ヒロインなんかほっといて、主人公は異世界で静かに幼馴染とパンを焼いていたい

yonechanish

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第55話 モンスターAI

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 『ドラゴネスファンタジア』 というゲームは中世ヨーロッパ風の世界を舞台にしたRPGだ。
 だから、中世ヨーロッパ風という世界観は、この異世界でもある程度適応されていた。
 それは、クルスが14年間ここで生きて来て感じて来たことだった。

 もちろん、スマホなど便利なものは、ここにはない。

カーン、カーン、カーン……

 パルテノ村の教会の鐘の音がクルスの耳に届いた。

 時計などもちろんないので、微かな鐘の音だけが時間を示す役割を持っていた。

「今、12時か……。もう少し急がないと14時の定期便に間に合わない」

 彼は港町マドニアへの街道を目指し、森の中の細い道を歩いていた。
 アティナと逃避行した夜に歩いた道だった。
 あの日、焚火したのはこのあたりだったと、クルスは数日前のことながら、懐かく思い出していた。

 彼の予定ではもう街道に出ていなければならない。

 街道はラインハルホ城から港町マドニアに伸びている。
 パルテノ村からその街道に出るには、森の中の細い道を歩いて行く必要がある。
 昼間はそれほどモンスターも出現せず、安全な道だが、今日だけは違っていた。
 まるで、魔王の気まぐれなのか、クルスはモンスターとかなりの確率で遭遇した。

 そのせいで、彼は予定より遅れていた。

 モンスターは魔王の魔力で、生成《ポップ》される。

 ゲーム内では、魔王が復活しその力が日増しに強くなっていく。
 そのため、時間が経つにつれて、モンスターが生成《ポップ》される量も増えていく。

 結論としては、魔王のきまぐれではなく、時間がそうさせていると言わざる負えない。

 パルテノ村に留まり続けたクルスにとって、当然の結果だった。

 この街道に出るまでに、かなりの数のE、Fクラスのモンスターを倒して来た。
 ゴブリンやスライムなど、雑魚モンスターばかりだったが、一度に出くわす数が多い。
 集団になればなるほど、あちら側もリーダー格が自然に生まれ、集合体としての意志の様なものを持ち始める。
 つまり、連係プレイでクルスを苦しめる様になるのだった。

 数匹が囮になりクルスの攻撃を受け止めている間に、後ろに回り込んだ数匹が攻撃して来る。
 ダメージとしては大したことは無いが、前後の数匹を相手にしている間に、頭に衝撃を感じたかと思ったら、木の枝にとまってる数匹が石を投げつけて来てたりする。

 こんな戦い方、まだ原始的だが、多くの犠牲の上にモンスターのまだまだ戦い方は洗練されてくる可能性がある。

 『ドラゴネスファンタジア』 はオフラインRPGでありながら、何度でも遊べるのは、モンスターが独自のAIで戦い方を習得し、強くなるという点があるからだ。

 同じスライムでも、プレイヤーと何度も戦闘を繰り返すにつれて、倒しにくくなっていく。
 圧倒的なレベル差があれば別だが、レベル3つぐらいの差だったら、AIを磨き上げたスライムでも負けることがあるくらいだ。

 この異世界でもゲームと同じならそう言った厄介なことが起こるかもしれないし、事実、戦って来たモンスターを見るにつけ、そうなのだろうとクルスは思った。

 街道まで出ればモンスターの出現率はぐっと下がる。

 木々の間から火の光が差し始めた。

「よし、見えて来たぞ」

 森の出口がそこにある。 

「ん?」

「助けてくれー!」 

「え?」

「助けてー!」

 クルスは脇に目をやる。

 クルスの目には、ゴブリンに襲われる男女数名の姿が映った。

つづく
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