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第4章 悪人に正義の鉄槌を
第10話
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「君は……」
戸惑う遠藤に対し、旭は「まずは礼を言わせてください」と切り出す。
「昨日、俺達が記者に絡まれている時に助けてくれた男性。あれ、あなたですよね? 達也さんに頼まれたのか、それともあなたが自主的にそうしていたのかわかりませんが、あなたは田村香織さんを見守っていた」
「……ああ。達也君に頼まれたんだ。今回の件で、香織ちゃん達家族がまたマスコミに付き纏われるかもしれないと。それで彼の懸念は当たり。俺が助けに入ったというわけだ」
「あの時は本当に助かりました。改めて礼を言います」
旭は頭を深々と下げる。そんな旭に、遠藤は苦笑。
「君は随分と律儀な少年だな。いや、愚直と言ってもいい。こんな状況で、最初に礼を言うなんて」
「褒め言葉として、受け取っておきます」
「それにしても驚いたよ。てっきり香織ちゃんの彼氏かと思っていたが、まさかウォッチャーだったとは。……そのウォッチャーの君がただ礼を言いにこの場に来た、わけではないよね?」
「はい。では、次の話に移ります。答え合わせをしたいんです」
「答え合わせ?」
「今回の件についての答え合わせです。一つずつ、いきます。まずあなたが達也さんを東京特別刑務所から連れ出した理由です。達也さんの冤罪を晴らすためとしても、外に連れ出すのはいくらなんでもやりすぎだ。あなたが法を犯すほどの、刑務官と受刑者以上の繋がりがある」
旭はそこで一旦言葉を切る。
「遠藤さん、あなたは達也さん、そして小林徹さんの小学校時代の同級生ですね?」
旭の言葉を聞き、徹は遠藤に視線を移す。遠藤の顔をまじまじと見つめ、「あっ!」と声を上げた。
「遠藤……。遠藤正成……。そうか、転校生だ! 小学六年の初めに来た転校生。お前だったのか!」
遠藤は「そうだ」と首肯。
「やっと思い出したか。忘れたままかと思っていたよ」
旭は軽く咳払い。
「話を続けます。遠藤さんは達也さんの小学校に転校し、徹さんからいじめを受けていた」
徹は「いじめじゃない! ちょっとからかっただけだ!」と叫ぶが、旭と遠藤は無視。
「そして、当時遠藤さんを助けたのが、達也さん」
「俺は当時、そこの小林徹から酷いいじめを受けていた。物を隠されるなんて、当たり前。集団で殴られたこともあった。そんな俺を助けてくれたのが、達也君なんだ。彼は俺にとって正義のヒーロー。俺も彼のような正義漢になりたいと憧れ、刑務官の職を選んだ」
遠藤の表情は、鎮痛な面持ちに変わる。
「配属先で彼と再会した時は驚いたよ。残虐なテロリストとして収監されていたなんて。八年前の『ブラックサンデー』当時、俺は海外にいて達也君のことを知らなかったから。仕事の傍ら、俺は彼から事情を聞いた。そして、俺は彼を助けるために行動を開始した。今度は俺が助ける番だと」
「遠藤さんがリベルタスに入ったのも、達也さんを助けるためですね?」
「その通り。まずは達也くんの無実の証拠が必要。それをリベルタスから得ようと、彼らが出入りしていると噂のクラブなどをしらみ潰しに当たった、そして、川村裕太郎と接触することができた。酒を飲ませて酔わせたら、当時の計画や小林徹との関係をベラベラと喋ってくれたよ。まるで武勇伝のようにな」
「川村裕太郎の証言だけでも、達也さんの無実を証明できたはず。だけど、あなたはそうしなかった。もう一つ目的があったから。……それは小林徹さんに罰を与えること」
遠藤は旭から徹へと視線を移す。その視線には憤怒の感情が込められており、徹は自身に向けられた激情に思わず身震いした。
「八年前、こいつは川村達の凶行を止めることができた。爆弾のことは本当に知らなかったとしても、悪事を阻止するチャンスはいくらでもあったはず。だが、そうしなかった。それどころか、自分の将来のために川村達に協力。結果、どうなった?」
