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第71話 蛇賭
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「湯をわかせ。ナモ」
黒い布を顔に巻いた男は、女店主に指示した。
「はいはい」
ナモと呼ばれた女店主は、部屋の隅にあるかまどに火を着けた。
大量の水が入った鍋をその上に乗せる。
「獣人を綺麗に拭いてやらなきゃな」
エスティアを綺麗に磨くために湯を沸かしているらしい。
部屋中に湯気が立ち込め、蒸し暑くなってきた。
男は熱さを紛らわすため、腕をまくり始めた。
「!」
男の二の腕には、蛇の刺青があった。
とぐろを巻き、鎌首をもたげた緑色の蛇。
『蛇賭《じゃと》』のメンバーである証だ。
蛇賭《じゃと》とは、『ドラゴネスファンタジア』に登場する犯罪集団の一つである。
主に窃盗、強盗、詐欺、誘拐、暗殺など裏の仕事を生業としていた。
一部のメンバーは教会や貴族そして魔王との繋がりもあった。
メンバーはその証である蛇の入れ墨を身体のどこかに彫らなければならない。
プレイヤーにとっては敵として襲って来る場合や、特定の条件を満たすと一時的な仲間になることがある。
彼らは街や村など様々な場所に潜伏し、そのアジトを見つけることは容易ではない。
全てのアジトを見つけ、殲滅させるには大量のプレイ時間を要した。
蛇賭《じゃと》を全滅させることは、『ドラゴネスファンタジア』のやり込み要素の一つだった。
蛇賭《じゃと》絡みのクエストは非常に多く、やりがいがあった。
だが、最速クリアを目指していた山田久留洲は、蛇賭《じゃと》との関わりを避けて来た。
無理して接触しなくてもメインストーリーの攻略は可能だからだ。
(異世界の港町マドニアにもゲームと同じ様に、蛇賭《じゃと》のアジトがあったとは……)
この石造りの部屋は、港町マドニアのどこに位置しているのだろうか。
部屋の隅に昇り階段がある。
ここは地下なのだろうか。
ゲームで蛇賭《じゃと》に執着していれば、ここがどこかも分かったかもしれない。
ただ、分かったところで、この身体ではどうすることも出来ないが……
「さぁて、どの武器で殺すかな」
男は踵を返し、壁の方に向かって行った。
ぶら下げられている武器を手に取り、一つ一つ吟味している。
「よしっ!」
振り返った男の右手には、毒々しい紫色に染まった太目の針が握られていた。
「この毒針で行くか。運良く急所にブスリと一発突けば、痛みは一瞬だけだ。楽に死ぬことが出来る」
ゲームにも登場する毒針。
サソリカブトの強力な毒がしっかりと塗られたレアな武器だ。
10回に1回の割合で、相手の急所を突き一瞬で殺すことが出来る。
男は動けないクルスを10回以内で殺す気だ。
「うっ……、ううっ……」
クルスは金縛りをされたかの様に動かない身体がもどかしかった。
痺れ薬が効いた者は、レベルに関係なく一定時間動けない。
「みゃ……みゃああ……」
エスティアが意識を取り戻したらしい。
だが、身体の自由がきかずクルスと同じ様に呻くだけだった。
部屋の異常な雰囲気に気付いたのか、不安そうな視線をクルスに向けて来る。
(大丈夫、大丈夫だ……)
クルスは目で合図を送る。
「ふふふ。無駄だよ。お前は殺されて美しい宝石に生まれ変わるのだ」
男はエスティアに向かって慰める様にそう言った。
「さて、と」
男が寝ているクルスを見下ろす。
「言い残すことは?」
「うっ……ううっ……」
「……って、お前、喋れねえもんなあ! あはははははっ! 死ねぇっ!」
つづく
黒い布を顔に巻いた男は、女店主に指示した。
「はいはい」
ナモと呼ばれた女店主は、部屋の隅にあるかまどに火を着けた。
大量の水が入った鍋をその上に乗せる。
「獣人を綺麗に拭いてやらなきゃな」
エスティアを綺麗に磨くために湯を沸かしているらしい。
部屋中に湯気が立ち込め、蒸し暑くなってきた。
男は熱さを紛らわすため、腕をまくり始めた。
「!」
男の二の腕には、蛇の刺青があった。
とぐろを巻き、鎌首をもたげた緑色の蛇。
『蛇賭《じゃと》』のメンバーである証だ。
蛇賭《じゃと》とは、『ドラゴネスファンタジア』に登場する犯罪集団の一つである。
主に窃盗、強盗、詐欺、誘拐、暗殺など裏の仕事を生業としていた。
一部のメンバーは教会や貴族そして魔王との繋がりもあった。
メンバーはその証である蛇の入れ墨を身体のどこかに彫らなければならない。
プレイヤーにとっては敵として襲って来る場合や、特定の条件を満たすと一時的な仲間になることがある。
彼らは街や村など様々な場所に潜伏し、そのアジトを見つけることは容易ではない。
全てのアジトを見つけ、殲滅させるには大量のプレイ時間を要した。
蛇賭《じゃと》を全滅させることは、『ドラゴネスファンタジア』のやり込み要素の一つだった。
蛇賭《じゃと》絡みのクエストは非常に多く、やりがいがあった。
だが、最速クリアを目指していた山田久留洲は、蛇賭《じゃと》との関わりを避けて来た。
無理して接触しなくてもメインストーリーの攻略は可能だからだ。
(異世界の港町マドニアにもゲームと同じ様に、蛇賭《じゃと》のアジトがあったとは……)
この石造りの部屋は、港町マドニアのどこに位置しているのだろうか。
部屋の隅に昇り階段がある。
ここは地下なのだろうか。
ゲームで蛇賭《じゃと》に執着していれば、ここがどこかも分かったかもしれない。
ただ、分かったところで、この身体ではどうすることも出来ないが……
「さぁて、どの武器で殺すかな」
男は踵を返し、壁の方に向かって行った。
ぶら下げられている武器を手に取り、一つ一つ吟味している。
「よしっ!」
振り返った男の右手には、毒々しい紫色に染まった太目の針が握られていた。
「この毒針で行くか。運良く急所にブスリと一発突けば、痛みは一瞬だけだ。楽に死ぬことが出来る」
ゲームにも登場する毒針。
サソリカブトの強力な毒がしっかりと塗られたレアな武器だ。
10回に1回の割合で、相手の急所を突き一瞬で殺すことが出来る。
男は動けないクルスを10回以内で殺す気だ。
「うっ……、ううっ……」
クルスは金縛りをされたかの様に動かない身体がもどかしかった。
痺れ薬が効いた者は、レベルに関係なく一定時間動けない。
「みゃ……みゃああ……」
エスティアが意識を取り戻したらしい。
だが、身体の自由がきかずクルスと同じ様に呻くだけだった。
部屋の異常な雰囲気に気付いたのか、不安そうな視線をクルスに向けて来る。
(大丈夫、大丈夫だ……)
クルスは目で合図を送る。
「ふふふ。無駄だよ。お前は殺されて美しい宝石に生まれ変わるのだ」
男はエスティアに向かって慰める様にそう言った。
「さて、と」
男が寝ているクルスを見下ろす。
「言い残すことは?」
「うっ……ううっ……」
「……って、お前、喋れねえもんなあ! あはははははっ! 死ねぇっ!」
つづく
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