ヒロインなんかほっといて、主人公は異世界で静かに幼馴染とパンを焼いていたい

yonechanish

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第48話 この異世界の地図

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「だっ、だが、クルスッ、お前の実力では……」

 ナツヤはクルスをじっと見た。

「親父、俺の実力はもう分かってるだろ?」
「だが……」
「僕はもう、あなたより強いんだ」

 ナツヤは複雑な顔になった。
 自分が息子に追い越された。

 それを認める時が来たことに、ナツヤは戸惑っていた。

 だが、いつかは認めなければと思っていたのだ。

 ナツヤは父としてずっとクルスを見て来た。

 日々、強くなって行く息子のことを。
 剣術の訓練でも感じていたし、ガイアナ姫との決闘を見た日にも感じていた。
 何より、王国の探索隊に参加しているのを見た時は、完全に負けたと思った。

 それは彼にとって嬉しくもあり、悔しくもあることだった。

 だから、彼の表情は、嬉しさと悔しさが混ざった様な顔だったのだ。

「……クルス。母さんを頼む……」
「ありがとう。親父。任せといてよ」

 ふと、クルスは視線を感じた。
 ガイアナ姫のそれだった。

「姫、ありがとうございます」
「うむ。だが、クルス」
「はい」
「水を差すようですまないが、港町マドニアからハダル島への定期船は出ていない。どうやって行くつもりだ?」

(それは……)

 クルスは一気に冷静になった。
 第一の現実に直面したからだ。
 コヒード大陸と陸続きでないハダル島へは、船か空を飛ぶ乗り物で行くしかない。
 ゲームだと序盤の、この今の状況でそんな乗り物は所有していない。

 クルスはゲーム内の地図を脳裏に描いた。
 頭の中でハダル島への経路を組み立てる。

「……ロドス大陸への定期船に乗り、一旦そこへ上陸します。そこからだと……ハダル島への細い橋が架かっているはずです」

 ゲームではロドス大陸とハダル島は、目と鼻の先だ。
 ロドス大陸のアルゴヌス王国は、ハダル島を領土として治めている。
 イリアス山の麓にあるラブカの街との接点として、橋が架かっていた。

「ん? クルス。お前、ずっとコヒード大陸から出たこと無いのに、やけに海の向こう側に詳しいな?」

 ガイアナ姫が不思議そうな顔でクルスを見る。

「あっ、ああ……僕は地理が好きで地図で海の向こうのことも勉強してたんです」

 ゲームの知識と言っても、通じないと思ったクルスは咄嗟に言い訳をした。

「クルス、お前が地図を手にしているところ、一度も見たことないぞ」

 今度はナツヤがクルスを不思議そうな顔で見た。

「パ……パン屋で休憩中で見てるんだよ」

 地図はクルスの頭の中にしかない。
 そして、その地図はあくまでゲームでのものだ。
 この異世界と全く同じか確かめたことは無い。
 それもそのはず。
 クルスはこの異世界ではコヒード大陸から一度も出たことが無い。
 だから、クルスはこの異世界の本当の姿を知らない。
 この異世界の地図と、ゲームの地図がどこまで同じかは分からないという不安はあるが……

(だが、これまでも一部はこの異世界とゲームが重なる部分はあった)

 クルスは今回もそれに期待した。

つづく
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