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第2章 最悪の少年テロリスト 篠津川達也
第8話
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一週間後、旭は電車に揺られていた。
旭は車窓から流れ行く風景をぼんやりと眺める。路線の横に植えられた桜は風で揺れ、ピンク色の花びらが車窓に張り付く。今日は晴天で気温が高い。春の麗らかな陽気にあてられたのか、旭の前に座っている男性は寝息を立てていた。
文句の無い素晴らしい天気であるのだが、対照的に旭の表情は暗く冴えない。
……さて、どうしようかな。
正直、調査は行き詰まっており、香織達への報告以降も成果は無し。片っ端から当時の関係者への聞き込みをしたが、達也の居場所や無実の証拠に繋がる情報は得られなかった。今回の事件を起こした人物の情報もだ。
旭は両腕を組み、考え込む。
実は旭が当時の関係者の中で、会えていない人物が数人いる。当時達也を捕まえた、小林徹を含んだクラスメイト達だ。彼らにも話を聞きたいのだが、いかんせんガードが固い。マスコミも達也のことを聞こうと接触を試みたが、全て失敗したらしい。特に徹の場合は、彼の父親の事務所が完璧に守っている。
旭が一番会いたい人物が徹なのだが、彼に会うためのパイプがない。明日香に相談でもしようか。先輩である彼女なら、何かよいコネを持っているかもしれない。
旭がふと気がつくと、いつの間にか鳳エンジニア社の扉の前にいた。どうやら色々考えをしているうちに、会社に着いたようだ。
物を考えながら、歩くもんじゃないな。
旭がドアノブに手を掛けた時、部屋の中から賑やかな声が聞こえてきた。
お客さんかな。だけど、今日は来客の予定はなかったはず。
旭は訝しながらも扉を開ける。
「お疲れ様です」
「ねえ、明日香先輩、教えてくださいよ。あ、旭くんだ。久しぶり」
「……大菜木さん?」
来客用のソファに座っているのは、明日香ともう一人の女性。
女性の名前は大菜木《おおなき》加奈恵《かなえ》。クセっ気が強い髪を輪ゴムで一括りに纏めており、ワイシャツにジーンズといったラフな格好。よく見ると結構な美人であるのだが、加奈恵はオシャレに関心が無く、いつもノーメイク。
彼女は明日香の大学時代の二つ後輩であり、現在はローカル新聞局の新聞記者をしている。加奈恵は時折ここを訪れ、明日香に新聞のネタになりそうな情報をせびるのだ。明日香は毎回露骨に嫌な顔をして対応するのだが、それでも彼女を無下に扱わないのには理由がある。
加奈恵は新聞記者独自の情報網を持っており、彼女本人も優秀な記者だ。以前、明日香から加奈恵の大学時代の伝説を聞いたことがある。加奈恵は当時新聞部に所属しており、助教授が愛人であった学生を中絶させたことや、学生同士の賭博などをすっぱぬいて記事にしたことがある。特に教育委員会と地元企業の癒着を記事にし大学内に張り出した時、学園長は頭を抱えたらしい。加奈恵はその嗅覚から、学友達にハイエナの大菜木と畏敬の念を込めて呼ばれていたそうだ。
「大菜木さん、お久しぶりです」
「そんな他人行儀にしなくて良いよ。明日香先輩達みたく、下の名前で呼んでよ。あ、かなちゃんでも良いよ」
「謹んでお断りします」
「えー、相変わらず君はノリが悪いな」
「おい、加奈恵、いい加減にしろよ」
加奈恵は明日香の注意に「へーい」と気の抜けた返事。旭は苦笑いしながら自分の席に座り、仕事を開始。
「それで明日香先輩、今回の件なんですけど」
「本当にしつこいな、お前は。例え関わっていても話せないって、何度も言ってるだろ」
「そこをなんとか、可愛い後輩の頼みで」
「諦めろ」
「情報くださいよ。お願いしますよ」
「警察とかに聞いたらどうだ?」
「もちろん行きましたとも。ですけど、どれも知られた情報ばかりで目新しいものなんて、何一つありませんでした。一生のお願いですから。このとおり!」
「この前も一生のお願いをされたんだが。お前の一生は何回あるんだ。とにかくダメなものはダメだ!」
明日香はこれで話は終わりだとソファーから立ち上がり、自分の席に戻る。
「ちぇ。じゃあ……」
加奈恵は部屋を見渡す。どうやら明日香から欲しい情報がもらえそうにないので、他から話を聞き出そうという魂胆らしい。最初に目をつけたのは、机で事務作業をしていた桜。
「桜さーん」
「あ、食器の洗い物が溜まってるの、忘れた。洗わないと。忙しい、忙しいわ」
桜はそう言い残し、耳を両手で塞ぎながらそそくさと給湯室に避難。加奈恵がいなくなるまで出てこないつもりだ。
「ちぇ、桜さんもか。篠津川達也さんの件を知りたいだけなのに」
ぶつくさと呟く加奈恵。
達也さんの件?
