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第四十八話 御神酒、製造!
しおりを挟む私は薬草と水を調薬釜に入れ、蓋を閉めた。メニューにあった【神酒】を設定し、「ピッ!」とスイッチオン!
ウィーン…と機械音がうねり、十数秒。元気よく「チーン!」と鳴る釜だが…どうやら出来上がったらしい。
「上手く出来たかにゃ?」
カパッと蓋を開け、中を覗いてみれば、薄い黄色の綺麗な液体があった。
「鑑定」
〚鑑定:神酒…特級ランクのポーション。売価は最低白金貨5枚。オークション競売もあり。効能は、高級ポーションでは効かない病気にも効果あり。即死以外の怪我であれば、ほとんどが治る。聖域の素材により、効果が爆上げ。向かうところ敵無し〛
「…うっそ」
二の句が継げず固まる私に、「どうしました?なにか問題でも…」と私の側に来た師匠が、調薬釜を覗き、同じように固まった。
「どうしたんだい?」
様子見をしていたジョハンナさんが、私の様子を見兼ねてか、恐る恐る声をかけてきた。
「それが…」
思わぬ鑑定結果に眉尻を下げた私は、固まる師匠をそのままに、取り出した漏斗を使い、薬瓶に神酒を入れた。
そしてそれをジョハンナさんに差し出した私は、「鑑定してみて下さい」と、ジョハンナさんへ鑑定するように促した。
「い、いいのかい?」
「お孫さんに使うポーションですから。当然にょ権利です」
初級や中級ならいざ知らず、滅多にお目にかかれない神酒だ。普通なら、本当に本物なのか疑わしいところなのだ。
私は深く頷き、ジョハンナさんの様子を伺う。果たして、普通の人のリアクションはどうなのか?
調薬釜という人外の神具で作ったポーションの実用性を示す為にも、直に触れて貰うことは大切だ。
「じゃあ、失礼して鑑定をさせて貰うよ。『鑑定』」
ジョハンナさんの鑑定熟度は不明だが、ギルド支部の会長にまでなる人だ。多分、大丈夫だろう。
「………」
あっ…固まっちゃった。
私や師匠の他にも犠牲者が出たけど、聖域の素材って、ダークエルフさん達にも渡しちゃったんだよね。高級ポーションでも、聖域の素材に変わりないし…彼らは、大丈夫かしらん?
「普通は乾燥させてすり潰し、沸騰した蒸留水に粉末を入れて弱火で煮込み、不純物を取り除いたものがポーションになるんだよ。なんでこんな簡単に…しかも聖域の素材とか、小童の金の色彩を証明付ける証拠にしかならないじゃないか」
ぶつぶつと呟くジョハンナさんに、聞き耳を立てると、どうやら葛藤しているらしかった。まぁ、非現実を受け入れるには、時間がかかるかな?
