異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)

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七日目―新たな称号を手に入れた!

「こっ!?……これは、一体なんですか?」

 俺がふよふよと浮かせていた革袋たちに、困惑の色を見せる門兵。
 まぁ、仕方ないか…と思いつつ、その中の二つを手繰り寄せる。

「中身は、草原で採取した薬草たちと、討伐された動物たちですよ」

 どうぞご見分下さい…と笑顔で差し出した。

「……たっ、確かに、薬草と動物のようだが、大量だな」
「えぇ。運良く・・・採取とおまけの討伐が出来て、嬉しい限りです」
「なるほど…」

 努めて明るく爽やかに申し出る俺に、門兵さんの困惑した視線は、ウルディンに一直線だ。ウルディンは、相変わらず一文字に口を結んでおり、無言で頷くのみ。

 この両者の極端な表情に、門兵さんの表情は、益々困惑だが……。

「鮮度の問題もありますので、もうよろしいですか?」

 早めにギルドに卸したかった俺は、検問の門兵さんへ尋ねた。

「…そうだな。ギルドカードも問題無いし、かまわんぞ」

 どうやら、諦めてくれたらしい。街の住人のウルディンへの信頼もあると思うが。

「ありがとうございます」

 そう言いながら、返されたギルドカードを服の中へ仕舞う。カードに小さな穴が空いているので、紐を通して重宝している。

「……行こう」
「はい」

 言葉少なに出発を促すウルディンの声音に、なにか覚悟を決めたようなものが交じっている。俺は内心で首を傾げながら、外壁門を潜った。

 ♢

(……成る程な。ウルディンの姿勢の在り方の意味が分かった)

 街へ入った俺たちを、街の人々は、遠巻きに奇異の視線を送っていた。

(儲けの事ばかり考えていて、盲点だったな。ウルディンは人目を気にしていだんだ)

 それなら、そうと言ってくれれば良かったのに。
 監督故に、危機的状況以外の手出しは禁じられている。手を貸すわけにはいかないから、俺の行動を黙認したわけか。

(しかし、これはある意味罰ゲームだな。報酬は全体の3割だが、果たして、割に合うだろうか?)

 田舎ってのは、娯楽がない……んなもんで、人の噂は、二度の飯より蜜の味ってな。朝・昼・晩の三度抜くのはキツイが、二度なら我慢出来る所から来ているらしい。

 そんなに気になるもんかねぇ?
 俺の風船成果を見て、瞳を輝かせている子供たちとは違い、大人たちはヒソヒソ顔だ。

 子供で旅をする俺はいいが、この街に家庭を持つウルディンは、きっついものがあるよなぁ……すまねぇ。冒険者ギルドまで耐えてくれ!

 俺はそんな懺悔を祈りながら、目的地のギルドまで、黙々と歩き続けたのだった。

 だが俺は、大事な事を失念していた。
 辺りは、夕暮れに染まる直前の時間帯。この時間のギルドが、依頼帰りの冒険者でごった返している事を。

 ♢

「ままぁ!あれ、欲しいよぉ!?」
「変しっ……んっ!見てはいけません!」

 買い物帰りだろうか?
 母親に連れられた子供が、浮く革袋を玩具と勘違いしたらしい。母親にせがみ、拒否られていた。気分は、遊園地の着ぐるみバイトである。

 だが……あの母親の言葉で、街の人々が、俺をどういう目で見ているか分かった。

「なんだ、ありゃあ?……大道芸人か?」

 奇っ怪な物を見たように、目を細め、口を歪める男。既に、酒に飲まれているようである。

「…いや、冒険者の格好だし。動物の血の匂いが、微かにするぞ。動物を入れた革袋じゃねぇか?」

 正解です。

「バッカか!?おめぇ!どこの世界に、討伐後の動物を入れた袋を、浮かせる奴がいるんだよ!?」

 ここにいます。子供だから、荷物を持つ重量には、限界があるんです。

「そうよそうよ!そんな魔力の無駄遣い、私が許さないわ!?」

 生活魔法なので、魔力の消費は燃費がいいんです。 

 既に、呑兵衛と化した彼らの側を通り過ぎながら、俺は脳内で突っ込みをいれる。前を歩くウルディンの表情は垣間見えないが、恐らく能面に近いことだろう。

 憐れ、ウルディン。
 孤児院出身の身としては、現在在籍する子供の詫びの気持ちが大きかっただろうに、何故こうなったのか。
 実績も兼ねた行動だったのに、何故こうなったのか。
 
 ♢
 ウルディン Side
 あの時の私に戻れるならば、私に伝えたい!

「彼に近づいてはならない!」……と。

 ルイの前を行くウルディンは、そんな事を考えていた。ルイ本人が、申し訳なく思っていることも知らずに。

 ♢

「おやおやおや……帰りを待ちかねてみれば、凄い絵面だね」

 ドーザはにやにやしながら、俺とウルディンを眺めていた。他の冒険者は、ドーザを遠巻きにしていたので、ホールは台風の目みたいな状態だった。

「この忙しい時間帯に、ギルマスが業務を停滞させては駄目じゃないですか」
「あはは!?君たちの帰りを待っていたというのに、お言葉じゃないか?」
「大方、冒険者たちに、私たちの様子を聞いて、慌てて待ち構えていたのでしょう?」

 街中に放しているギルマス子飼いの冒険者でもいるのか?
 俺は情報の大切さを知っているから、感慨深げに頷くが、そのタイミングが、ウルディンに同意する形に見られてしまった。

「おや?……まぁ、いいか。それで、街の騒ぎの原因は、今日の成果だろう?他の冒険者たちが順番を譲ってくれるみたいだからさ。先に依頼達成報告と買取をお願いしなよ」
「……いいんですか?」

 俺は周囲を見回し、他の冒険者の方々に視線を送る。ギルドのトップのワンマンに逆らえないだけだと、後で逆恨みされかねない。
 だがそんな様子はなく、皆一様に首を縦に振っている。

「分かりました。では先に、精算を済まさせてもらいます」
「こちらだ、ルイ」
「はい」

 先にカウンターにたどり着いていたウルディンに呼ばれ、俺は、訓練場の手続きをしてくれたナタリアさんのところへ行く。

「お疲れ様でした。冒険者カードをお願いします。それと買い取りの薬草は、こちらのお盆へ。動物は、隣のカウンターへ買い取りをお願いして下さい」
「はい、分かりました」

 ナタリアさんが用意してくれたお盆を並べ、薬草別に置いていく。

「おい……あいつ、午後から草原に行ったんだよな?」
「あっ、あぁ……そう聞いたぜ?」

 さすが、異世界+田舎街。個人の情報も筒抜けである。

(魔力草…回復草…解熱草…痛み止め草…化膿止め草…)と、布袋の薬草たちを出した。   

「どれも草原にある薬草に間違いねぇ。午後から行って、あんなに残ってるのか?しかも、かなり丁寧に採取・処理をしてやがる」
「あぁ、どこか群生地を見つけたのかもしれんな。運の良いやつだ」

「査定に入ります。終わりましたらお呼びしますので、先に、動物の素材買取カウンターへどうぞ」
「ありがとうございます!」

 生活に必要な薬草が10本で1組として、魔力草・回復草・解熱草・痛み止め草・化膿止め草を2組は用意した。100本は摘んだが、査定に時間がかかるかな?
 俺は言われた通りに、素材買取カウンターへと歩を進めた。

 明日は【転写コピー】を試すが、少々ドキドキだな。魔法紙を少しだけ欲しいな。後で、雑貨屋に寄ってみるか…なんて考えていた俺は知らない。

 ギルドの歴史上、見習い冒険者青少年部門の一番の売上+最速の昇格を果たしてしまうことを。

 アルティメットへの路銀を目標に掲げ、魔法船に乗ることを目指し、生活魔法事典の写生に精を出す普通の青年。

 だが後日、全大陸の冒険者ギルドの前記録を塗り替え、新たな記録を樹立することが決定された。
 


「なんだ?坊主。買取か?」 
「はい。これらをお願いしたいのですが……」
 と言い、蛇1匹、兎が5羽、鼠が3匹がそれぞれ入った布袋から出した。

 銀盤に載せられたそれはまだ温かく、どうやら鮮度維持の生活魔法は成功だ。

「……身体がまだ温かいが、これほどの数が一気に襲ってきたのか?」

 草原からギルドまで、徒歩で約40分。初めに狩られた物は、死後硬直が起こっていても不思議ではないが。

「いえ。一番初めに襲ってきたのは、もう2時間は経っていますよ。動物の身体が温かいのは、鮮度維持の生活魔法をかけているからですよ」
「そんな便利な生活魔法があれば、商人になれるぞ。坊主、商業ギルドに行け。来る場所を間違っている」

 至極真っ当な表情だから、善意なんだろうな。だが、冒険者に詮索は無用。俺は曖昧に笑い、ウルディンに、視線で助けを求める。

「おやじ、その話はまた今度で。今は、獲物の査定を頼む。全部で、9体だ。採取に出かけた時間が午後だったから、血抜きはしていない。だが、新鮮さは保証する。査定の際に、鑑定の眼鏡で見るだろうけどな」
「どれ?……本当だな。ウルディンたちの言う通り、今さっき狩られたような新鮮さだ」

 小さな望遠鏡な物で、動物を見ている。魔法具だろうが、目を見開き驚いている。

「欲しい部位はあるか?」
「いえ、全部買取でお願いします」
「ならば、達成ポイントは、9Pポイントだ。買取価格は、鮮度の良さがプラスだな。多少色を付けさせてもらう……この木札を、受付カウンターで渡すといい。採取分と一緒に金額を計算してくれる」
「分かりました。ありがとうございます」

 こうして、俺たちは再度、ナタリアさんのカウンターまで戻ることになった。

☆称号 ゼントの街の変質者(笑)←New!
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