1 / 30
★プロローグ
しおりを挟む
天蓋から落ちる絹の帳が、世界のすべてを隔てていた。
うつ伏せにさせられた豪奢な寝台の上で、少年はシーツを固く握りしめている。
指の節が白くなるほど力を込めても、体の震えは止まらない。
いつもは畑仕事で土にまみれている自分の指と、この世の物とは思えぬほど滑らかなシーツの感触が、あまりに不釣り合いだった。
背後に、男の気配がある。
この城の主、そして、つい先日まで敵国の王であったはずの男。
その男が、少年のすぐ傍らに膝をついている。
「……っ!」
不意に、熱を帯びた何かが尾てい骨のあたりに触れた。
ひやりとした粘り気のある液体と共に、ごつりとした指が、これまで誰にも触れられたことのない場所に押し当てられる。
少年は息を呑み、身を硬くした。
つぷり――
初めての感覚。
異物が内側をこじ開けようとする違和感。
粘度の高い香油をたっぷりとまとった男の指が、少年の入り口をなぞり、探り、そして、ゆっくりと熱を分け与えるように侵入してくる。
「ひ、…ぁ……っ」
声にならない悲鳴が、喉の奥でくぐもった。
少年はなけなしの力で体を固くし、侵入を拒もうとする。
だが、それは赤子が巨人に抗うような、無意味な抵抗に過ぎなかった。
「……狭いな」
男が、低く呟いた。
その言葉が、少年の羞恥心をさらに煽る。
一本だけ差し入れられた指は、少年の頑なな抵抗にあい、先へ進むのに苦戦しているようだった。
「ぁ……ぅ、や、め…っ」
少年の懇願は、途切れ途切れの喘ぎに変わる。
男は少年の抵抗など意にも介さず、一度抜いた指に更にたっぷりと香油を掬い取ると、再度その指を入り口に押し付けた。
くちゅ…、ぐちゅり
粘膜と油が混じり合う、聞きたくない水音が耳に届く。
指が無理やりこじ開けようとするたびに、ぴちゃ、と生々しい音が響いた。
少年はシーツに顔を埋め、ただ喘ぐことしかできない。
「は、ぁ…っ、…ぅ、あ……」
男の指は、焦らすようにゆっくりと、執拗に内側を掻き回す。
そのたびに体がびくりと跳ね、硬く閉ざされた場所が、否応なく熱い異物を受け入れる形にされていくのだった。
「力を抜け」
頭上から、地の底を這うような低い声が降ってきた。
命令、というよりは、決定事項を告げる響き。
そんなことを言われても、どうすればいいのか分からない。
呼吸すらままならず、ただシーツを握りしめることしかできない。
なぜ、自分が。
少年は自問する。
ついこの間まで、辺境の村で、畑を耕すだけの平凡な生活を送っていたはずだ。
なぜ、この城に。
家族同然だった村人たちを守ろうとして、敵である男の目に留まった。
ただ、それだけだったはずだ。
なぜ、王の寝所へ──。
自問は答えを得られぬまま、暗い思考の渦に沈んでいく。
その間にも、男の指は執拗に内壁を掻き回し、少年が今まで知らなかった体の道を、その巨大な存在で満たすための準備を、着々と進めていた。
未知の感覚に怯えながら、少年の記憶は一月前に遡る――
うつ伏せにさせられた豪奢な寝台の上で、少年はシーツを固く握りしめている。
指の節が白くなるほど力を込めても、体の震えは止まらない。
いつもは畑仕事で土にまみれている自分の指と、この世の物とは思えぬほど滑らかなシーツの感触が、あまりに不釣り合いだった。
背後に、男の気配がある。
この城の主、そして、つい先日まで敵国の王であったはずの男。
その男が、少年のすぐ傍らに膝をついている。
「……っ!」
不意に、熱を帯びた何かが尾てい骨のあたりに触れた。
ひやりとした粘り気のある液体と共に、ごつりとした指が、これまで誰にも触れられたことのない場所に押し当てられる。
少年は息を呑み、身を硬くした。
つぷり――
初めての感覚。
異物が内側をこじ開けようとする違和感。
粘度の高い香油をたっぷりとまとった男の指が、少年の入り口をなぞり、探り、そして、ゆっくりと熱を分け与えるように侵入してくる。
「ひ、…ぁ……っ」
声にならない悲鳴が、喉の奥でくぐもった。
少年はなけなしの力で体を固くし、侵入を拒もうとする。
だが、それは赤子が巨人に抗うような、無意味な抵抗に過ぎなかった。
「……狭いな」
男が、低く呟いた。
その言葉が、少年の羞恥心をさらに煽る。
一本だけ差し入れられた指は、少年の頑なな抵抗にあい、先へ進むのに苦戦しているようだった。
「ぁ……ぅ、や、め…っ」
少年の懇願は、途切れ途切れの喘ぎに変わる。
男は少年の抵抗など意にも介さず、一度抜いた指に更にたっぷりと香油を掬い取ると、再度その指を入り口に押し付けた。
くちゅ…、ぐちゅり
粘膜と油が混じり合う、聞きたくない水音が耳に届く。
指が無理やりこじ開けようとするたびに、ぴちゃ、と生々しい音が響いた。
少年はシーツに顔を埋め、ただ喘ぐことしかできない。
「は、ぁ…っ、…ぅ、あ……」
男の指は、焦らすようにゆっくりと、執拗に内側を掻き回す。
そのたびに体がびくりと跳ね、硬く閉ざされた場所が、否応なく熱い異物を受け入れる形にされていくのだった。
「力を抜け」
頭上から、地の底を這うような低い声が降ってきた。
命令、というよりは、決定事項を告げる響き。
そんなことを言われても、どうすればいいのか分からない。
呼吸すらままならず、ただシーツを握りしめることしかできない。
なぜ、自分が。
少年は自問する。
ついこの間まで、辺境の村で、畑を耕すだけの平凡な生活を送っていたはずだ。
なぜ、この城に。
家族同然だった村人たちを守ろうとして、敵である男の目に留まった。
ただ、それだけだったはずだ。
なぜ、王の寝所へ──。
自問は答えを得られぬまま、暗い思考の渦に沈んでいく。
その間にも、男の指は執拗に内壁を掻き回し、少年が今まで知らなかった体の道を、その巨大な存在で満たすための準備を、着々と進めていた。
未知の感覚に怯えながら、少年の記憶は一月前に遡る――
41
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている
春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」
王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。
冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、
なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。
誰に対しても一切の温情を見せないその男が、
唯一リクにだけは、優しく微笑む――
その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。
孤児の少年が踏み入れたのは、
権謀術数渦巻く宰相の世界と、
その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。
これは、孤独なふたりが出会い、
やがて世界を変えていく、
静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
愛人少年は王に寵愛される
時枝蓮夜
BL
女性なら、三年夫婦の生活がなければ白い結婚として離縁ができる。
僕には三年待っても、白い結婚は訪れない。この国では、王の愛人は男と定められており、白い結婚であっても離婚は認められていないためだ。
初めから要らぬ子供を増やさないために、男を愛人にと定められているのだ。子ができなくて当然なのだから、離婚を論じるられる事もなかった。
そして若い間に抱き潰されたあと、修道院に幽閉されて一生を終える。
僕はもうすぐ王の愛人に召し出され、2年になる。夜のお召もあるが、ただ抱きしめられて眠るだけのお召だ。
そんな生活に変化があったのは、僕に遅い精通があってからだった。
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。
美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる