異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)

文字の大きさ
22 / 78

七日目―初の依頼採取①

しおりを挟む

 俺は、ギルマスの執務室に赴き、これまでの事を掻い摘んで話した。

 ・5歳の時に死にかけの高熱が出たこと。
 ・その時に、俺という自覚はある。だがが、今の人生ではない別の記憶が蘇ったこと。
 ・その記憶は、この世界ではないこと。

 これら3種類の事実だけを告げた。

 訓練場でのやらかしから、実験内容を告げなければならないが、一先ずは理解をしてもらうことが先決だ。

(誓約書は、執務室に来て直ぐに書いてくれたのには驚いた。どうやら、誠実な人らしいが、もう少し様子見が必要か?)

「なるほど……それならば、自分の【ステータス】を見てごらん?」
「はい…って、なぜ俺がステータスが見れることを『不思議なことだが、記憶が蘇った者は、自分のステータスを見ることが出来たらしい。ステータスの称号に、【喚び起こされし者】という表示が出る筈だよ』……分かりました」

「ステータスオープン」
 
 名前 ルイ
 年齢 10
 性別 男
 出身地 アーノルド王国ベーラン領ギナン村
 魔法属性 無
 スキル 生活魔法 Lv. ∞
     鑑定 Lv.3
 加護 魔法神の配慮←New!
 称号 喚び起こされし者←New!

「ギルマスの言う通り、称号の欄にありましたね」
「だろう?称号は、自分で自覚するか、神が付けるまで現れないから、厄介なんだよね」
「これらは、どこか報告の義務は『ないよ。過去には、そういう決まりもあったけどね。権力者に狙われたり危険な目にあった事例があるんだ。それで神々が怒り、神罰を堕としたらしい』……あはは、すっげぇ」
「だよね。語彙力が消えうせちゃうよね」

 ギルマスから過去の出来事を聞いて、俺は、背中に冷や汗を書いていた。

 そして、山頂から思いっきり叫びたかった。

「神様!この魔法神の配慮という加護は、なんなのですか~!?……か~!?…か~!?」と。

「それにしても、無詠唱かぁ。高ランク冒険者が身につける技能スキルを、10歳の君がどうやって身につけたのか?実験と称したあの爆風も……それに君の属性は、無属性でスキルは申告なし……か。いやぁ、実に興味深い」

(…あっ、ヤバい。これは、実験内容に凄く興味を惹かれてる。俺、なにか、スイッチでも押したかな?)

 顎の下に手を組み、執務机に寄りかかるギルマスの瞳は、とても光り輝いていらっしゃった。

 ルイは完全に失念していたが、冒険者ギルド資料室に置かれた【生活魔法のススメ】の著作者は、ドーザ・メルオレンという名前だ。

 そう。この街の冒険者ギルドのギルドマスターである彼は、生活魔法の研究をしていることでも知られている研究者でもあったのだ。

「このギルドの資料室にある【生活魔法のススメ】の書を読んだのって、君でしょ?ルイ君」
「え?……はい、そうですけど」
「やっぱり。魔法言語やら、生活魔法やら、熱心に勉強しているって、ロマンが嬉しそうに話してたよ」
「あ~~……」

(あ~~!?もう!ロマンさんってば、個人情報保ご……ないんだった!?そもそも、スキル申告なしなのに、生活魔法の本を熱心に読んでいた時点で怪しかったのか!?)

 変な勘繰りをするルイだが、勉強や調べ物を嫌う冒険者たちの中で、真面目に取り組むルイが、ただ嬉しくて報告しただけのロマンだった。なんの裏もありはしない。

(ここは正直に、蘇った世界の記憶の言語が、この世界の魔法言語コードでしたって白状するか!幸い、誓約書も書いてもらってるしな!)

 変な勘繰りのまま、思考を進めたルイは、いつの間にか、慎重な思いは消えていた。

 この辺りの雑談もそうだが、全てギルマスの交渉術と言わざる終えない

 まぁ、ルイ自身……口外しないという約束の誓約書を、早々に準備して署名してくれた行動が、ルイの大きな決め手でもあったが。

 残念ながら、今世でも頭が良いとは言えないルイ。前世の経験により、実年齢より多少は口達者だが、それだけである。

 実際、蛇に睨まれた蛙状態のルイだったのだが、ルイにはそれを感じさせず。
 颯爽と諦め、ゲロる決意をさせるギルマスは、圧巻と言う他ない。 

 真のギルマス強者交渉には敵わないルイだったが、そんな彼と長く付き合うことになるの知るのは……もう少し後のことである。

(しかし、この魔法言語の話をするとなると、長い時間拘束されそうだ。俺は、午後には採取に行きたいし、ウルディンとの先約でもある……よし!)

