56 / 75
第56話 ゴブリンまみれ
しおりを挟む
(さて、どうしたもんかな……)
クルスは立ち止まり、考えた。
森の出口付近の脇の茂みのところ。
馬車を中心にで騒乱が起きている。
人間三人をゴブリンが取り囲み、襲い掛かっている。
「うわー! 誰かー!」
ゴブリンの振り下ろした棍棒が男の肩に当たる。
頭にターバンを巻いた太った男は、痛さに転げ回った。
「あなたー! 大丈夫ー!?」
ヒステリックに叫ぶ鷲鼻の痩せた女は、その男の妻だろう。
慌てふためき足をばたつかせるので、彼女の群青色のワンピースに泥が跳ね飛んだ。
「くっ……来るなら、来やがれ! ゴブリンごときがっ!」
怯まずに戦おうとしている男もいる。
革の鎧を身に付け、斧を持った戦士風の男がゴブリンを攻撃している。
ターバンの男と、痩せた女を守ろうとしているところを見ると、斧の男は、夫婦が雇った傭兵か何かだろう。
クルスはゲームでもこういった場面にたびたび遭遇した。
つまり、NPCがモンスターに襲われる場面だ。
例えば、旅人がモンスターに襲われていたり、冒険者ゴッコの子供がモンスターに襲われていたり。
この場合のNPCは、ターバンの男とその妻、そして傭兵。
彼らを助ける助けないはプレイヤーの自由だ。
助けると決めたとする。
プレイヤーとしては戦いに参加することになるので、それ相応のリスクはあるが、救出が成功すれば、彼らから何らかの報酬がもらえる。
クルスは迷っていた。
助けるのは簡単だが、今は時間をロスしたくない。
そして、それはクルスは「まぁ何とかなるだろう」という気持ちにもなっていた。
その理由として、目の前の現象が、彼から積極性を奪ったからだ。
目の前の現象。
↓
傭兵の奮闘でゴブリンが蹴散らされて行く。
クルスは、ここは傭兵に任せようと思い、視線を森の出口に戻した。
「うわぁー!」
傭兵の野太い叫び声が森に響く。
クルスは視線を脇に戻した。
暗い森の奥から次々、ゴブリンが現れる。
毒々しい緑色のモンスター。
クシャクシャの顔で、腹が突き出た醜い身体がクルスの目に飛び込む。
いつものゴブリンと違う。
クルスはそう思った。
あるゴブリンは口からよだれを垂らしながら手足をバタバタさせながら走って来るし、またあるゴブリンは股間を膨らませた状態で息を荒くしながら走って来る。
森の奥の方までそんなゴブリンが連なっていて、暗い森の中はそのギラついた目で覆われていた。
それはおぞましい光景だった。
傭兵はその光景を恐れ、襲われる前から叫んだのだ。
「こら! お前! 逃げるな! わしらを守らんか!」
ターバンの男が逃げようとする傭兵の背中を押す。
「いやだー! こんなの無理だー!」
だが、傭兵の横を通り過ぎ、ゴブリンは馬車に飛びついた。
「あれは……」
クルスの目は馬車の中に釘付けになった。
その中には、鎖でつながれた猫耳の少女がいた。
つづく
クルスは立ち止まり、考えた。
森の出口付近の脇の茂みのところ。
馬車を中心にで騒乱が起きている。
人間三人をゴブリンが取り囲み、襲い掛かっている。
「うわー! 誰かー!」
ゴブリンの振り下ろした棍棒が男の肩に当たる。
頭にターバンを巻いた太った男は、痛さに転げ回った。
「あなたー! 大丈夫ー!?」
ヒステリックに叫ぶ鷲鼻の痩せた女は、その男の妻だろう。
慌てふためき足をばたつかせるので、彼女の群青色のワンピースに泥が跳ね飛んだ。
「くっ……来るなら、来やがれ! ゴブリンごときがっ!」
怯まずに戦おうとしている男もいる。
革の鎧を身に付け、斧を持った戦士風の男がゴブリンを攻撃している。
ターバンの男と、痩せた女を守ろうとしているところを見ると、斧の男は、夫婦が雇った傭兵か何かだろう。
クルスはゲームでもこういった場面にたびたび遭遇した。
つまり、NPCがモンスターに襲われる場面だ。
例えば、旅人がモンスターに襲われていたり、冒険者ゴッコの子供がモンスターに襲われていたり。
この場合のNPCは、ターバンの男とその妻、そして傭兵。
彼らを助ける助けないはプレイヤーの自由だ。
助けると決めたとする。
プレイヤーとしては戦いに参加することになるので、それ相応のリスクはあるが、救出が成功すれば、彼らから何らかの報酬がもらえる。
クルスは迷っていた。
助けるのは簡単だが、今は時間をロスしたくない。
そして、それはクルスは「まぁ何とかなるだろう」という気持ちにもなっていた。
その理由として、目の前の現象が、彼から積極性を奪ったからだ。
目の前の現象。
↓
傭兵の奮闘でゴブリンが蹴散らされて行く。
クルスは、ここは傭兵に任せようと思い、視線を森の出口に戻した。
「うわぁー!」
傭兵の野太い叫び声が森に響く。
クルスは視線を脇に戻した。
暗い森の奥から次々、ゴブリンが現れる。
毒々しい緑色のモンスター。
クシャクシャの顔で、腹が突き出た醜い身体がクルスの目に飛び込む。
いつものゴブリンと違う。
クルスはそう思った。
あるゴブリンは口からよだれを垂らしながら手足をバタバタさせながら走って来るし、またあるゴブリンは股間を膨らませた状態で息を荒くしながら走って来る。
森の奥の方までそんなゴブリンが連なっていて、暗い森の中はそのギラついた目で覆われていた。
それはおぞましい光景だった。
傭兵はその光景を恐れ、襲われる前から叫んだのだ。
「こら! お前! 逃げるな! わしらを守らんか!」
ターバンの男が逃げようとする傭兵の背中を押す。
「いやだー! こんなの無理だー!」
だが、傭兵の横を通り過ぎ、ゴブリンは馬車に飛びついた。
「あれは……」
クルスの目は馬車の中に釘付けになった。
その中には、鎖でつながれた猫耳の少女がいた。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
異世界修行の旅
甲斐源氏
ファンタジー
何事にも無気力な少年が雷に打たれて死んだ。目の前に現れた神様に奈落へと落とされてしまう。そこでの修行は厳しく、何度も死んでも修行は続いた。そして、修行の第1段階を終えた少年は第2段階として異世界に放り込まれる。そこで様々な人達と出会い、成長していくことになる。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる