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第61話 肉奴隷
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「そいつはな、トラキオの大富豪に売られる予定なんだ」
エスティアをじっと見ている僕に、タカがそう言った。
「起きてたのか」
「ああ、こう揺れるんじゃ眠れないよ」
「ごめん。僕が急がせてるせいで……」
「いや、お前のせいじゃない。獣人なんか連れて森の中を移動してた俺達が悪いんだ」
タカは笑った。
エスティアは俯いた。
「そいつはな、ラインハルホの城下町にあるスラムにいた奴隷商人から買い取ったんだ」
タカはエスティアを指差し、そう言った。
そして、こう続ける。
「エスティアは港町マドニアからトラキオへ行く船に乗せるんだ。結構高値で売れることが決まってる。世の中には物好きがいるもんでな」
トラキオ大陸には、七英雄の末裔の一人『純潔のアルミス』がいる。
トラキオ王国の姫で、ゲームと同じならクルスと同じ年のはずだ。
彼女はイチイバルという一撃必殺の弓を使い、中級の攻撃魔法と治癒魔法を使う。
特に弓攻撃は遠隔から行えるうえに、急所に当たれば一発で仕留めることが出来るので、ゲームでも重宝した。
この異世界では出会いたくないけど。
と、クルスは思った。
「確かにトラキオには金持ちがいっぱいるね」
「ん? お前、行ったことあるのか?」
「いや、まぁ、地理で学んだんだ」
タカにゲームで知ったことだと言っても、分かってもらえないだろう。
クルスは嘘を付いた。
トラキオは鉱山が多い。
天然資源が豊富に獲れる土地柄で、それで財を成した者が多い。
成金も多く、金の使い方に貧が無い者も多かった。
「エスティアは、過酷な労働に従事させられるの?」
人間が避ける様な危険な作業を奴隷が代わりにやらされることがある。
鉱山での作業は危険が一杯なので、そこで働かされるのだろうか。
「ははは。過酷な労働くらいなら、まだマシだろう。お前、こいつの顔をさっきからじっと見てただろ。結構、可愛いもんな。きっと、趣味が悪い金持ちの玩具……肉奴隷として……」
「何だって……そんな……」
エスティアは俯いたままだ。
自身が売られ、その先でどんな目に合うか知っているのだろうか。
「まぁ、飽きたら、殺されるだろう。獣人の目や爪は死んだ後、美しい宝石の様になるからな」
目の前のエスティアのことなど無視して、タカは色々話してくれた。
それだけ、この異世界の人間にとって獣人の存在は、軽いものだった。
クルスは目の前の猫耳少女を、どうにかしたかったが、どうすることも出来なかった。
どうすることも出来ない自分に腹が立った。
「にゃっ!」
猫の様な泣き声が荷台の中に響いた。
その瞬間、馬車が揺れた。
エスティアが床板を蹴り、馬車の外に飛び出した。
「あっ、待てっ!」
タカも馬車から飛び出した。
エスティアを馬車に繋いでいた鎖は壊れていた。
ゴブリンの襲撃で壊れたのだろうか。
兎に角、エスティアは逃げ出した。
「わ!」
馬車が急停車し、クルスは前のめりになる。
運転席から顔を出すゲロルグは、クルスにこう叫んだ。
「おい! 旅の人、あの猫を捕まえて来てくれ!」
つづく
エスティアをじっと見ている僕に、タカがそう言った。
「起きてたのか」
「ああ、こう揺れるんじゃ眠れないよ」
「ごめん。僕が急がせてるせいで……」
「いや、お前のせいじゃない。獣人なんか連れて森の中を移動してた俺達が悪いんだ」
タカは笑った。
エスティアは俯いた。
「そいつはな、ラインハルホの城下町にあるスラムにいた奴隷商人から買い取ったんだ」
タカはエスティアを指差し、そう言った。
そして、こう続ける。
「エスティアは港町マドニアからトラキオへ行く船に乗せるんだ。結構高値で売れることが決まってる。世の中には物好きがいるもんでな」
トラキオ大陸には、七英雄の末裔の一人『純潔のアルミス』がいる。
トラキオ王国の姫で、ゲームと同じならクルスと同じ年のはずだ。
彼女はイチイバルという一撃必殺の弓を使い、中級の攻撃魔法と治癒魔法を使う。
特に弓攻撃は遠隔から行えるうえに、急所に当たれば一発で仕留めることが出来るので、ゲームでも重宝した。
この異世界では出会いたくないけど。
と、クルスは思った。
「確かにトラキオには金持ちがいっぱいるね」
「ん? お前、行ったことあるのか?」
「いや、まぁ、地理で学んだんだ」
タカにゲームで知ったことだと言っても、分かってもらえないだろう。
クルスは嘘を付いた。
トラキオは鉱山が多い。
天然資源が豊富に獲れる土地柄で、それで財を成した者が多い。
成金も多く、金の使い方に貧が無い者も多かった。
「エスティアは、過酷な労働に従事させられるの?」
人間が避ける様な危険な作業を奴隷が代わりにやらされることがある。
鉱山での作業は危険が一杯なので、そこで働かされるのだろうか。
「ははは。過酷な労働くらいなら、まだマシだろう。お前、こいつの顔をさっきからじっと見てただろ。結構、可愛いもんな。きっと、趣味が悪い金持ちの玩具……肉奴隷として……」
「何だって……そんな……」
エスティアは俯いたままだ。
自身が売られ、その先でどんな目に合うか知っているのだろうか。
「まぁ、飽きたら、殺されるだろう。獣人の目や爪は死んだ後、美しい宝石の様になるからな」
目の前のエスティアのことなど無視して、タカは色々話してくれた。
それだけ、この異世界の人間にとって獣人の存在は、軽いものだった。
クルスは目の前の猫耳少女を、どうにかしたかったが、どうすることも出来なかった。
どうすることも出来ない自分に腹が立った。
「にゃっ!」
猫の様な泣き声が荷台の中に響いた。
その瞬間、馬車が揺れた。
エスティアが床板を蹴り、馬車の外に飛び出した。
「あっ、待てっ!」
タカも馬車から飛び出した。
エスティアを馬車に繋いでいた鎖は壊れていた。
ゴブリンの襲撃で壊れたのだろうか。
兎に角、エスティアは逃げ出した。
「わ!」
馬車が急停車し、クルスは前のめりになる。
運転席から顔を出すゲロルグは、クルスにこう叫んだ。
「おい! 旅の人、あの猫を捕まえて来てくれ!」
つづく
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