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七日目―無双開始
しおりを挟む意気揚々と、外壁門を潜った俺たちは、依頼にあったベーランの草原に来ていた。
俺の得意気な様子に門兵の方も、苦笑いだった。許してくれ、自由に出入り出来ないって、地味にストレスなんだよ。
俺は少しだけ恥ずかしくなり、歩の早さを少しだけ速めた。
俺は見渡す限りの草原に向かい、想像するイメージを放った。
言語はこうかな?というものを当てはめた、行き当たりばったり戦法だ。
(生命反応、探索)
これには、無属性魔法の探索を利用した。外気に漂う魔素を活用し、生命の呼吸や温度を感知するといったものだ。
俺を中心に拡がる魔素の波。
それを感じて逃げるものは、なにもない。
よしよし。俺の魔力使用は微々たるもの。働きかけた外気の魔素が、良い仕事をしてくれている。
ただ…生体反応があるだけで、なんの動物か分からないところは、要改善である。
「さぁ、薬草狩りといきましょうか!」
「は?……いやいや、採取だろう!?俺は周囲を警戒するから、お前は薬草を採『鑑定!』…って、まじか!?お前!」
今回の魔力の広がりは、ウルディンも感じたのだろう。驚き?か、絶望?かの声を上げる。
そんなウルディンとは対照的に、魔力は俺の願いを叶えてくれる。
ぽぽぽっと薬草を示すマークが、草原に広がった。今の俺の魔力操作だと、半径50メートルが限界のようだ。
それでも、両腕に抱えられる以上の量が採れるのだが……ウルディンは、俺の視界の隅で頭を抱えて蹲ってる。
周囲を警戒するんじゃなかったの?
草原には子供もいるが、ウルディンの言う通り疎らだ。俺とも、距離は大分ある。採取範囲が被らないように移動したことも大きいが……。
「まだまだ、こんなに残ってたかぁ」
午後だから、薬草の量は少ないと思っていたが……俺はいそいそと鞄を漁る。
革袋と紐、それにナイフを取り出し、丁寧に根元を切り取り、採取を行った。
力任せに千切ったり、適当な長さで毟ったり……決して、してはいけない。
薬草は諸刃の剣である。
丁寧に採取をしなければ、状態は悪く、品質は最悪。正当な報酬さえ脅かされ、銅貨5枚も稼げない。
自分の懐を、自分で攻撃しているのと一緒である。
村にいた頃に教わったメルダ婆さんに感謝しながら、薬草をそれぞれに分け、保管する布へ薬草を入れていく。群生地ではないから、ちょこちょこと移動するのが地味に辛い。
魔力草、回復草、解熱草、痛み止め草、化膿止め草の種類を採取することが出来た。
中和草、解毒草、浄化草は草原に珍しく、森の浅瀬の生息域が多い。草原は、見つかればラッキーくらいの存在である。
(鮮度維持)
時間停止のアイテムボックスを持っているわけでもない俺は、呪い程度の気持ちで、呟いてみる。これは、殆ど確証がない実験みたいなもの。
(鮮度云々と思ったが、街と草原は目と鼻の先だからな。移動時間は、1時間もかからない。試すなら、森や少し離れた場所が、有益な結果が得られるだろう……さてっと『ルイッ!そこを動くなよ!』……ってもね、相手が少し早いかな?)
「シャー」と噛みつく気満々の蛇は、哀れ。俺には、その自慢の牙は届かない。
「盾」
と呟いた俺の壁に激突し、「ベシン!?」と痛そうな音を立てた。遅れて「ボトッ!」と地面に転がる蛇だが、相手も、この状況が飲み込めていないようで、頭上に「??」が飛んでいる。
「ウォーターランス!」
その間の抜けた時間に、ウルディンの魔法は放たれた。水の矢が蛇を貫き、蛇は昇天なされた。
ウルディンは、魔法の呪文に必死だったから聞こえてないよね……と思ったのは、甘かったぞ、ルイ。
♢ウルディン Side
「……シールド?ルイは、そんなスキルを持ってたのか?」
と呟くウルディンの声は、風に埋もれ、ルイに聞こえる事がなかったのは、幸いか。
シールドは、スキルの中でも有能で、冒険者でも引っ張りだこだ。それをギルドで売り込めば、パーティーメンバーなどあっという間に集まる。
(そう出来ないなにかが、彼にはあるのか?魔法の訓練場でもそうだが、あの威力の魔法を放つには、早すぎる年齢だ。彼は、一体何者なんだ?)
