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第133話 気絶した

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「ですよねー」
「だよなー」

ルミナスはフォークでパイを刺し、口に運ぶ。

「うん、おいしい」
「俺にもくれよ」
「嫌です」
「なんでだよ!」
「だって、これ私のだし!」
「ずるいぞ!」
「ずるくない!」

そして……

「ううっ!」

バルクは呻いた。

「えう!」

ルミナスも呻く。

「体が痺れて動かん!」
「くっ!」
「なんてことだ!」
「しまった!」
「ちくしょう!」
「やられた!」
「あぁ!」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」



「しかし、重たいねぇ、この男の方は……」

食堂の女将はバルクを抱えながらぼやく。

「こっちの女の方や柔らかくて良い匂いがするよ」

あばた面の少年は嬉しそうだ。
ルミナスをおんぶしている。


二人は親子だった。

それもガーレット国王により、バルクとルミナスを生け捕りするように仰せつかった者達。
この王都には、バルクとルミナスが訪れることを知る者達が多数いた。
それはやはり、エミリオの大聖堂にいたスパイが、バルクとルミナスが訪れることを通知したからだ。

ガーレット国王はこの一報に対して、二人を生け捕ることに決めた。

そして、人質にしようと考えていた。

救世主ハルトと引き換えに、二人を返してやる。

教皇に対して総取引を持ち掛けるつもりだった。

そしてこの食堂の親子。

二人はバルクとルミナスが来ることを事前に知らされていた。

それは、宿屋の女将からの情報だった。

そして、宿屋の女将もバルクとルミナスが泊まりに来ることを知っていた。

それは、ヘビシュタインの仲間からの情報だった。

つまり、この王都では、バルクとルミナスは情報網に引っ掛かっていたのだ。


ガーレット国王の手先となったある意味魔王の手先でもある親子は、地下道を通り、王城の地下深くにある牢獄へ向かった。

そこに、バルクとルミナスを閉じ込めるつもりだ。

「ここだね」

あばた面をした少年は扉を開けた。
そこには、一人の老人がいた。

「ご苦労様」
「はい」

あばた面の少年は返事をする。

牢屋を守護する魔導士の老人。
その老人に、バルクとルミナスを引き渡した。

彼らは知らなかった。

バルクとルミナスが気絶した振りをしているということを。
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