クローバー

clover

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3話

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僕が初めて曲を上げたのは中学一年生の時だ。誕生日にお父さんが青色のテレキャスターを買ってくれた。そのまま練習していたが、小学生の時にも少しドラムをやっていて、家にもドラムがあった。それらのお陰で音楽の成績も上々。何より楽しかった。
そのうち詩を書いてメロディをつけるようになり、1曲作ってネットに上げた。再生回数は今よりはまだ全然だったけど、(今も全然。)作っていて、それを少しでも聴いてくれる人達がいる。そんな事実があることを信じて作り続けていた。でも曲を作り初めて一年程たった頃だ。
『この曲全然伸びてないじゃん。』
『こんなの聴くくらいなら他の神曲探すわw』
『再生回数そんなにいってなくて草。自己満じゃんw』
辛辣なコメントだった。全て同じ人が書いたものだろう。いわゆる煽りってやつだ。毎回僕の曲につくコメントは10件程。このたった数件のコメントによって、他の視聴者も去り、コメントは無くなり、再生回数も減った。
「なんで僕なんだ。」
そんなことを考えていたが、めげずに曲を上げ続けた。そして高校入学頃には何とか再生回数1000まで漕ぎ着けた。バイトもし始めて、ギターを続けていたが軽音部には入らずに家で練習していた。
そして今も曲を作っている。始業式に遅刻したのもそのせいだから......。
高校生活がボッチになろうが僕にとっては音楽があれば問題無かった。




朝起きて学校に行くまでにすることが増えた。
歯を磨いて、ご飯食べて、着替えて、家を出て、庭に植えた一輪の小さな花に水をやる。朝日が、花に付いた水を照らして、昨日とはまた違う雰囲気を醸し出していた。

学校に着いて席につく。
「はい。みんな席についてねぇ。」
みんなが急いで席に着いた。
「じゃあHR始めるよーって言いたいところなんだけど、今日は転校生が1人来ています。」
教室がザワザワしだした。僕にとって転校生なんて来てもどうせボッチだから特に気にしなかったけど。
「じゃあ来て自己紹介してもらうのでみんな静かに~。」
教師が合図すると教室のドアが空いた。
「葉摘 陽花(はづみ ひのか)です。よろしくお願いします。」

。。。、え?それだけ?


随分とあっさりした自己紹介だなー。教室中が一気に静まりかえる。
「えぇ...ぁあ、じゃあ、葉摘さんはあそこの席ね。みんな仲良くしてあげてねー。」
おい教師。全然フォローになってねぇぞ。
そして彼女は席につく。はずなんだが、何故かこっちに歩いてくる。
(え?席向こうじゃん。なんでこっち来るの?)
みんな戸惑いを隠せない。そして彼女は僕の席の前で立ち止まり、一言。





「ありがとうね。」

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