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七日目―初の依頼採取①
しおりを挟む俺は、ギルマスの執務室に赴き、これまでの事を掻い摘んで話した。
・5歳の時に死にかけの高熱が出たこと。
・その時に、俺という自覚はある。だがが、今の人生ではない別の記憶が蘇ったこと。
・その記憶は、この世界ではないこと。
これら3種類の事実だけを告げた。
訓練場でのやらかしから、実験内容を告げなければならないが、一先ずは理解をしてもらうことが先決だ。
(誓約書は、執務室に来て直ぐに書いてくれたのには驚いた。どうやら、誠実な人らしいが、もう少し様子見が必要か?)
「なるほど……それならば、自分の【ステータス】を見てごらん?」
「はい…って、なぜ俺がステータスが見れることを『不思議なことだが、記憶が蘇った者は、自分のステータスを見ることが出来たらしい。ステータスの称号に、【喚び起こされし者】という表示が出る筈だよ』……分かりました」
「ステータスオープン」
名前 ルイ
年齢 10
性別 男
出身地 アーノルド王国ベーラン領ギナン村
魔法属性 無
スキル 生活魔法 Lv. ∞
鑑定 Lv.3
加護 魔法神の配慮←New!
称号 喚び起こされし者←New!
「ギルマスの言う通り、称号の欄にありましたね」
「だろう?称号は、自分で自覚するか、神が付けるまで現れないから、厄介なんだよね」
「これらは、どこか報告の義務は『ないよ。過去には、そういう決まりもあったけどね。権力者に狙われたり危険な目にあった事例があるんだ。それで神々が怒り、神罰を堕としたらしい』……あはは、すっげぇ」
「だよね。語彙力が消えうせちゃうよね」
ギルマスから過去の出来事を聞いて、俺は、背中に冷や汗を書いていた。
そして、山頂から思いっきり叫びたかった。
「神様!この魔法神の配慮という加護は、なんなのですか~!?……か~!?…か~!?」と。
「それにしても、無詠唱かぁ。高ランク冒険者が身につける技能を、10歳の君がどうやって身につけたのか?実験と称したあの爆風も……それに君の属性は、無属性でスキルは申告なし……か。いやぁ、実に興味深い」
(…あっ、ヤバい。これは、実験内容に凄く興味を惹かれてる。俺、なにか、スイッチでも押したかな?)
顎の下に手を組み、執務机に寄りかかるギルマスの瞳は、とても光り輝いていらっしゃった。
ルイは完全に失念していたが、冒険者ギルド資料室に置かれた【生活魔法のススメ】の著作者は、ドーザ・メルオレンという名前だ。
そう。この街の冒険者ギルドのギルドマスターである彼は、生活魔法の研究をしていることでも知られている研究者でもあったのだ。
「このギルドの資料室にある【生活魔法のススメ】の書を読んだのって、君でしょ?ルイ君」
「え?……はい、そうですけど」
「やっぱり。魔法言語やら、生活魔法やら、熱心に勉強しているって、ロマンが嬉しそうに話してたよ」
「あ~~……」
(あ~~!?もう!ロマンさんってば、個人情報保ご……ないんだった!?そもそも、スキル申告なしなのに、生活魔法の本を熱心に読んでいた時点で怪しかったのか!?)
変な勘繰りをするルイだが、勉強や調べ物を嫌う冒険者たちの中で、真面目に取り組むルイが、ただ嬉しくて報告しただけのロマンだった。なんの裏もありはしない。
(ここは正直に、蘇った世界の記憶の言語が、この世界の魔法言語でしたって白状するか!幸い、誓約書も書いてもらってるしな!)
変な勘繰りのまま、思考を進めたルイは、いつの間にか、慎重な思いは消えていた。
この辺りの雑談もそうだが、全てギルマスの交渉術と言わざる終えない
まぁ、ルイ自身……口外しないという約束の誓約書を、早々に準備して署名してくれた行動が、ルイの大きな決め手でもあったが。
残念ながら、今世でも頭が良いとは言えないルイ。前世の経験により、実年齢より多少は口達者だが、それだけである。
実際、蛇に睨まれた蛙状態のルイだったのだが、ルイにはそれを感じさせず。
颯爽と諦め、ゲロる決意をさせるギルマスは、圧巻と言う他ない。
真のギルマスの交渉には敵わないルイだったが、そんな彼と長く付き合うことになるの知るのは……もう少し後のことである。
(しかし、この魔法言語の話をするとなると、長い時間拘束されそうだ。俺は、午後には採取に行きたいし、ウルディンとの先約でもある……よし!)
「ギルマス、折り言って頼みがあるのですが……」
「なんだい?」
キラキラと光る笑顔に、俺は心中でうっと呻きながらも、この話は時間がかかることを伝えた。それと、午後には、ウルディンとの先約があることも。
「確かに…ウルディンに食堂で待つように言っていたね」
ふむ…と腕を組んで考えていたギルマスだが、彼も考えが纏まったようだ。
「よし!」と手を打ち、「こうしようじゃないか?」と、俺とのスケジュール合わせを提案したのだった。
「それなら、明後日はどうでしょうか?」
明日は、バレンの店で【転写】を試したい!その一心で、一日伸ばした日を提案する。
「明後日は……午後が空いてるね。お昼を過ぎた1時集合でいいかな?受付には伝えておくから、ギルドに来たら、申し伝えてくれればいい」
「分かりました!こちらも問題ありません」
「よし!では、また明後日に会おうじゃないか!」
商談成立!とばかりに、両者は硬い握手で結ばれたのだった。
♢
ギルマスとの用事は、一時中断だ。やっと採取に行ける喜びを噛み締めながら、俺は、善は急げと階段を降りていった。
「お待たせ、ウルディン!」
食堂では、ウルディンが人に囲まれていた。恐らく、先ほどのことを聞かれているのだろうが、見習いの監督者には、守秘義務が課せられている。
訓練場で見た冒険者ならいざ知らず、彼の口から語られることはない。
曖昧な表情で躱すウルディンを助け出すべく、俺は声を掛けた。
「随分、早かったな?もう少しかかると思ったが……」
少しだけ困惑したウルディンに、俺は笑顔で告げた。
因みに、烏合の衆である冒険者たちは、俺が声を掛けると、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「それについては、両者でスケジュールを合わせて、もう一度明後日に会うことにしたんだ!勿論、弁償のべの字も出てないから、安心してね!だから、今から採取に行けるよ?ウルディンは、大丈夫?」
「…っ、あぁ、大丈夫だ。どの依頼を受けるか、決めているのか?」
先ほどの暴風を放った少年とは思えない、どこにでもいる楽しそうな子供の笑顔に、ウルディンは息を呑む。
(あんな顔もする普通の子供なんだがな……)とやるせない思いを抱くウルディンだが、その思いは、直ぐに覆ることになる。
「まだだよ。常設依頼の薬草や素材に、目を付けてるんだけどね」
そう言いながら、ウルディンと共に依頼が張られたボードへ向かう。
(FランクからEランクに昇格するには、30ポイントが必要だったはず。他に試験や講習もあるが、ポイントを貯めなければ、話にもならない。1つの採取・討伐依頼で、3ポイント。街中依頼は、全てが1ポイント)
俺は既に街中依頼で1ポイント達成だから、後は29ポイントだ。常設依頼を10件熟せば、30ポイント達成か?
俺は、常設依頼と書かれた依頼書とにらめっこしていた。
・魔力草・回復草・解毒草・解熱草・浄化草・中和草・痛み止め草・化膿止め草など、生活に必要な薬草が、10本で1つの依頼として張り出されてあった。
薬草の常設依頼のお値段は、10本で銅貨5枚が基本みたいだな。状態や品質が良ければ、増額という流れである。
依頼書の注意書きには、『採取と討伐依頼中に襲ってきた動物であれば、討伐が可能である』……とあるが、それをこちらで売ることは可能だろうか?
「なぁ、ウルディン。この襲ってきた動物討伐可の部分だけど、ここで買い取って貰えたりするのか?」
「あぁ、勿論。子供たちの基本は、盾で応戦して、撤退あるのみだが……運が良ければ、討伐をする子供たちもいる」
「なるほど、良い戦略法だ。己の身の程を知らぬ愚かな者ほど、散っていくからな」
「だから、お前の本当の年齢は幾つだよ?」
「失礼な。れっきとした10歳だが?」
マジで信じられん…と疑いの瞳を向けるウルディンを引っ張り、俺は冒険者ギルドを出た。
まず目指すのは、年齢が立ちはだかる外壁だ。だが今回は、監督役の保護者も一緒だからな。楽々と通過出来ると言うわけだ!
意気揚々と進む俺に、ウルディンは苦笑いで聞いてきた。
「勇足なのは良いことだが、諸々の準備は出来ているのか?」
「当たり前だよ。本当は、バレンさんの依頼を受けた時に、採取の依頼を受けようとしていたからね。道具や携帯食料は、鞄に入ってるよ!」
ポンポンっと鞄を主張すれば、「アンナたちの時か……」と苦虫を噛み潰したような顔をした。
だけど俺にしてみれば、逆に小銀貨1枚の報酬(+魔法事典の閲覧権)を得られたんだ。感謝しかない。
ウルディンにそれを伝えれば、「ルイは、運が良いのか、悪いのか……判断に困るな」と、渋い顔をされた。
何故だ?……解せぬ。
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