【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)

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第三十七話 聖域へGo!

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  その後、無事にローリー様から認定証が届いた私たちは、聖域へと旅立つ事になる。

「忘れ物はありませんか?」

 出発前に尋ねる師匠は、少し心配そうな表情をしているが、元々インべントリに全ての荷物が入れてあったのだ。お屋敷での滞在も短めだし、特に荷造りが必要な状況ではない。

「大丈夫です!」

 ニコッと笑えば、師匠も多少は安心するだろう。

『食べるものは、現地で調達出来るしな』

 ガウガウッと喋るジョウは、私の腕に抱かれている。

「気を付けて行くのですよ?」
『誰にものを言っている?それより、エイルこそ根回しを頼んだぞ』

 未だ心配そうな表情を浮かべる師匠に、ジョウは腕の中でふんぞり返っている。こいつは、何様なんだ。

「…心得てますよ」
 
 そんなジョウの眉間を撫で、ふふっと微笑んだ師匠。

『なぬ!?吾輩は、見習いとはいえ獣神だぞ?撫でるのは、主のみに許しているのであって…』

 ワタワタと抗議をするも、表情や身体は嘘をつかない。少しずつ細められていくうっとりとした目や、フミフミと動く前足はなんだろうね?…かわゆす♡


「ローハンさん、おはようございます!」

 街の外壁に行けば、懐かしの隊長が門番をしていた。私は元気よく挨拶をする。

「おっ!?来たな。おはようさん。ミオさんが、今日出発だと聞いて待ってたんだ」
「そうにゃんですか?ありがとうございます!」

 誰であろうと、送り出されるのに嫌な気はしない。私は、嬉しくなり顔が綻んだ。師匠も外壁まで着いて来てくれたし。

「行き先は既に聞いているから、この場では聞かん。だが手練れの者が付いていても、なにがあるのか分からんのが旅だ。気を引き締めて、行くんだぞ?」
「はい!」

 私は元気に返事をして、手に入れたばかりの身分証明書を渡す。彼は、「これがすげぇ昔にあった身分証の一つか…」と呟き、繁々と眺めた。

「これから見る機会はたくさんありますよ?」

 そんな彼に首を傾げれば、ローハンさんは苦笑いをする。
「俺は基本、詰所内にいるからな。まぁ、部下には通達を出しておくわ」

 なるほど、お偉いさん隊長だもんね。事務仕事もてんこ盛りってわけだ。そして、情報共有もしてくれるなんて!…有り難や。

「ありがとうございます!」
「よし!行って来い!」
「はい、行ってきます!」

 ローハンさんと師匠に見送られ、ブンブンと手を振って検問を抜けた。私は暫く歩いた後にジョウの背に乗り、アターキルを後にした。

 普通に行けば一回野営を挟むんだけど、今回は急ぎだ。ジョウには申し訳ないが、休み無く飛んでもらう。今日の夕方には、到着するだろう。



―――クリーク連合共和国のとある邸宅

「こっちに、エイルが戻って来るって!」

 少年のような見た目の齢1983歳のハイエルフエイルの大叔父は、自身の執務椅子に行儀悪く背を預け、脚を組んでいた。金の髪は肩までの長さがあり、緑の瞳は光を浴びてキラキラと光る。
 まるで、世界樹のように。
 彼を初めて見た者は、その姿に幻想を見て、崇め、祈る者も少なくない。

「そうなのですか?」

 紅茶を差し出しながら、主であるピアチェルト・シー・エモ・マグワイアに視線を向けた。

「昨日の夜に、手紙が来たんだよ。相変わらず素っ気ないけど、なにか用事があるみたい。詳しく書いてなかったから、来てからのお楽しみだね!」

 いつの間にか手紙を握っていた手を振り、ニカッと笑うあるじ

「いつ来られるのですか?」

 無邪気で笑う主は嬉しそうだが、私は内心で眉をひそめた。今は党首交代の引き継ぎで、恐ろしく忙しいのだ。エイル様も、それはご存じのはずだ。

「今日の昼ぐらいに来るみたい。時間の指定は無かったよ」

 そんな私の思いとは裏腹に、主は恐ろしい事を仰った。一瞬、身体が固まってしまう。

「今日…ですか。なにか、あったのでしょうか?今日のピア様のスケジュールは、既に一杯ですよ」 
「ははは。エイルがそんな遠慮をすると思う?」
「遠慮していただかなければ困ります。今回は平時より、次の首長陣への引き継ぎが大変なのです…例の問題が解決する見込みが全く見えませんからね」
「あぁ、アレかい?」

 シュテルが苦々しく呟いているが、それも当然。今回の任期で重くのしかかったポーション問題は、次の首長へと引き継がれるが……現在は、聖国にばかり注視するわけにもいかなくなっている。

 何故なら、聖国が起こした弊害ポーション問題が、あらゆる分野へと影を落とし始めているからだ。大陸一の商業の拠点場所であるクリーク連合共和国も、その余波を少なからず受けている。

「こんな大変な最中で任期が明けるだなんて…ほんと次期党首陣には同情するよ」

 主は肩を竦めるが、言動と表情が一致していない。表情は至極晴れやかだ…全く。そこまでの余裕があるならば、少しくらい政務のスピードを上げてもいいだろう。

「では、昼頃にスケジュールに隙を作るように、頑張りましょうか?ピア様」
「え?…いやぁ、今は休憩の時間だし?」

 そう言いながら、視線がおやつへと移るピア様。それは、一度目の休憩時間に食べるはずだったおやつだ。さっき、紅茶と一緒に出した茶菓子はまだ手つかずのまま。


「…あぁ!?」

 それらをサッと下げた私の行為に、非難の声を上げるピア様。緑の瞳は衝撃にうるうると水の膜を張っている。だがそんな主には慣れっこの私は、一言だけ告げる。

「恨むなら、急な来訪を告げたエイル様を恨んでください」

 そのような恨みがましい目で見られても、私はなにも悪くありません。


「今回のエイルの急な訪問も、無関係ではないような気がするんだよねぇ」

 この時期だからこそ感じる不吉な予感…僕の勘は、よく当たるんだよ?

 
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