「達也さんを含んだ、大勢の人生が狂いました」
達也は無実の罪で投獄され、八年の年月を牢屋の中で過ごすことに。八年はあまりにも長すぎる。本来なら達也は進学や就職し、人生を謳歌しているはずだった。それだけじゃない。テロにより大勢の人が亡くなった。結果論とはいえ、徹の自己保身のために、たくさんの人間の人生が壊されたのだ。
「小林徹は、それらの罪に対する罰を受けなければならない」
「遠藤さんが罰しようとしたのは、徹さんだけではないですよね? リベルタスもあなたの断罪の対象だ」
旭は、一枚の紙を取り出した。
達也の独房に残された置き手紙、そのコピーだ。
「まず確認したいのですが、この置き手紙は遠藤さんが作成したものですか?」
「ああ」
「なら、良かった。俺の考えは当たっているみたいですね。この置き手紙には、こう書かれています。篠津川達也君が無実であることを、我々は知っている。証拠を持っている。私は八年前に彼の人生を台無しにした者達、真の悪を決して許さない、と。この文章、よく読むと妙な点があります。一つ目の文章では『我々』という複数形の人称を使っている」
旭は紙に書かれている、とある一文字を指差した。
「しかし、次の文章では『私』。最初は誤字かと思いましたが、これは意図したもの。あなたは、リベルタスと自身を分けていた。達也さんの人生を台無しにした者達。この中にリベルタスも入っている」
遠藤は「そうだ」と首肯。
「俺は小林徹、リベルタス両方を罰する方法を考えた。そして、リベルタスを使い、小林徹を追い詰めることにした。お前が八年前にリベルタスの企みを阻止していれば、こんなことにはならなかったと思い知らせるために」
「どうやって、リベルタスを今回の計画に巻き込んだのですか?」
「提案したのさ。今のタイミングで小林徹の過去を暴露すれば、奴は確実に破滅するぞ、と。面白そうだと簡単に話に乗ってくれたよ」
「そして、利用し終わったら、リベルタスを爆弾で吹き飛ばすつもりだった」
旭の言葉に驚き、遠藤は目を見開く。
戸惑う遠藤に対し、旭は「まずは礼を言わせてください」と切り出す。
「昨日、俺達が記者に絡まれている時に助けてくれた男性。あれ、あなたですよね? 達也さんに頼まれたのか、それともあなたが自主的にそうしていたのかわかりませんが、あなたは田村香織さんを見守っていた」
「……ああ。達也君に頼まれたんだ。今回の件で、香織ちゃん達家族がまたマスコミに付き纏われるかもしれないと。それで彼の懸念は当たり。俺が助けに入ったというわけだ」
「あの時は本当に助かりました。改めて礼を言います」
旭は頭を深々と下げる。そんな旭に、遠藤は苦笑。
「君は随分と律儀な少年だな。いや、愚直と言ってもいい。こんな状況で、最初に礼を言うなんて」
「褒め言葉として、受け取っておきます」
「それにしても驚いたよ。てっきり香織ちゃんの彼氏かと思っていたが、まさかウォッチャーだったとは。……そのウォッチャーの君がただ礼を言いにこの場に来た、わけではないよね?」
「はい。では、次の話に移ります。答え合わせをしたいんです」
「答え合わせ?」
「今回の件についての答え合わせです。一つずつ、いきます。まずあなたが達也さんを東京特別刑務所から連れ出した理由です。達也さんの冤罪を晴らすためとしても、外に連れ出すのはいくらなんでもやりすぎだ。あなたが法を犯すほどの、刑務官と受刑者以上の繋がりがある」
旭はそこで一旦言葉を切る。
「遠藤さん、あなたは達也さん、そして小林徹さんの小学校時代の同級生ですね?」
旭の言葉を聞き、徹は遠藤に視線を移す。遠藤の顔をまじまじと見つめ、「あっ!」と声を上げた。
「遠藤……。遠藤正成……。そうか、転校生だ! 小学六年の初めに来た転校生。お前だったのか!」
遠藤は「そうだ」と首肯。
「やっと思い出したか。忘れたままかと思っていたよ」
旭は軽く咳払い。
「話を続けます。遠藤さんは達也さんの小学校に転校し、徹さんからいじめを受けていた」