「この調薬釜は、手間のかかる製薬の工程をすっ飛ばした時短アイテムなんですよ。現実離れしていると思いますが、ジョハンナが見たものが真実ですよ」
「……そこの弟子のギルド登録をした覚えがないんだけどねぇ」
パタッと呟きが止まったと思ったら、ややこいことを思い出してくれたよ。わーい。
「あの猊下のことです。ミオのことがバレたら、あの手この手で囲い込むに違いありませんからね。安全の為に、まだ登録はしていませんね。それに調薬釜を使用する時は、私と一緒の時だけにしていますよ」
「……全く、ものは言いようだね。小童の事情も分かるが、猊下たち悪党共は、ウルシア様が神罰が下してくださった。薬師ギルド本部や教会の膿は掃除されたよ。捕まりたくなければ、弟子のミオちゃんの登録をさせな」
ジョハンナさんに見つめられ、サッと視線を反らせば、深い深い溜め息を吐かれた。
「もう少し落ち着いてからと思ったんですが、仕方ありませんね」
肩を竦めて飄々と宣う師匠に、ジョハンナさんは、苦虫を噛み潰したような表情をした。
「…可愛げがないね、全く。それで?小童が私を態々呼んだ理由は、これが原因でいいのかい?」
調薬釜を眺め、疲れた表情をするジョハンナさんに、私は心内で合掌をする。
(すみません。もう少し心労をかけてしまいます)
「まさか!?これだけでは終わる筈がないでしょう?ミディアンナ嬢の治療ならば、その時に呼べばいいんですから。態々、製薬時に呼びませんよ」
とんでもない!と顔の前で手を振る師匠に、ジョハンナさんの表情は更に歪んだ。
「一体、なにがあるっていうんだい?何故、小童が加護を授かったか知らないが、それと関係あるのかい?」
「いえ、それ自体の関係はありませんよ。ただ、高級ポーションの素材も、聖域で採取することを忘れていませんよね?」
「勿論さ。今はそのせいで、世間はパニックを起こしているじゃないか」
あの猊下め。
奴が巫山戯た欲を出したお陰で、大陸全土が迷惑を被ってるんだよ!初級・中級ポーションに被害がないのがなによりだね。市井の生活には、それほど影は落とさないだろう。
問題は、騎士団や警備隊、冒険者などの森に入る連中さね。しかも辺境のアターキル支部は、壊滅的な被害を想定しなければならない。
高級ポーションがなければ、冒険者ギルドの高ランクの依頼受注率は下がるだろう。
高位の治癒魔法が使える神官がパーティメンバーにいればまだマシだろうが、高位の治癒魔法使いは希少だ。そこらへんに、ほいほいといるわけではない。
(依頼料に保険代わりの治療費を盛り込るなりしないと、依頼受注率は下がるね。それで森の魔物が増えれば、スタンピード発生に繋がってしまう。この辺りのことを、領主はどう考えているんだろうね?)
「そのパニックを静めるためにも、私たちが聖域で素材を採取して、高級ポーションを製薬せねばならないのです」
「製薬ったって、高級ポーションの製薬者は、本部で紐付きじゃないか」
「えぇ。ウルシア様の神罰で掃除が出来たとはいえ、今はまだ混乱の中。本部を頼るのは悪手です。ですから私は、ダークエルフに製薬を頼みました」
「ダークエルフだって!?…確かに彼らは、薬に精通しているが、人族に恨みを持っているだろう?そんな彼らが製薬したポーションなど、使って平気なのかい?そもそも、薬師ギルドで登録がない者の製薬は、法で禁止『女神様の要請でもですか?』…は?なにを
『聖国を気にする必要はないわ。猊下には、神罰を下されることが決定したから』…ウルシア様っ!?」
一瞬の思巡らせた後に、膝をつこうとするジョハンナさんを慌てて止める。
師匠も映像を流すなら、先に断りをいれたらいいのに。急に女神様が現れたら、心臓に悪いじゃん。
「座った姿勢でかまいませんよ」
「だがウルシア様が…」
「杖をついた人が跪がないぐらいで、怒るようにゃ技量にょ狭い女神様じゃありませんよ」
杖をついている彼女を無理に跪かせることは、ウルシア様も望まないだろう。
ふと映像に視線を戻せば、大陸が奉る女神ウルシアの降臨に、ローリー様たちが膝を着く映像が流れていた。
『ロレンツォ・アターキル』
「はっ!」
『是非、ミオの手助けをしてあげて頂戴。私も聖国を見ていましたが、猊下は遂に一線を越えました。我々も…もはや手を出さざる終えない状況になったのです。聖国や薬師ギルド本部のことは我々に任せ、ミオやエイルたちに協力をお願いします』
「畏まりました!」
『貴方には、辺境伯としての仕事がありますからね。ポーション作成はミオたちに任せ、サポートをお願いしますね』
「畏まりました!」
『では、ミオの認定証にサインをお願いしますね?』
「畏まりました!…え?」
(ほんと、流れるような神業だったよね(笑))
ローリー様が我に返った時には、全てが遅かったんだよね。ウルシア様に『頼みましたよ?』なんつ言い逃げされたら、叶えるしかないよね。
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