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第9話 新しいギルドでも、治癒魔法使いのくせして治癒魔法が出来ないので、仲間をイラつかせる
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イタヲ村は人口100人ほどの小さな村だ。
農産物を街に卸すことで、収入を得ている。
その収入源がゴブリンによって脅かされている。
「よう来なさった」
白髭の長老がやって来て、僕らを労う。
ネスコが問い掛ける。
「状況を聞かせてください」
「はい。夜になるとそこの森からゴブリンがゾロゾロ出て来て、わしらの畑を荒らすのです」
長老が指差す先には、鬱蒼とした森があった。
「報酬は前渡しだったよな」
狼男で戦士職、トウマがネスコと長老の間に割って入る。
「トウマ」
ネスコがそれを黙らせる。
「もちろん。用意しております」
長老が袋に入った金を差し出す。
金額にして10万エン。
恐らく、村人の少ない稼ぎをかき集めたのだろう。
クエストには種類がある。
国から出されるもの。
街から出されるもの。
村から出されるもの。
個人から出されるもの。
報酬は国と依頼者の折半で支払う。
ただし、全てのクエストは国、街、村、個人からのものであれ、最終的に国が集約し国が一元管理する。
今回のゴブリン討伐クエストも、例外では無い。
「こりゃ、ありがてぇ」
トウマが長い舌で唇を拭う。
ポンの金が出来て嬉しいのだろうか。
ポンは禁断の薬で、24時間、精神を昂らせる効果を持つ。
その代わり、禁断症状は想像を絶する。
ネスコが皆に言った。
「夜になるまで待とう」
◇
ゴソゴソ……
土を掘り起こす音がする。
僕は戸板に耳をつけ、息を殺す。
ゴブリンが畑の大根を抜いている姿が、脳裏に浮かぶ。
僕らは畑の横の農具倉庫に身を潜めていた。
「いくぞ」
実際、言葉にはしないがネスコの首肯で、皆、動き出した。
スッと音もなく戸を引く。
蒼い闇の中に、うごめく影。
数体のゴブリンが、こちらに気付いた。
「とりゃぁああ!」
柳葉刀を手にトウマがゴブリンに切り掛かる。
一匹、二匹、月に照らされる刀身の餌食となる。
赤黒い体液をまき散らしながら、倒されるゴブリン。
トウマの全身は毛におおわれていた。
月光を浴び、狼になっていた。
その後を追うジギ。
盗賊の彼は、その素早さからいつの間にかトウマを追い抜き、森に逃げ込むゴブリンを追撃していた。
遅れてネスコと僕が続く。
更にその後方にフィナ。
パーティとしての連携なんてあったもんじゃない。
「あっ!」
フィナが石に躓いてこけた。
「やだもう」
擦りむいた膝に、つばをつけて消毒している。
おっちょこちょい。
そして可愛い。
だけど、彼女は戦力になるのだろうか……。
「うわっ!」
先頭を行くジギの叫び声が森の中に響いた。
目の前にトウマの背中がある。
彼の視線の先には、大きな穴が開いていた。
穴の底にジギが倒れている。
彼は毒蛇に噛まれて毒に侵されていた。
「なかなか頭の切れるゴブリンだな」
罠が仕掛けてあるとは。
「おい、治癒してやれ」
「はい」
トウマに指示され、僕は詠唱した。
「小回復《スモールリカバリ》」
スモールなだけに少ししか回復しない。
「もたもたしてるんじゃねえ。全回復させるやつを唱えろよ」
トウマに急かされる。
僕は困った。
そうこうしている間にジギが、死にそうだ。
僕は全回復させる魔法は使えない。
つづく
農産物を街に卸すことで、収入を得ている。
その収入源がゴブリンによって脅かされている。
「よう来なさった」
白髭の長老がやって来て、僕らを労う。
ネスコが問い掛ける。
「状況を聞かせてください」
「はい。夜になるとそこの森からゴブリンがゾロゾロ出て来て、わしらの畑を荒らすのです」
長老が指差す先には、鬱蒼とした森があった。
「報酬は前渡しだったよな」
狼男で戦士職、トウマがネスコと長老の間に割って入る。
「トウマ」
ネスコがそれを黙らせる。
「もちろん。用意しております」
長老が袋に入った金を差し出す。
金額にして10万エン。
恐らく、村人の少ない稼ぎをかき集めたのだろう。
クエストには種類がある。
国から出されるもの。
街から出されるもの。
村から出されるもの。
個人から出されるもの。
報酬は国と依頼者の折半で支払う。
ただし、全てのクエストは国、街、村、個人からのものであれ、最終的に国が集約し国が一元管理する。
今回のゴブリン討伐クエストも、例外では無い。
「こりゃ、ありがてぇ」
トウマが長い舌で唇を拭う。
ポンの金が出来て嬉しいのだろうか。
ポンは禁断の薬で、24時間、精神を昂らせる効果を持つ。
その代わり、禁断症状は想像を絶する。
ネスコが皆に言った。
「夜になるまで待とう」
◇
ゴソゴソ……
土を掘り起こす音がする。
僕は戸板に耳をつけ、息を殺す。
ゴブリンが畑の大根を抜いている姿が、脳裏に浮かぶ。
僕らは畑の横の農具倉庫に身を潜めていた。
「いくぞ」
実際、言葉にはしないがネスコの首肯で、皆、動き出した。
スッと音もなく戸を引く。
蒼い闇の中に、うごめく影。
数体のゴブリンが、こちらに気付いた。
「とりゃぁああ!」
柳葉刀を手にトウマがゴブリンに切り掛かる。
一匹、二匹、月に照らされる刀身の餌食となる。
赤黒い体液をまき散らしながら、倒されるゴブリン。
トウマの全身は毛におおわれていた。
月光を浴び、狼になっていた。
その後を追うジギ。
盗賊の彼は、その素早さからいつの間にかトウマを追い抜き、森に逃げ込むゴブリンを追撃していた。
遅れてネスコと僕が続く。
更にその後方にフィナ。
パーティとしての連携なんてあったもんじゃない。
「あっ!」
フィナが石に躓いてこけた。
「やだもう」
擦りむいた膝に、つばをつけて消毒している。
おっちょこちょい。
そして可愛い。
だけど、彼女は戦力になるのだろうか……。
「うわっ!」
先頭を行くジギの叫び声が森の中に響いた。
目の前にトウマの背中がある。
彼の視線の先には、大きな穴が開いていた。
穴の底にジギが倒れている。
彼は毒蛇に噛まれて毒に侵されていた。
「なかなか頭の切れるゴブリンだな」
罠が仕掛けてあるとは。
「おい、治癒してやれ」
「はい」
トウマに指示され、僕は詠唱した。
「小回復《スモールリカバリ》」
スモールなだけに少ししか回復しない。
「もたもたしてるんじゃねえ。全回復させるやつを唱えろよ」
トウマに急かされる。
僕は困った。
そうこうしている間にジギが、死にそうだ。
僕は全回復させる魔法は使えない。
つづく
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