旭は達也の名前が出たことに驚き、顔を上げる。
そして、加奈恵と目が合ってしまった。
彼女は口の橋を吊り上げ、ニンマリと笑う。
……しまった。
旭のリアクションでバレてしまったのだ。旭が達也の件に関わっていることを。
旭は自分の未熟さを呪うが、手遅れだ。
加奈恵は眼を輝かせ、机を回り込み旭に顔を近づける。
「あれ? あれ? あれー? もしかして、旭くんさ、この事件の調査でもしているのかな?」
「い、いえ」
「嘘ついちゃ駄目だよ。この加奈恵様の眼は誤魔化せねえぜ」
加奈恵は旭の肩に手をまわし、体を寄せてくる。彼女の馴れ馴れしい態度に、旭はただただ困惑。
旭はどうもこの女性が苦手だ。いつもテンションが高く、押しがかなり強い。こちらが素っ気ない態度を取っても、距離をぐいぐい詰めてくる。もっとも、この押しの強さも新聞記者として必要なスキルなのだろう。
頭を抱える旭を気に留めず、加奈恵はさらに肩と寄せてくる。
「ねえねえ、旭くん。情報おくれよ。手ぶらだと怖―い上司に怒られちゃう」
「機密事項なので、簡単に喋れません」
旭は毅然とした態度を取るが、加奈恵は御構いなし。
「そんなこと言わずにさ。次のボーナスの査定が下がるんだよ。お姉さん生活できないよ」
「駄目なものは駄目です」
「えー。じゃあ責任を取って、旭くんが私を養ってよ」
「何故そうなるんですか」
さて、どうしたものか。
旭があしらい方に悩んでいると、一つの閃きが。
新聞記者……ね。
旭は椅子から立ち上がり、加奈恵に向き直る。
「大菜木さん!」
「な、なんだい、急に大声を出して」
加奈恵は旭の勢いに、思わず眼を丸くする。
「俺と取引しませんか?」
「取引?」
「はい」
加奈恵は明日香の方を振り向く。加奈恵の顔には、良いのかという疑問の表情。
明日香は難しい表情で、頭を掻きむしる。
「……この件は旭に一任されている。それに、なんでもかんでも話すほど、愚かじゃない」
許可をもらった加奈恵は旭に向き直り、にやっと笑う。
「で、取引っていうのは?」
「大菜木さんの新聞記者という立場をお借りしたい」
「それに見合った情報はくれるんだろうね?」
「もちろんです。話せる範囲ですけど、今回の事件についてお教えします。ただし、こちらの許可があるまで記事にしてはダメです」
「うーん。それだと他紙を出し抜けないな……。でもなあ……。わかった! その話乗った!」
「取引成立ですね」
旭も加奈恵につられ、つい口角が上がる。
現状を打開するための光明を見つけたのだ。
旭は車窓から流れ行く風景をぼんやりと眺める。路線の横に植えられた桜は風で揺れ、ピンク色の花びらが車窓に張り付く。今日は晴天で気温が高い。春の麗らかな陽気にあてられたのか、旭の前に座っている男性は寝息を立てていた。
文句の無い素晴らしい天気であるのだが、対照的に旭の表情は暗く冴えない。
……さて、どうしようかな。
正直、調査は行き詰まっており、香織達への報告以降も成果は無し。片っ端から当時の関係者への聞き込みをしたが、達也の居場所や無実の証拠に繋がる情報は得られなかった。今回の事件を起こした人物の情報もだ。
旭は両腕を組み、考え込む。
実は旭が当時の関係者の中で、会えていない人物が数人いる。当時達也を捕まえた、小林徹を含んだクラスメイト達だ。彼らにも話を聞きたいのだが、いかんせんガードが固い。マスコミも達也のことを聞こうと接触を試みたが、全て失敗したらしい。特に徹の場合は、彼の父親の事務所が完璧に守っている。
旭が一番会いたい人物が徹なのだが、彼に会うためのパイプがない。明日香に相談でもしようか。先輩である彼女なら、何かよいコネを持っているかもしれない。
旭がふと気がつくと、いつの間にか鳳エンジニア社の扉の前にいた。どうやら色々考えをしているうちに、会社に着いたようだ。
物を考えながら、歩くもんじゃないな。
旭がドアノブに手を掛けた時、部屋の中から賑やかな声が聞こえてきた。
お客さんかな。だけど、今日は来客の予定はなかったはず。
旭は訝しながらも扉を開ける。
「お疲れ様です」
「ねえ、明日香先輩、教えてくださいよ。あ、旭くんだ。久しぶり」
「……大菜木さん?」
来客用のソファに座っているのは、明日香ともう一人の女性。
女性の名前は大菜木《おおなき》加奈恵《かなえ》。クセっ気が強い髪を輪ゴムで一括りに纏めており、ワイシャツにジーンズといったラフな格好。よく見ると結構な美人であるのだが、加奈恵はオシャレに関心が無く、いつもノーメイク。
彼女は明日香の大学時代の二つ後輩であり、現在はローカル新聞局の新聞記者をしている。加奈恵は時折ここを訪れ、明日香に新聞のネタになりそうな情報をせびるのだ。明日香は毎回露骨に嫌な顔をして対応するのだが、それでも彼女を無下に扱わないのには理由がある。