ギルマスとの話し合いでなにが話し合われたのかは、分からない……基本、冒険者は個人主義だ。
パーティーを組んで信頼関係が出来ている相手ならともかく、一度組んだくらいでは、自分の手中を明かさいのは当然だ。
俺は、ルイが年齢制限で引っかかる監督役を務めているに過ぎない。下手な発言は、ルイの疑念を抱かせるだろう。
(黙っておこう。下手に土足で踏み込むのは、得策じゃない)
ウルディンは、今は時ではないと待つことにした。それが永遠に来なくとも、別にかまわない……とも感じながら。
そんな憂いの時間も、ルイの一言で崩れ去る。
「これって、食べれるか?」
「…っ!?あぁ。ギルドに持ち込めば、買い取ってくれるぞ?あまり美味くないがな」
俺には、監督任務中の守秘義務がある。だから、他人には話せない。
監督中の出来事を、ギルドに聞かれれば答えなければならないが、部外者に話すことは罰則対象になるからだ。
それを聞いたルイは、その後も鑑定をしまくった。ちょこちょこと動きまわり、私は目が回りそうだ。
目の疲れを感じ、眉間を指で揉み解したほどだ。
あれから、兎や鼠の草原の動物たちから歓迎を受けたが、ルイは、それら全てを素気なくお断りした。現在の彼らは、大人しく革袋に収まっている。きっと彼らは、ルイに歯向かったことを後悔しただろう。
♢
ウルディンがそんな事を考えているとは、露とも思わないルイは、採取の成果にルンルンだった。
(これこそ、鮮度維持だよなぁ。肉は、足がつくのが早いからな)
魔法をかなり使っていたからか、こちらの場所を把握していたように襲ってきた動物たち。動物でも、彼らもこの世界の住人。
魔力を感じられる動物なら、脅威ではあるが対策も出来る……この世界では、それが常識なのか?ウルディンに聞いてみよう。
「なぁ、ウルディン。動物って、魔力を感じれるのか?」
「まさか!?誰かさんが、ちょこちょこ動いて音を立て続ければ、そりゃ、狙って下さいって言ってるようなもんだろ」
最早、初めにあった頃の丁寧さは無く、耳を掘り掘り、小指に付いたカスを息で吹き飛ばす。
結構なおざなりな言い方である。
「なるほど……そういうことか」
ファンタジーや展開を期待した自分が少し恥ずかしい。そりゃ、音を立てれば捕食者は襲いに来るか。
「それより……それら全部を、持ち帰るつもりか?」
「ん?……あぁ、そのつもりだけど?」
ウルディンの水色の瞳が鋭い。剣のように鋭い。それは、俺の顔ではなく頭上を見ている。
帰りの荷物は大量で、荷物の袋に入り切らなかった……訳でもないが、せっかく丁寧に採った薬草を、押し潰す真似を出来るはずがない。
俺は考えた末に、荷物を浮遊で運ぶことにした。
見た目は、風船をたくさん持った少年だ。
「それも、生活魔法だと?」
「勿論!俺のスキルは、鑑定と生活魔法さ!」
俺の清涼な告白を、ウルディンは疑惑の籠もった、据わった目で見ていた。
(生活魔法は嘘じゃなくて、正真正銘の真実なんだけどなぁ……)
「………戻るぞ」
特に反応を見せない彼に、頬をポリポリ掻きながら、外壁まで移動を開始する。
監督任務を遂行する彼は、なにかを決意したように口を一文字に結んだのだった。
☆生活魔法 New!
・生命反応
・探索
・盾
・維持
・新鮮
・浮遊
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