徹は「いじめじゃない! ちょっとからかっただけだ!」と叫ぶが、旭と遠藤は無視。
「そして、当時遠藤さんを助けたのが、達也さん」
「俺は当時、そこの小林徹から酷いいじめを受けていた。物を隠されるなんて、当たり前。集団で殴られたこともあった。そんな俺を助けてくれたのが、達也君なんだ。彼は俺にとって正義のヒーロー。俺も彼のような正義漢になりたいと憧れ、刑務官の職を選んだ」
遠藤の表情は、鎮痛な面持ちに変わる。
「配属先で彼と再会した時は驚いたよ。残虐なテロリストとして収監されていたなんて。八年前の『ブラックサンデー』当時、俺は海外にいて達也君のことを知らなかったから。仕事の傍ら、俺は彼から事情を聞いた。そして、俺は彼を助けるために行動を開始した。今度は俺が助ける番だと」
「遠藤さんがリベルタスに入ったのも、達也さんを助けるためですね?」
「その通り。まずは達也くんの無実の証拠が必要。それをリベルタスから得ようと、彼らが出入りしていると噂のクラブなどをしらみ潰しに当たった、そして、川村裕太郎と接触することができた。酒を飲ませて酔わせたら、当時の計画や小林徹との関係をベラベラと喋ってくれたよ。まるで武勇伝のようにな」
「川村裕太郎の証言だけでも、達也さんの無実を証明できたはず。だけど、あなたはそうしなかった。もう一つ目的があったから。……それは小林徹さんに罰を与えること」
遠藤は旭から徹へと視線を移す。その視線には憤怒の感情が込められており、徹は自身に向けられた激情に思わず身震いした。
「八年前、こいつは川村達の凶行を止めることができた。爆弾のことは本当に知らなかったとしても、悪事を阻止するチャンスはいくらでもあったはず。だが、そうしなかった。それどころか、自分の将来のために川村達に協力。結果、どうなった?」
「達也さんを含んだ、大勢の人生が狂いました」
達也は無実の罪で投獄され、八年の年月を牢屋の中で過ごすことに。八年はあまりにも長すぎる。本来なら達也は進学や就職し、人生を謳歌しているはずだった。それだけじゃない。テロにより大勢の人が亡くなった。結果論とはいえ、徹の自己保身のために、たくさんの人間の人生が壊されたのだ。
「小林徹は、それらの罪に対する罰を受けなければならない」
「遠藤さんが罰しようとしたのは、徹さんだけではないですよね? リベルタスもあなたの断罪の対象だ」
旭は、一枚の紙を取り出した。
達也の独房に残された置き手紙、そのコピーだ。
「まず確認したいのですが、この置き手紙は遠藤さんが作成したものですか?」
「ああ」
「なら、良かった。俺の考えは当たっているみたいですね。この置き手紙には、こう書かれています。篠津川達也君が無実であることを、我々は知っている。証拠を持っている。私は八年前に彼の人生を台無しにした者達、真の悪を決して許さない、と。この文章、よく読むと妙な点があります。一つ目の文章では『我々』という複数形の人称を使っている」
旭は紙に書かれている、とある一文字を指差した。
「しかし、次の文章では『私』。最初は誤字かと思いましたが、これは意図したもの。あなたは、リベルタスと自身を分けていた。達也さんの人生を台無しにした者達。この中にリベルタスも入っている」
遠藤は「そうだ」と首肯。
「俺は小林徹、リベルタス両方を罰する方法を考えた。そして、リベルタスを使い、小林徹を追い詰めることにした。お前が八年前にリベルタスの企みを阻止していれば、こんなことにはならなかったと思い知らせるために」
「どうやって、リベルタスを今回の計画に巻き込んだのですか?」
「提案したのさ。今のタイミングで小林徹の過去を暴露すれば、奴は確実に破滅するぞ、と。面白そうだと簡単に話に乗ってくれたよ」
「そして、利用し終わったら、リベルタスを爆弾で吹き飛ばすつもりだった」
旭の言葉に驚き、遠藤は目を見開く。
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