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第75話 嘘
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地上に出たクルスは、縄で縛られた蛇賭《じゃと》の一団を見た。
ナモや黒い布マスクの男など、数名のメンバーが手足を数珠つなぎに繋がれている。
一人一人がバラバラに逃げられない様にしている訳だ。
見張っているのは鎖帷子に鉄兜、手に槍を持った王国兵団だった。
「ガイアナ姫、お怪我はありませんか?」
兵士の一人が地下から上がって来たガイアナ姫に駆け寄る。
「うむ。それよりも、ちょっとこの者と話したい」
ガイアナ姫は背後に立つクルスとエスティアを指し示した。
兵士は了解とばかりに頭を下げ、踵を返した。
兵士達は粛々と自らの職務を遂行していった。
蛇賭《じゃと》のメンバーを護送用の巨大な馬車の荷台に誘導し、内側から戸を閉めた。
運転席に座っている兵士が手綱から動力となる馬達に、指示を伝える。
馬達はいななくと、蹄を鳴らし馬車を引っ張て行く。
馬車は港町マドニアの門に向かって、ガタゴトと音を立て移動して行った。
数名の兵士はその場に残り、エルビス達王国騎士団と入れ替わりで、蛇賭《じゃと》の情報を集めるため、抜け殻になったアジトの調査を始めた。
「この辺りにしようか」
ガイアナ姫が先に立って案内したのは、先程までクルスが食事をしていた食卓だった。
この食堂の地下3階が蛇賭《じゃと》のアジトだった。
クルスがそのことに気付いたのは、地上に上がってすぐのことだった。
厨房の床板を押し上げて地上に出た時、既視感のある風景が飛び込んで来た。
(ああ、僕はここで痺れ薬を盛られた食事を食わされ、拉致されたのか)
と、合点がいった。
目の前に着席したクルスとエスティアに向かって、ガイアナ姫が口を開いた。
「さて、どちらから話そうか。お互い話したいこと、訊きたいこと沢山ありそうだし……」
「僕らもそうです。ガイアナ姫からどうぞ」
「うむ……」
ガイアナ姫は小さな顎を上下させ、クルスの目を見つめた。
小さな口を開き、ことの成り行きを話し始めた。
「さっきも言ったようにロドス大陸へ渡るために、私は港町マドニアに来た」
「よく国王を説得出来ましたね」
何故ロドス大陸へ行きたいのか、そのことについても疑問はあったが、まず訊きたかったのはガイアナ姫の外出がどの様にして許されたのかということだった。
ゲームではガイアナ姫の父、ラインハルホ・クロヌス国王は彼女のことを溺愛している。
それだけに、娘想いが行き過ぎ、彼女の幸せを無視したお節介な行動が多かった。
ガイアナ姫の結婚相手まで勝手に決めてしまっていた。
そんなクロヌス国王が、愛娘の公務でもない単独外出を認めたのは、どういう理由があったからなのか。
「パルテノ村から王国への帰途、馬車の中で考えたのだ。どうしたら外出を父上に許してもらえるか……」
ロドス大陸のアルゴヌス王国に行きたい。
アルゴヌス王国の第一王子ギガテスは彼女の許嫁だった。
ギガテスの生誕祭を祝いに行きたい。
ガイアナ姫はクロヌス国王にそう訴えた。
「父上が勝手に決めた相手だ。私は好きでもないから会いたくはないが、城を出るには許嫁をダシに使うのが一番だと思ったのだ」
明日はギガテスの誕生日らしい。
ラインハルホ王国としてもアルゴヌス王国へ使者を送る予定だった。
その使者をガイアナ姫自らが名乗り出た。
クロヌス国王は手を叩いて喜んだ。
ギガテスをどこか避けていた様に見える娘が、すすんで自ら将来の夫となる者を祝いたいと言ったことに。
「……という訳で、公務としての外出が認められたのだ」
ガイアナ姫は悪戯っ子みたいな笑顔で、そう言った。
つづく
ナモや黒い布マスクの男など、数名のメンバーが手足を数珠つなぎに繋がれている。
一人一人がバラバラに逃げられない様にしている訳だ。
見張っているのは鎖帷子に鉄兜、手に槍を持った王国兵団だった。
「ガイアナ姫、お怪我はありませんか?」
兵士の一人が地下から上がって来たガイアナ姫に駆け寄る。
「うむ。それよりも、ちょっとこの者と話したい」
ガイアナ姫は背後に立つクルスとエスティアを指し示した。
兵士は了解とばかりに頭を下げ、踵を返した。
兵士達は粛々と自らの職務を遂行していった。
蛇賭《じゃと》のメンバーを護送用の巨大な馬車の荷台に誘導し、内側から戸を閉めた。
運転席に座っている兵士が手綱から動力となる馬達に、指示を伝える。
馬達はいななくと、蹄を鳴らし馬車を引っ張て行く。
馬車は港町マドニアの門に向かって、ガタゴトと音を立て移動して行った。
