パーティから追放されたのは神に選ばれし救世主だった。～チートスキルで元のパーティを見返し、全知全能の冒険者になってやる！～

第60話 神風蒼

その言葉を聞いた瞬間、ハルトは驚きで声が出なかった。
目の前にいるバルクは自分がプレイしていたゲームの中のキャラクターだったのだ。
その事実に動揺が隠せなかった。
山田太郎ことバルク。

ゲーム内の設定でバルクは
バルクはゾディアック・アクス・オンラインにおいて、ガーレット国王が使用人の女に産ませた子供。
出自から差別されガーレット王家を追放された。

「ほとんど一緒ですね」
「うむ。ゲームと同じ設定で生きている」

初めてギルドでバルクと出会った時、ハルトは何故か心がホッとした。
ハルトはバルクのことが懐かしく、どこかで会ったことがあるかもという印象を持っていた。
それはお互いが転生者であり、日本人であり、ゾディアック・アクス・オンラインという共通項があるから。
きっと、バルクこと山田太郎と、ハルトこと神風蒼は、日本のどこかで転生前にあっているかも。
そんな既視感をハルトはバルクに対して持っている。

◆

神風蒼は日本のどこにでもいる普通の高校生、16歳だった。
ただ、その出生はちょっと複雑な事情を持つ。
彼と両親に血の繋がりは無い。
彼は捨て子であり、孤児院に預けられていた。
その彼を引き取ってくれたのがい、今の養父母だ。

部活は帰宅部所属で趣味はゲームくらい。
彼は学校で目立たない生徒で、友達も少なかった。
休み時間になるといつも本を読んでいるような陰キャの少年だった。
ただ、一つだけ他人とは違うところがあった。
それは彼が異世界に憧れていたこと。
子供の頃からファンタジー小説が好きだった蒼は、ある日、夢を見た。
異世界に行くという夢。
その日から、彼の異世界への憧れは強くなった。
そして、中学生の時にその願いが叶った。

ゾディアック・アクス・オンライン

が発売された。

世に言う、没入前夜。

である。