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第3章 自由な悪意
第12話
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「だめだ、見つからない」
リベルタスの捜索を初め、一時間は経とうとしていた。
だが、警察や他のウォッチャーから発見の報はまだ来ていない。旭もアトラクションやテナント跡を探したが、痕跡すら見つけられずにいた。
「次はあそこにするかな」
旭が次の捜索対象に選んだのは、園内の端にある洞窟を模した巨大迷路。入り口には「迷路に隠されたスタンプを六つ探してね!」と、クマのマスコットが描かれていた。元々は可愛らしい外見だったと思われるが、今は塗料が所々剥がれ不気味な姿となっている。
「暗いな」
迷路の中は窓が存在せず、電気も通っていないので真っ暗。旭はカバンから懐中電灯を取り出し、足元に気をつけながら迷路を進む。
全ての通路を巡ったが、見つかったのはスタンプ台だけで、リベルタスのメンバーはいなかった。
迷路の出口から出たところで旭は小さな違和感を抱き、迷路に振り向いた。
「あれ?」
「どうかなさいましたか?」
ARグラス内蔵のマイクから、アイが呼びかける。
「アイ、この迷路、ちょっとおかしい」
「おかしい、とは?」
「入り口には迷路の中にスタンプが六つ隠してあるって、書いてあった」
「当時のホームページにも、六つと記載されています。それがどうかしましたか?」
「俺が迷路内で見つけたスタンプは五つだった。一つ足りない」
「残りの一つは撤去されたのでは?」
「いや、一つだけなんて考えにくい」
小さなことでも違和感を持ったら、徹底的に追求するべき。
ウォッチャーの心得の一つである。
「アイ、この迷路の構造を調べて」
「少々お持ちください。……経路の詳細を記載している個人サイトを見つけました。サイトの名前は『爆進!迷路野郎!』。全国のレジャー施設の迷路について、批評をしていますね。サイトの運営者は何度もこの迷路に足を運び、通路の道筋をメモしていたようです」
世の中には物好きな人もいるもんだなと、旭は思わず感心。
「簡易的ですが、サイトの情報と旭さんの移動の軌跡から、迷路の構造を表示します」
ARグラス上に迷路の構造とスタンプの位置が、俯瞰的な視点の画像として表示される。
「俺が見つけたスタンプは……」
旭は記憶を辿り、自身が見つけたスタンプの位置を指でマッピング。
「見つけていないのは、ここだな」
旭は出口から迷路の中に戻り、残りのスタンプがある位置に向かう。
「あれ? ここ別れ道のはずなんだけど。アイ、ここで合っているよな?」
「はい」
旭がいるのは、本来二手に分かれている場所。だが、今は一本道になっている。
旭は周辺を懐中電灯で壁を照らしながら、注意深く調べる。
「ここ、小さな隙間がある」
壁に切れ目のような細い線があるのを見つけた。それによく見てみると、壁の一部の色が微妙に違う。
「……もしかして」
旭が試しにその壁を手で押してみると、僅かに後ろに傾く。旭は懐中電灯を口に咥え、両手で壁を掴む。壁は結構軽く、簡単に持ち上げることができた。壁を横にずらすと、隠れていた本来の通路が現れた。
「ビンゴ!」
「偽物の壁で、通路を隠していたようですね。それにしても、旭さんはよく気がつきましたね。あなたの洞察力は本当に素晴らしいです」
「どうも。さて、行こうか」
「はい。慎重に進みましょう」
通路を進むと、奥には最後のスタンプ台が鎮座。そして、横の壁には立ち入り禁止と書かれた、従業員用通路の扉。
「旭さん、おそらくこの先に」
「ああ、いるだろうね。それにしても迷路の中に、更に隠しアジトを作るとは。まるで子供の発想だな」
「単に面白そう、格好良いから、という理由でしょう。彼らはそういう集団ですよ」
「風華さんや他のウォッチャーに、この場所のことを連絡してくれ。一人で向かうのは危険だ。他の人と合流してから進もう」