加奈恵は新聞記者独自の情報網を持っており、彼女本人も優秀な記者だ。以前、明日香から加奈恵の大学時代の伝説を聞いたことがある。加奈恵は当時新聞部に所属しており、助教授が愛人であった学生を中絶させたことや、学生同士の賭博などをすっぱぬいて記事にしたことがある。特に教育委員会と地元企業の癒着を記事にし大学内に張り出した時、学園長は頭を抱えたらしい。加奈恵はその嗅覚から、学友達にハイエナの大菜木と畏敬の念を込めて呼ばれていたそうだ。
「大菜木さん、お久しぶりです」
「そんな他人行儀にしなくて良いよ。明日香先輩達みたく、下の名前で呼んでよ。あ、かなちゃんでも良いよ」
「謹んでお断りします」
「えー、相変わらず君はノリが悪いな」
「おい、加奈恵、いい加減にしろよ」
加奈恵は明日香の注意に「へーい」と気の抜けた返事。旭は苦笑いしながら自分の席に座り、仕事を開始。
「それで明日香先輩、今回の件なんですけど」
「本当にしつこいな、お前は。例え関わっていても話せないって、何度も言ってるだろ」
「そこをなんとか、可愛い後輩の頼みで」
「諦めろ」
「情報くださいよ。お願いしますよ」
「警察とかに聞いたらどうだ?」
「もちろん行きましたとも。ですけど、どれも知られた情報ばかりで目新しいものなんて、何一つありませんでした。一生のお願いですから。このとおり!」
「この前も一生のお願いをされたんだが。お前の一生は何回あるんだ。とにかくダメなものはダメだ!」
明日香はこれで話は終わりだとソファーから立ち上がり、自分の席に戻る。
「ちぇ。じゃあ……」
加奈恵は部屋を見渡す。どうやら明日香から欲しい情報がもらえそうにないので、他から話を聞き出そうという魂胆らしい。最初に目をつけたのは、机で事務作業をしていた桜。
「桜さーん」
「あ、食器の洗い物が溜まってるの、忘れた。洗わないと。忙しい、忙しいわ」
桜はそう言い残し、耳を両手で塞ぎながらそそくさと給湯室に避難。加奈恵がいなくなるまで出てこないつもりだ。
「ちぇ、桜さんもか。篠津川達也さんの件を知りたいだけなのに」
ぶつくさと呟く加奈恵。
達也さんの件?
旭は達也の名前が出たことに驚き、顔を上げる。
そして、加奈恵と目が合ってしまった。
彼女は口の橋を吊り上げ、ニンマリと笑う。
……しまった。
旭のリアクションでバレてしまったのだ。旭が達也の件に関わっていることを。
旭は自分の未熟さを呪うが、手遅れだ。
加奈恵は眼を輝かせ、机を回り込み旭に顔を近づける。
「あれ? あれ? あれー? もしかして、旭くんさ、この事件の調査でもしているのかな?」
「い、いえ」
「嘘ついちゃ駄目だよ。この加奈恵様の眼は誤魔化せねえぜ」
加奈恵は旭の肩に手をまわし、体を寄せてくる。彼女の馴れ馴れしい態度に、旭はただただ困惑。
旭はどうもこの女性が苦手だ。いつもテンションが高く、押しがかなり強い。こちらが素っ気ない態度を取っても、距離をぐいぐい詰めてくる。もっとも、この押しの強さも新聞記者として必要なスキルなのだろう。
頭を抱える旭を気に留めず、加奈恵はさらに肩と寄せてくる。
「ねえねえ、旭くん。情報おくれよ。手ぶらだと怖―い上司に怒られちゃう」
「機密事項なので、簡単に喋れません」
旭は毅然とした態度を取るが、加奈恵は御構いなし。
「そんなこと言わずにさ。次のボーナスの査定が下がるんだよ。お姉さん生活できないよ」
「駄目なものは駄目です」
「えー。じゃあ責任を取って、旭くんが私を養ってよ」
「何故そうなるんですか」
さて、どうしたものか。
旭があしらい方に悩んでいると、一つの閃きが。
新聞記者……ね。
旭は椅子から立ち上がり、加奈恵に向き直る。
「大菜木さん!」
「な、なんだい、急に大声を出して」
加奈恵は旭の勢いに、思わず眼を丸くする。
「俺と取引しませんか?」
「取引?」
「はい」
加奈恵は明日香の方を振り向く。加奈恵の顔には、良いのかという疑問の表情。
明日香は難しい表情で、頭を掻きむしる。
「……この件は旭に一任されている。それに、なんでもかんでも話すほど、愚かじゃない」
許可をもらった加奈恵は旭に向き直り、にやっと笑う。
「で、取引っていうのは?」
「大菜木さんの新聞記者という立場をお借りしたい」
「それに見合った情報はくれるんだろうね?」
「もちろんです。話せる範囲ですけど、今回の事件についてお教えします。ただし、こちらの許可があるまで記事にしてはダメです」
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