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オリジナルストーリー

お兄ちゃんのお仕置き

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「あぁ…どうしよう…またやっちゃった…。」
土曜日の昼頃、私はとんでもないミスをおかしてしまった。
お兄ちゃんの勝手に部屋へ勝手に入った挙句、お兄ちゃんが大切にしていたフィギュアを壊してしまったのだ。
もともと部屋に入るなと言われていたのに、さらにフィギュアを壊すのはこれで2回目。
(どうしよう…絶対に怒られる…。)
今どきとなれば、瞬間接着剤や真鍮線で直すことができるが、まだ中学生の私にそんな器用なことはできない。
1回目に壊してしまったときは、お兄ちゃんはそれで治していた。
そのときは不可抗力的な事情もあったため許されたが、今回のは完全に私のミスだけで起こしてしまった。
「と、とりあえず…。」
私はのりを取り出して、フィギュアに応急処置を施した。
と言っても、のりの強度は瞬間接着剤よりも遥かに劣るため、いつまた取れてもおかししくないほど脆い。
それでも、気が動転していた私は、その時はのりでなんとかできると思ったのだろう。
そのまま私は、何も言わずにお兄ちゃんの帰りを待ちながら、夕食の準備をした。


「ただいまぁ。」
「お、おかえりぃ。」
私はお兄ちゃんの声に少しビクつきながら答えた。
(だめだ…まだ動揺しちゃってる…平静平静…。)
なんとか気持ちを落ち着かせ、お兄ちゃんを迎える。
「今日もバイトおつかれ、お兄ちゃん。」
「あぁ。ひなも毎日食事をありがとうな。」
お兄ちゃんは根はとても優しい。
私だけでなく誰にでもお人好しで、学校の中ではトップレベルにかっこいい。
だけど、本気でキレた時はとても怖い。
怒ることすら滅多にお兄ちゃんであるため、余計に怖さが倍増するのだ。
(とにかく…怒られないようにしないと…。)
そう思いながら、夕食一緒に食べた。


「はぁ…すっきりした。」
さきほどまでびくついていた私は、お風呂に入ってすっかりそれを忘れていた。
現在お兄ちゃんはリビングでテレビを見ているはず。
何も考えずに寝間着を着て、リビングに向かうと…。
「ひな、少し話がある。」
「え?」
いつもと違うお兄ちゃんの声色と雰囲気で、私は一瞬にして凍りついた。
「俺の部屋…入ったよな?」
「え…いや…その…。」
「そしてその挙句、フィギュアを落として壊したよな?」
「!!?!?」 
私は動揺を隠せなかった。
それと同時に、恐怖で何も言えなくなった。
「のりで誤魔化そうとしたみたいだが…こんなもんすぐ外れるに決まってるだろ。ひなが自白するのを待って少しは黙っててやったのに。」
(嘘!?そんなに早く気づかれてたの!?) 
何も言わずにビクビクしながら下を向いている私に、お兄ちゃんは大きなため息をついてからこう言った。
「俺の記憶が正しければ、前にもこんな感じのことあったよな?」
「…はい…。」
「…今は…8時か…。」
不意に時計を見出し、時刻を確認するお兄ちゃん。
そして、こんなことを言った。
「お前の部屋に行くぞ。お仕置きだ。」
「!!?!?」
お兄ちゃんから放たれた「お仕置き」という言葉、それは私の恐怖をさらに煽るには十分すぎるほどの威圧を持っていた。
そして、ゆっくり動き出すお兄ちゃんについていく。