数名の兵士はその場に残り、エルビス達王国騎士団と入れ替わりで、蛇賭《じゃと》の情報を集めるため、抜け殻になったアジトの調査を始めた。
「この辺りにしようか」
ガイアナ姫が先に立って案内したのは、先程までクルスが食事をしていた食卓だった。
この食堂の地下3階が蛇賭《じゃと》のアジトだった。
クルスがそのことに気付いたのは、地上に上がってすぐのことだった。
厨房の床板を押し上げて地上に出た時、既視感のある風景が飛び込んで来た。
(ああ、僕はここで痺れ薬を盛られた食事を食わされ、拉致されたのか)
と、合点がいった。
目の前に着席したクルスとエスティアに向かって、ガイアナ姫が口を開いた。
「さて、どちらから話そうか。お互い話したいこと、訊きたいこと沢山ありそうだし……」
「僕らもそうです。ガイアナ姫からどうぞ」
「うむ……」
ガイアナ姫は小さな顎を上下させ、クルスの目を見つめた。
小さな口を開き、ことの成り行きを話し始めた。
「さっきも言ったようにロドス大陸へ渡るために、私は港町マドニアに来た」
「よく国王を説得出来ましたね」
何故ロドス大陸へ行きたいのか、そのことについても疑問はあったが、まず訊きたかったのはガイアナ姫の外出がどの様にして許されたのかということだった。
ゲームではガイアナ姫の父、ラインハルホ・クロヌス国王は彼女のことを溺愛している。
それだけに、娘想いが行き過ぎ、彼女の幸せを無視したお節介な行動が多かった。
ガイアナ姫の結婚相手まで勝手に決めてしまっていた。
そんなクロヌス国王が、愛娘の公務でもない単独外出を認めたのは、どういう理由があったからなのか。
「パルテノ村から王国への帰途、馬車の中で考えたのだ。どうしたら外出を父上に許してもらえるか……」
ロドス大陸のアルゴヌス王国に行きたい。
アルゴヌス王国の第一王子ギガテスは彼女の許嫁だった。
ギガテスの生誕祭を祝いに行きたい。
ガイアナ姫はクロヌス国王にそう訴えた。
「父上が勝手に決めた相手だ。私は好きでもないから会いたくはないが、城を出るには許嫁をダシに使うのが一番だと思ったのだ」
明日はギガテスの誕生日らしい。
ラインハルホ王国としてもアルゴヌス王国へ使者を送る予定だった。
その使者をガイアナ姫自らが名乗り出た。
クロヌス国王は手を叩いて喜んだ。
ギガテスをどこか避けていた様に見える娘が、すすんで自ら将来の夫となる者を祝いたいと言ったことに。
「……という訳で、公務としての外出が認められたのだ」
ガイアナ姫は悪戯っ子みたいな笑顔で、そう言った。
つづく
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44話において、ガイアナ姫は貴族としての公務がありパルテノ村にとどまれなかった。
とあるが、ガイアナ姫は王女であって王族なので貴族としての公務ではなく王族としての公務が正しいです。
王族と貴族は同じではありません、明確な差があり持ち得る権力もまた違います。
もっと勉強しましょう。
コレを正気で書いてるのがドン引き。
ナツヤは前王を暗殺するリーダー格でありながらも、妻であるユナとの間にクルスという主人公である子をもうけているけど、お前なにしてんリーダーとしての自覚が足りないんじゃない?
前王の暗殺などという大それた事を計画したわりには妻との間にこをもうけるとか…、今もなお圧政に苦しむ民がいる事を理解しての行動なのか問いたい。
挙げ句の果てには仲間に説得された程度で自分は暗殺に参加しないとか、自分で計画をたてたくせに無責任じゃない?
仲間の説得も見当違いで、俺達が死んだら意志を継ぐものがいなくなる誰か一人は残らないとなって間違いなくリーダーであるナツヤが残る者ではない事だけは間違いないよ。
しかも意志を継ぐものってこの場合クルスの事を指してるよね?自分達が暗殺に失敗したらまだ産まれてもいないクルスに人殺しをさせようと、尻拭いをさせようとしているナツヤの仲間達にドン引き。
それに気付かずにナツヤの胸に飛び込みたいと考えているクルスにもドン引き。
コイツ洗脳されてて何も考えてないじゃん。
仲間達が全員捕まって拷問のすえ死んで、その後にケツ捲ってパルテノ村に逃げてクルスが産まれてよくやった?このよくやったって前王が病死しなければ暗殺者として育てる気まんまんじゃないですか。
結局は前王が病死して、現国王てあるクロヌスが立つ訳だけど前王が病死するまで何もしてこなかった現国王に何を見いだして上から目線で大丈夫だと確信したのか、ナツヤの思考が理解出来ない。
しかも現国王の助けに自分が立つのではなくクルスにやらせようとさせるあたりにナツヤの無責任さとクズさが浮き立つ。