよ。ですから、面会ではいつも通りに質問に答えるだけいいのです。私も同席しますからね」 

 安心させるように穏やかに微笑んだ師匠に、私の心の中にあった焦燥感は薄くなっていった。

 ♢

「そして最後の一つです。ジョウの話からおわかりかもしれませんが、彼女の診察です」
「私は役に立たないかもしれませんが、ジョウは魔力が見えますし、見識もありますから役に立つと思います」

 ジョウは獣神見習いだけど、神族だ。知識や経験は、人族では敵わない。

「彼女は、辺境伯のお嬢様ですか?」
「いえ、姪に当たります。父は商業ギルドのサブギルドマスターをしており、今は聖国に出張中ですが…今回の診察を報せましたから、緊急帰郷してくると思います。それにサミュエルは、辺境伯の弟ですが、結婚時に市井に降りています。私が帰ってくる時に乗っていた魔導船も、行きは彼も一緒だったんですよ」
「そうなんですか」

 名誉職ではあるが、薬師ギルドの副会長だ。そして商業を司るギルドのサブマスが、今、聖国へ向かう事情など一つしかない。

「ポーション関係で聖国に行ったんですか?」
「えぇ。ミオもご存知の通り、ポーションの高騰による不足は、深刻な事態を引き起こすでしょう。その抗議の為に赴いたのですが、凄い関係者が押しかけていて、もはや運営どころの騒ぎではなかったんですよ」

 師匠はその時を思い出したのか、眉間に深い皺を作った。

『今の猊下になってから、雲行きが怪しい…』
『聖域への出入り禁止』


「聖国にある薬師ギルドの本部があれでは、ポーション市場の値は、まもなく崩壊するでしょうね。彼は、あの惨状でも粘るそうでしたから。私は先に帰りましたけどね」
 
 先に帰ってきてしまったらしい師匠はさておき、仕事を理由に聖国に行ったサブマスさんは、娘さんの為の思いが一段と強いと思う。

 しかしサブマスさんのことだけじゃなく、ポーション供給が不安定になるのは不安だなぁ。

 薬師がいない農村や小さな街は、一気に混乱するに違いない。医療知識も浸透していないこの世界では、少しの怪我でも命取りになる。その中でも怖いのは、破傷風だ。

 しかも怖いのは怪我だけではない。病気は勿論だが、冒険者たちの仕事に制限がかかることだ。
 深い森林地帯に沿うこの街で、魔獣退治の依頼を請け負ってくれる冒険者の活動阻害は、最悪な弊害だ。

 ポーション不足&高騰は、冒険者の依頼料と釣り合いが取れるかの疑問が一つ。誰も赤字の依頼は受けないだろう。
 その結果、繁殖能力が高いゴブリンやオークが巣を作る可能性がグンッと上がる。その他にも、森を駆け回る冒険者の些細な森での異変の情報なども集められなくなる。

 情報は、とても大切だ。さっき言ったゴブリン種の変化もそう。巣を作りキングが生まれれば、奴らは統率の取れた軍隊の出来上がりだ。
 そんな奴らに蹂躙された村や街の話を、ラノベで幾つも読んできた。

 私は「世界を救う」なんて驕りは言えないけど、せめて身近な場所からでも助けていきたい。私は覚悟を決め、キュッと唇に力を入れる。

「師匠!私たちで聖域に採取に行けますが、誰が秘密裏に作成出来る信頼のおける薬師集団に心当たりはありませんか?」
「ないこともないですが…」

 顎に手を当て考える師匠に、私は畳み掛ける。

「聖域の薬草は、群生地なら四分の三を採取出来ますが、なんと翌日には元通りになる元気さ!ですが、作成の時間もいれると、調薬釜の時短があっても数が限られます」

 そう。圧倒的に人が足りないのだ。
 先日、調薬釜を弄っていた際に見つけた操作メンバー登録の項目!わたししか触れないはずの調薬釜がなんで!?と混乱したが、きっと万が一を見越したガイア様が、追加してくれたんだろう。

「それと、身命の誓いをして頂ける貴重な方も知りませんか?」
「それは流石に…いや、一人だけ心当たりがあります」
「本当ですか!?」
「いずれにしても、彼らはクリーク連合にいます。今は、明日に迫る辺境伯の面会に備えましょう!」
「はい!」

 どうやら、人手不足の不安は解消出来そうである。その反動か、私は師匠により解消されかけた不安が、またしても膨らんできた。

(あぁ…師匠は謎の自信で大丈夫としか言わないし……私は明日、本当に大丈夫かしら?)
(四の五の言っても仕方あるまい!今まで読み漁った貴族の対応を思い出すんだ!…ところで吾輩の服は、以前の服でよかったか?)
(それこそ、似合ってたからいいんじゃない!?…ラノベかぁ)

 自分だって気にしてるじゃない…と独り言ちながら、私は様々な貴族たちを思い出す。でもさ、衝撃的な部分ならまだしも、挨拶とか些細な部分まで覚えてないよ!

 苦悩する私を他所に、日は暮れていくのだった。

★今日は、午後四時にもう一話公開します🤭
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