ヒロインなんかほっといて、主人公は異世界で静かに幼馴染とパンを焼いていたい

yonechanish

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第41話 探索開始

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 クルスは案内役として、調査に参加することになった。

「おい、クルス」

 家を出る前にナツヤに呼び止められる。

「何だよ」
「気を付けて行って来るんだぞ」
「おう」

 親子の会話は短かった。
 気まずい様な、恥ずかしい様なで、会話が続かないというのが正確なところだ。

「母さんのこと、よろしく頼むよ」
「おお……」

 ユナはずっと意識が戻らないままだ。
 このままどうすることも出来ずに息絶えるのだろう。

ドタドタドタ!

 弾む様な足音が奥から聞こえる。

「おにいちゃーん、頑張ってね!」

 ナツヤの股の間から顔をのぞかせるデメル。
 妹のお陰で、場が和んだ。


 店の中はすでに焼き立てのパンの匂いでいっぱいだった。
 普段はクルスがパンを並べているが、今日はアティナがそれを代わりに行っている。

「今日だけ、店、任せたよ」
「大丈夫だよ。頑張ってね。クルス」
「うん」

 探索に協力するのは今日一日だけという約束だ。
 それが終われば日常生活に戻れる。

「じゃ、行って来る!」


 探索隊は二手に分かれて探索することになった。

 第一隊は、ガイアナ姫、クルス、そして兵士三名。
 第二隊は、そしてクラークソン兵隊長と、兵士四名。

 それぞれ村を中心に第一隊は右回り、第二隊は左回りに探索することになった。
 パルテノ村周辺は鬱蒼とした森に囲まれている。
 まるで森という海の中に、ポツンとパルテノ村という島が浮いている様なイメージだ。

 狼などの獣と遭遇することが多く、モンスターを見掛けることはほとんどなかった。

「見たところ、安全だな」

 ガイアナ姫が辺りを見渡し、そう言った。
 昨晩の柔らかな表情とは一転、純白の鎧をまとった彼女は厳しい表情だった。

「クルスが狩り過ぎたんじゃないのか?」

 ガイアナ姫は冗談交じりにそう言った。
 それもあるかもしれない……。
 クルスはそう思った。

「あ、ゴブリン」

 兵士の一人が叫ぶ。

 彼の指差す先には、緑色の腹が突き出た醜いモンスターがいた。

「ゴオウゴオオオオ!」

 向こうもこちらに気付いたらしい。

ブオー、ブオー!

 そのゴブリンは腰に下げた角笛を手に取り、吹き始めた。
 笛の音が森の中に反響する。

ガサ、ガササッ!

 一斉にゴブリン10体が現れた。
 槍、剣、斧などそれぞれ手に得物を持っている。

 クルスは鉄の剣を構えた。

「任せろ」

 ガイアナ姫が一歩前に出る。

「グエェゴオオオオ!」

 斧を振り上げて襲い掛かるゴブリン。
 ガイアナ姫はそれを上体だけ反らして避ける。
 斧は虚しく空を切り、地面に突き刺さる。
 突き刺さった斧を一生懸命地面から引き抜こうとするゴブリン。

 その曲がった背中を踏み台にして、大きくジャンプする別のゴブリン。
 降下しながら、ガイアナ姫に向かって銅の剣を振り下ろす。

 ゴブリンの体重が乗った一撃を、ガイアナ姫はレイピアで片手で受け止めた。
 一瞬、ゴブリンの動きが止まる。

 ガイアナ姫は、そのゴブリンの腹に蹴りを入れた。
 息を詰まらせながら吹っ飛んだゴブリン。
 そいつと、更に後ろから踏み台ジャンプをして来たゴブリンと激突する。

 総崩れになったゴブリンの群れに、ガイアナ姫は突入して行った。

つづく
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