異世界犯罪対策課

河野守

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第一章 女子高生行方不明事件

第三十一話

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「リベレーションを買いたい、だと?」
 明善の言葉を訝しげに繰り返す金髪に、明善と愛美の二人は笑顔で頷く。二人はヘラヘラと笑っており、いかにもな軽薄な若者を演じている。
「ああ、そうそう。そうだ、これがあった。すっかり忘れてた」
 明善は肩掛けの鞄に手を入れ、何かを探す様な動作。異世界人達は明善が何か武器を取り出すんじゃないかと、とっさに一歩後ろに下がり警戒を強める。
 明善が取り出して見せたのは、国産菓子メーカーの板チョコ。
「ルキさんにはこれを。板チョコ、沖田さんにリクエストしていましたよね?」
 ルキと呼ばれた金髪の男はきょとんとした表情を浮かべる。彼は明善に近づき恐る恐るチョコを受け取った。まじまじとチョコを見つめる。
「これは……確かに俺が沖田さんに頼んだやつだ。なんで、あんたが?」
「沖田さんから頼まれたんですよ。リベレーションをもらいに行くついでに、あなた方から頼まれたものを買って行ってくれって。そちらのイーニアさんは、このポテチですね」
 刺青の男は明善から渡されたポテトチップスの袋を受け取り、満面な笑みを浮かべる。彼は早速袋を開け、美味しそうに頬張っていた。
「そうそう、これだ! いやー、ありがとうな」
 刺青の男は明善に屈託の無い笑みを浮かべる。
 金髪の方もすっかり警戒心を解いた様で、チョコレートを口に入れていた。
 ルルから聞いた話だが、アルミトスには菓子類が少ない、というかそもそも存在しない。食糧供給自体は一応安定しているが、常に戦争のために備蓄しており、食の娯楽に乏しい。
 比べて、こちらの世界の菓子は多種多様。異世界では大変人気であり、少ないながらも異世界に対し輸出している。ルルも新作の菓子が出たら、欠かさず買っているらしい。
 こちらの世界に潜入してくる工作員の中には菓子類を購入することを目的とし、志願する人間が少なくないそうだ。
 もちろん、この菓子の差し入れは明善達の作戦だ。
 本日の作戦のため沖田から話を聞き、異世界人達の情報を入手した。
 話を聞く限り、沖田はアルミトスの異世界人からかなり信頼されていたようで、名前を呼び合う仲だ。彼らは人目につかない様買い物などをできるだけ控えており、沖田に度々買い物を頼んでいた。沖田は彼らから向こうの世界に来ないか、もしくは製品の密輸の窓口にならないかとも言われていたそうだ。
 異世界人達を油断させるこの作戦は、見事成功。明善達が沖田ととても親しい間柄であると彼らは考え、警戒心を解いてくれた。
 さて、第一関門は突破だな。
  明善は笑顔を取り繕ったまま、心の中で安堵した。
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