「な…何を…するの…。」
私の部屋に入ったあと、私はお兄ちゃんの指示に従った。
まず服を着替えるように言われ、冬にもかかわらず半袖とスカートを着た。
もちろん、お兄ちゃんはちゃんと退室していた上で着替えた。
そして、着替えている間に取ってきたのであろう、ビニール紐でベットに拘束された。
正確には、四肢の関節部をガッチリ固定されている。
この胴体しか動かせない状況に加えて、お兄ちゃんが腰あたりに馬乗りになっていた。
その時見えたお兄ちゃんの顔は、私も見たことがないほどの怒り顔だった。
「実際に受けた方が早いさ。」
そう言ってお兄ちゃんは、さらに追い討ちをかけるかのようにアイマスクを私につけた。
「え!?やだ…。」
アイマスクによって閉ざされた視界、そして何をされるか分からない恐怖、さらにお兄ちゃんの顔と雰囲気。
私は今にも泣きそうだった。
「お仕置きされる前に、何か言っておきたいことはあるか?」
まるで遺言を聞くかのようにお兄ちゃんは問う。
「ごめんなさい。」
「…。」
数秒ほどの間があったあと、『それ』はいきなり始まった。
「ひゃ!?っんやっは!?あははははははははははははははは!?ちょっと!お兄ちゃん!何を!?何をぉ!!?あははははははははははははは!」
「何ってくすぐりだ。そんなことも知らないのか?」
「あはははははははははははは!ちがっ!そういうことじゃっ!!あははははははははははははははははは!やめてぇ!やめてぇぇ!!」
「お仕置きだと言っただろう?反省しようがしまいが、最低限分は受けてもらう。まあ反省の色が見えなければ延長するがな。」
「あはははははははははははははははは!そんなぁ!!あははははははははははは。」
お兄ちゃんはいきなり、動けない私の腋と腋腹をくすぐってきた。
くすぐりが大の苦手である私は、ものの数秒で笑ってしまい、十数秒あたりで息がしづらくなっていた。
そういえば、小さい頃にお兄ちゃんにくすぐられる時がたまにあった。
その時もくすぐりに弱かったため、お兄ちゃんはこれが一番お仕置きに最適だと思ったのだろう。
相手の体を直接傷つけず、かつしんどさもちゃんと与えるため、反省させることのできる、いわゆる拷問といっても過言ではないようなお仕置きだ。
それに、薄いとは言えど、服の上からくすぐられただけどこのくすぐったさだ。
もしお兄ちゃんが服の中にいれでもしたら…。
「にしても、ひなはほんとにくすぐりに弱いな。」
「あはははははははははははははははは!だってぇ!だってぇぇ!!」
「俺としてはもう2度とフィギュアを壊してほしくないからなぁ…悪いけど、もう少しきつめにいかせてもらうよ。」
「はぁ…はぁ…これ…以上…なんて…無理ぃ…。」
私が疲れている様子を気にも止めず、お兄ちゃんは一瞬の猶予の後に、またくすぐり始めた。
今度は服の上からではない。
わざわざ着替えさえられた薄い半袖の中に入り、地肌を直接くすぐられている。
しかも、行われているときはそこまできにしていなかったが、私が半袖半ズボンを気にして、お兄ちゃんは暖房つけていたのだろう。
しかしそれはむしろ逆効果で、半袖では吸いきれなかった量の汗が残っていた。
触る方にとってはいい気分にはならないだろう。
だけど、くすぐりのなかでの汗というのは、くすぐりやすさをあげる。
私の肌は基本すべすべだと、前にお兄ちゃんが一度褒めてくれたことがあったが、すべすべに滑りが混ざり、さっきとは比べ物にならないくらいのくすぐったさがあった。
ほんの少しだけ体力のある私だからこそ、そのとんでもないくすぐったさにもかかわらず、咳き込むレベルにはならなかった。
だからこそ、辛い方に意識が集中してしまい、お兄ちゃんの手によって踊らされる。
そして、あまりにくすぐったさに、私は変な笑い方をしてしまう。
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!ひゃめてぇ!!」
「滑舌回ってないぞ?もっとはっきり喋らないと。」
そう言いながらもお兄ちゃんはくすぐりを弱める素振りすら見せない。
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!むぅりぃぃ!ひゃめぇ!」
「本当にくすぐり弱いんだな。悪いが本当に何言ってるかわからない。」
喋りながら私の地肌の上で動くお兄ちゃんの手は、とても素人とは言えないような動きをしていた。
一部分をずっとくすぐっているわけではなく、胴体を満遍なく動きながら、かつその部位によってくすぐりの速さなども微妙に変えながら、だからといってパターンがあるわけではなく、何巡目かするとパターン変えたりしている。
汗もどんどん増え、念のために引かれたビニールに水滴が溜まりそうだった。
他の刺激を与えないように、胸部には一切触れず、的確に「くすぐったい」という感覚だけ与えてくる。
嫌というほどに、しつこすぎるほどに、張り付かれるように。
(いやだ…ずっと…くすぐったいのは…苦しい…。)
トラウマになりかけ、ほんの少し涙がでかけた時、それを察したかのような反応を見せたお兄ちゃんは、突然くすぐりをやめた。
「はぁ…はぁ…はぁ…。」
笑いすぎの涙と暴れすぎたことによる汗でびしょびしょになった私は、服が乱れてお腹が見えている状態も気にせず、くすぐりが止まったことに安堵しながら息を整える。
対してお兄ちゃんは、そんな私の様子を見ながら、離れようとはしない。
そして私の息がだいぶ整ったころ、お兄ちゃんは喋り出す。
「反省した色が見えた。気がつけば1時間もくすぐっていたみたいだし、今回はこれで終わりにしといてやる。」
「はぁ…はぁ……うん…。」
私の位置から時計が見えないのだが、お兄ちゃん曰くもう1時間も立っていたらしい。
それほどお兄ちゃんも夢中になっていたのだろうか…?
「もうするんじゃないぞ。次またやったら、これだけでは済まさんからな。」
「うん…。」
そうして私は解放された。
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