「ギルマス、折り言って頼みがあるのですが……」
「なんだい?」

 キラキラと光る笑顔に、俺は心中でうっと呻きながらも、この話は時間がかかることを伝えた。それと、午後には、ウルディンとの先約があることも。

「確かに…ウルディンに食堂で待つように言っていたね」

 ふむ…と腕を組んで考えていたギルマスだが、彼も考えが纏まったようだ。
「よし!」と手を打ち、「こうしようじゃないか?」と、俺とのスケジュール合わせを提案したのだった。

「それなら、明後日はどうでしょうか?」

 明日は、バレンの店で【転写コピー】を試したい!その一心で、一日伸ばした日を提案する。

「明後日は……午後が空いてるね。お昼を過ぎた1時集合でいいかな?受付には伝えておくから、ギルドに来たら、申し伝えてくれればいい」
「分かりました!こちらも問題ありません」
「よし!では、また明後日に会おうじゃないか!」

 商談成立!とばかりに、両者は硬い握手で結ばれたのだった。

 ♢

 ギルマスとの用事は、一時中断だ。やっと採取に行ける喜びを噛み締めながら、俺は、善は急げと階段を降りていった。

「お待たせ、ウルディン!」 

 食堂では、ウルディンが人に囲まれていた。恐らく、先ほどのことを聞かれているのだろうが、見習いの監督者には、守秘義務が課せられている。
 訓練場で見た冒険者ならいざ知らず、彼の口から語られることはない。
 曖昧な表情で躱すウルディンを助け出すべく、俺は声を掛けた。
 
「随分、早かったな?もう少しかかると思ったが……」

 少しだけ困惑したウルディンに、俺は笑顔で告げた。
 因みに、烏合の衆である冒険者たちは、俺が声を掛けると、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

「それについては、両者でスケジュールを合わせて、もう一度明後日に会うことにしたんだ!勿論、弁償のべの字も出てないから、安心してね!だから、今から採取に行けるよ?ウルディンは、大丈夫?」
「…っ、あぁ、大丈夫だ。どの依頼を受けるか、決めているのか?」

 先ほどの暴風を放った少年とは思えない、どこにでもいる楽しそうな子供ルイの笑顔に、ウルディンは息を呑む。

(あんな顔もする普通の子供なんだがな……)とやるせない思いを抱くウルディンだが、その思いは、直ぐに覆ることになる。

「まだだよ。常設依頼の薬草や素材に、目を付けてるんだけどね」

 そう言いながら、ウルディンと共に依頼が張られたボードへ向かう。

(FランクからEランクに昇格するには、30ポイントが必要だったはず。他に試験や講習もあるが、ポイントを貯めなければ、話にもならない。1つの採取・討伐依頼で、3ポイント。街中依頼は、全てが1ポイント)

 俺は既に街中依頼で1ポイント達成だから、後は29ポイントだ。常設依頼を10件熟せば、30ポイント達成か?

 俺は、常設依頼と書かれた依頼書とにらめっこしていた。

 ・魔力草・回復草・解毒草・解熱草・浄化草・中和草・痛み止め草・化膿止め草など、生活に必要な薬草が、10本で1つの依頼として張り出されてあった。

 薬草の常設依頼のお値段は、10本で銅貨5枚が基本みたいだな。状態や品質が良ければ、増額という流れである。
 
 依頼書の注意書きには、『採取と討伐依頼中に襲ってきた動物であれば、討伐が可能である』……とあるが、それをこちらで売ることは可能だろうか?

「なぁ、ウルディン。この襲ってきた動物討伐可の部分だけど、ここで買い取って貰えたりするのか?」
「あぁ、勿論。子供たちの基本は、盾で応戦して、撤退あるのみだが……運が良ければ、討伐をする子供たちもいる」
「なるほど、良い戦略法だ。己の身の程を知らぬ愚かな者ほど、散っていくからな」
「だから、お前の本当の年齢は幾つだよ?」
「失礼な。れっきとした10歳だが?」

 マジで信じられん…と疑いの瞳を向けるウルディンを引っ張り、俺は冒険者ギルドを出た。

 まず目指すのは、年齢が立ちはだかる外壁だ。だが今回は、監督役の保護者も一緒だからな。楽々と通過出来ると言うわけだ!

 意気揚々と進む俺に、ウルディンは苦笑いで聞いてきた。 

「勇足なのは良いことだが、諸々の準備は出来ているのか?」
「当たり前だよ。本当は、バレンさんの依頼を受けた時に、採取の依頼を受けようとしていたからね。道具や携帯食料は、鞄に入ってるよ!」

 ポンポンっと鞄を主張すれば、「アンナたちの時か……」と苦虫を噛み潰したような顔をした。

 だけど俺にしてみれば、逆に小銀貨1枚の報酬(+魔法事典の閲覧権)を得られたんだ。感謝しかない。
 
 ウルディンにそれを伝えれば、「ルイは、運が良いのか、悪いのか……判断に困るな」と、渋い顔をされた。

 何故だ?……解せぬ。

☆面白い、気になる!という方は、是非お気に入り登録をお願い致します!m(_ _)m
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はランカ。 女の子と言われてしまう程可愛い少年。 アルステードオンラインというVRゲームにはまってラストダンジョンをクリア。 仲間たちはみんな現実世界に帰るけれど、僕は嫌いな現実には帰りたくなかった。 そんな時、アルステードオンラインの神、アルステードが僕の前に現れた 願っても叶わない異世界転移をすることになるとは思わなかったな~

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜

ことりとりとん
ファンタジー
ゲームっぽいシステム満載の異世界に突然呼ばれたので、のんびり生産ライフを送るつもりが…… この世界の文明レベル、低すぎじゃない!? 私はそんなに凄い人じゃないんですけど! スキルに頼りすぎて上手くいってない世界で、いつの間にか英雄扱いされてますが、気にせず自分のペースで生きようと思います!

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

死に戻りぽっちゃり双子、悪役お姉様を味方につける。

清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。 たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。 神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。 悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

処理中です...