「その意見に同意です」
その時、乾いた音が扉の向こう側から聞こえてきた。
リベルタスの捜索を初め、一時間は経とうとしていた。
だが、警察や他のウォッチャーから発見の報はまだ来ていない。旭もアトラクションやテナント跡を探したが、痕跡すら見つけられずにいた。
「次はあそこにするかな」
旭が次の捜索対象に選んだのは、園内の端にある洞窟を模した巨大迷路。入り口には「迷路に隠されたスタンプを六つ探してね!」と、クマのマスコットが描かれていた。元々は可愛らしい外見だったと思われるが、今は塗料が所々剥がれ不気味な姿となっている。
「暗いな」
迷路の中は窓が存在せず、電気も通っていないので真っ暗。旭はカバンから懐中電灯を取り出し、足元に気をつけながら迷路を進む。
全ての通路を巡ったが、見つかったのはスタンプ台だけで、リベルタスのメンバーはいなかった。
迷路の出口から出たところで旭は小さな違和感を抱き、迷路に振り向いた。
「あれ?」
「どうかなさいましたか?」
ARグラス内蔵のマイクから、アイが呼びかける。
「アイ、この迷路、ちょっとおかしい」
「おかしい、とは?」
「入り口には迷路の中にスタンプが六つ隠してあるって、書いてあった」
「当時のホームページにも、六つと記載されています。それがどうかしましたか?」
「俺が迷路内で見つけたスタンプは五つだった。一つ足りない」
「残りの一つは撤去されたのでは?」
「いや、一つだけなんて考えにくい」
小さなことでも違和感を持ったら、徹底的に追求するべき。
ウォッチャーの心得の一つである。
「アイ、この迷路の構造を調べて」
「少々お持ちください。……経路の詳細を記載している個人サイトを見つけました。サイトの名前は『爆進!迷路野郎!』。全国のレジャー施設の迷路について、批評をしていますね。サイトの運営者は何度もこの迷路に足を運び、通路の道筋をメモしていたようです」
世の中には物好きな人もいるもんだなと、旭は思わず感心。
「簡易的ですが、サイトの情報と旭さんの移動の軌跡から、迷路の構造を表示します」
ARグラス上に迷路の構造とスタンプの位置が、俯瞰的な視点の画像として表示される。
「俺が見つけたスタンプは……」
旭は記憶を辿り、自身が見つけたスタンプの位置を指でマッピング。
「見つけていないのは、ここだな」
旭は出口から迷路の中に戻り、残りのスタンプがある位置に向かう。
「あれ? ここ別れ道のはずなんだけど。アイ、ここで合っているよな?」
「はい」
旭がいるのは、本来二手に分かれている場所。だが、今は一本道になっている。
旭は周辺を懐中電灯で壁を照らしながら、注意深く調べる。
「ここ、小さな隙間がある」
壁に切れ目のような細い線があるのを見つけた。それによく見てみると、壁の一部の色が微妙に違う。
「……もしかして」
旭が試しにその壁を手で押してみると、僅かに後ろに傾く。旭は懐中電灯を口に咥え、両手で壁を掴む。壁は結構軽く、簡単に持ち上げることができた。壁を横にずらすと、隠れていた本来の通路が現れた。
「ビンゴ!」
「偽物の壁で、通路を隠していたようですね。それにしても、旭さんはよく気がつきましたね。あなたの洞察力は本当に素晴らしいです」
「どうも。さて、行こうか」
「はい。慎重に進みましょう」
通路を進むと、奥には最後のスタンプ台が鎮座。そして、横の壁には立ち入り禁止と書かれた、従業員用通路の扉。
「旭さん、おそらくこの先に」
「ああ、いるだろうね。それにしても迷路の中に、更に隠しアジトを作るとは。まるで子供の発想だな」
「単に面白そう、格好良いから、という理由でしょう。彼らはそういう集団ですよ」
「風華さんや他のウォッチャーに、この場所のことを連絡してくれ。一人で向かうのは危険だ。他の人と合流してから進もう」
「その意見に同意です」
その時、乾いた音が扉の向こう側から聞こえてきた。
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