ヒロインなんかほっといて、主人公は異世界で静かに幼馴染とパンを焼いていたい

yonechanish

文字の大きさ
24 / 75

第24話 この異世界の金融

しおりを挟む
 アティナは四つん這いになって穴の中を覗き込んだ。

「うわぁ。クルス。これ何?」

 顔をクルスの方に振り向けて、問い掛ける。

「アイテムだよ。モンスター狩りをしてた時から、ここに集めてた。これを街で売って換金しようかと思ってる」

 クルスはアイテムに視線を向けると、空中にその名前と効果が現れた。

『ゴブリンの爪』
 効果:ポーションという回復薬の素材。

 クルスはアイテムを一つ一つ確認しながら、腰の袋に収納して行った。
 アイテムは袋に吸い込まれる様に入って行く。

「うわぁ! 小さい袋に大きなアイテムがどんどん入ってく!」

 アティナが目を丸くして驚いている。

「収納袋っていうんだ。空間魔法が施してあって、100個のアイテムまでなら収納出来るんだ」
「へぇ~。どうしてそんなの持ってるの?」
「便利だからね。『ワイルドボアの毛皮』と『緑の魔法石』を錬金したら出来た」
「錬金……?」
「錬金術師にお願いして、アイテムとアイテムを組み合わせて新しいアイテムを作るんだよ」

 これから行こうとしている港町マドニアには、アイテムを買い取ってくれる店が沢山ある。
 そして、錬金術師も常駐している。
 クルスはモンスター狩りを始めた時から、収納袋だけはすぐに手に入れておきたかった。
 だから、収納袋は必要なアイテムが揃った時点で、すぐに港町マドニアに行き錬金してもらった。

「これは一体どう使うんだろう?」

『オークの牙』
 効果:??????

 確かコーツィを助けた時に、倒したオークがドロップした物だ。
 効果が分からないアイテムは、錬金術師に鑑定してもらうか、文献で調べるしかない。

「このキラキラした物は?」

 アティナが赤い色の丸い石を、月明りに照らして見ている。

「魔石だよ」
「魔石?」
「魔道具の素材になったり、色んな事に使えるから高く売れるよ。それは赤いから炎の魔力を宿しているね」

 クルスにとってはゲームで周知の事実だが、アティナにとっては初めて知ることばかりだった。
 ある意味クルスはこの異世界の仕組みを知っているが、アティナにとってはこれらの事実は不思議なことばかりだった。
 クルスはアティナが手を叩いて納得したり、なるほどと言って頷くのが嬉しかった。

「アティナ、袋のアイテムをマドニアで売るよ」

 ドラゴネスファンタジアのモンスターは金をドロップしない。
 金を稼ぐにはアイテムを売ったり、クエストをこなしたり、それこそパン屋を経営するしかない。
 金を稼ぐ術が限られているのがゲームの特色であり、どう効率良く稼ぐか考えるのが面白いところだった。
 それは異世界でも同じだった。

「まだ沢山あるよ」

 アティナが穴の中のアイテムを指差す。

「もう袋に入らない。もったいないけど置いて行くよ」

 そう言うと、クルスは石を穴の上に戻した。

「さ、アティナ。夜中の間に行こう」
「うん……」

 クルスは宵闇に隠れて、夜が明ける前にマドニアに行こうと考えていた。

ザザザザ。

 目の前の茂みが揺れる。
 小さな影。
 それがクルスとアティナの様子を窺っている。

(モンスターか……)

 クルスは腰に差した剣に手を掛けた。

つづく
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

異世界修行の旅

甲斐源氏
ファンタジー
何事にも無気力な少年が雷に打たれて死んだ。目の前に現れた神様に奈落へと落とされてしまう。そこでの修行は厳しく、何度も死んでも修行は続いた。そして、修行の第1段階を終えた少年は第2段階として異世界に放り込まれる。そこで様々な人達と出会い、成長していくことになる。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...