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第92話 優等生が必死に期待に応えていく、苦しい人生
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「ガイア、お前は将来、救世主になり魔王を倒すんだよ」
大祖先様こと、お爺様が私の頭を撫でながらそう言った。
父や母も私にそう言った。
レベルが上がる度に、他者よりもステータス上昇幅が高かった私は、周りから期待されていた。
同じレベルの同じ職業の者と比較しても、私は相当強い。
まれにそういう人間が生まれるらしい。
皆は私の才能のことを、神様がくれたギフトだともてはやしてくれた。
私は救世主として、幼い頃から周りの大人達から期待されていた。
その頃、地球というギルドは貧しく弱小だった。
メンバーはギルドマスターの大祖先様と両親、兄、姉、そして私。
ギルドそのものが家族であり、私の生活そのものだった。
家族とはいえ年長者であるメンバーは、私を鍛えることに妥協が無かった。
それを大人達は、愛、と呼んだ。
私もそれに必死で応えようとした。
くじけそうになる度に、大祖先様は私にこう言った。
「この世界はかりそめの世界なのじゃ。わしが住んでいた地球は素晴らしい世界じゃ。そこに戻るためにガイアは救世主になるため強くなるのじゃ」
この世界、つまりゲームに存在する花、星、緑、空、食事、空気、水。
どれも美しい。
人間の姿も、その属性に合うように美男美女に作られている。
綺麗なテクスチャと高度なレンダリングのなせる業だ。
それでも、大祖先様は地球に戻りたいと言う。
地球の素晴らしさを聞かされて育った私も、またそう思う様になっていた。
何より、私を大事に育ててくれた家族達が望むことを、私は叶えたいと思った。
『救世主』は『守護者』を引き連れ魔王を倒す。
犠牲になった全ての魂は救済される。
神話の通りなら、電子データである私もまた、時を経て地球に転生する。
ゲームクリア後の自己の消滅についての恐怖を、そう信じることで振り払いながら、私は戦い続けた。
野営しながら、各地の狩り場を転戦する。
焚火の火の粉が顔に降りかかり、夜、ふと目が覚める。
大人達が話し込んでいる。
「大祖先様、救世主は本当に現れるのでしょうか?」
父が問い掛ける。
大祖先様が答える。
「救世主は神の気まぐれでいつ現れるか分からないのじゃ」
「ガイアは優れている。だけど、救世主ではない」
「いつ現れるかもしれない救世主を待っている時間はわしにはないのじゃ。この世界での寿命が私にはもう迫っている。わしは生きている間に魔王を倒されることを確認し、この世界の謎、そして最後にどうなるかを知りたいのじゃ。ガイアには救世主になってもらわなければならないのじゃ」
私は本当の救世主ではないのか……
これまでの私の戦いは何だったのか?
救世主であることが全てだった私は、今さら後戻り出来ない。
私がこれまで生きてきた拠り所、それは自分がこの世界を魔王から救い、救世主たること。
それこそが私の存在証明であり、存在そのものなのだから。
「やったー! ビッグスライム撃破だぜ!」
「タカシ! すごい!」
同じ狩り場で、同世代の子供達がパーティを組み、楽しそうに同じレベルのモンスターと戦っている。
「ガイア、行くぞ」
「はい」
私は厳しい大人達とパーティを組み、自分よりもレベルの高いモンスターと戦っていた。
私は、あの子達みたいにはなれないんだろう。
初年少女のパーティは、倒したモンスターからアイテムを手に入れていた。
彼らは仲良く、誰がどれを手にするか話し合っていた。
羨ましい。
私はかぶりを振り、そんな気持ちを振り切った。
私には使命がある。
危険なクエストをこなし、レアなスキルを身に付けた。
仲間を集め、ギルドを大きくした。
全ては家族の期待に応えるために。
自分の存在証明のために。
5大ギルドとして、地球は知られる存在になった。
いつしか、右胸にはあざが浮き上がり、能力の高い者から発するオーラを感じ取る様になった。
私は救世主になれた。
そう思った。
「ガイア、お前が今日から地球のギルドマスターじゃ」
大祖先様は私に全てを託した。
つづく
大祖先様こと、お爺様が私の頭を撫でながらそう言った。
父や母も私にそう言った。
レベルが上がる度に、他者よりもステータス上昇幅が高かった私は、周りから期待されていた。
同じレベルの同じ職業の者と比較しても、私は相当強い。
まれにそういう人間が生まれるらしい。
皆は私の才能のことを、神様がくれたギフトだともてはやしてくれた。
私は救世主として、幼い頃から周りの大人達から期待されていた。
その頃、地球というギルドは貧しく弱小だった。
メンバーはギルドマスターの大祖先様と両親、兄、姉、そして私。
ギルドそのものが家族であり、私の生活そのものだった。
家族とはいえ年長者であるメンバーは、私を鍛えることに妥協が無かった。
それを大人達は、愛、と呼んだ。
私もそれに必死で応えようとした。
くじけそうになる度に、大祖先様は私にこう言った。
「この世界はかりそめの世界なのじゃ。わしが住んでいた地球は素晴らしい世界じゃ。そこに戻るためにガイアは救世主になるため強くなるのじゃ」
この世界、つまりゲームに存在する花、星、緑、空、食事、空気、水。
どれも美しい。
人間の姿も、その属性に合うように美男美女に作られている。
綺麗なテクスチャと高度なレンダリングのなせる業だ。
それでも、大祖先様は地球に戻りたいと言う。
地球の素晴らしさを聞かされて育った私も、またそう思う様になっていた。
何より、私を大事に育ててくれた家族達が望むことを、私は叶えたいと思った。
『救世主』は『守護者』を引き連れ魔王を倒す。
犠牲になった全ての魂は救済される。
神話の通りなら、電子データである私もまた、時を経て地球に転生する。
ゲームクリア後の自己の消滅についての恐怖を、そう信じることで振り払いながら、私は戦い続けた。
野営しながら、各地の狩り場を転戦する。
焚火の火の粉が顔に降りかかり、夜、ふと目が覚める。
大人達が話し込んでいる。
「大祖先様、救世主は本当に現れるのでしょうか?」
父が問い掛ける。
大祖先様が答える。
「救世主は神の気まぐれでいつ現れるか分からないのじゃ」
「ガイアは優れている。だけど、救世主ではない」
「いつ現れるかもしれない救世主を待っている時間はわしにはないのじゃ。この世界での寿命が私にはもう迫っている。わしは生きている間に魔王を倒されることを確認し、この世界の謎、そして最後にどうなるかを知りたいのじゃ。ガイアには救世主になってもらわなければならないのじゃ」
私は本当の救世主ではないのか……
これまでの私の戦いは何だったのか?
救世主であることが全てだった私は、今さら後戻り出来ない。
私がこれまで生きてきた拠り所、それは自分がこの世界を魔王から救い、救世主たること。
それこそが私の存在証明であり、存在そのものなのだから。
「やったー! ビッグスライム撃破だぜ!」
「タカシ! すごい!」
同じ狩り場で、同世代の子供達がパーティを組み、楽しそうに同じレベルのモンスターと戦っている。
「ガイア、行くぞ」
「はい」
私は厳しい大人達とパーティを組み、自分よりもレベルの高いモンスターと戦っていた。
私は、あの子達みたいにはなれないんだろう。
初年少女のパーティは、倒したモンスターからアイテムを手に入れていた。
彼らは仲良く、誰がどれを手にするか話し合っていた。
羨ましい。
私はかぶりを振り、そんな気持ちを振り切った。
私には使命がある。
危険なクエストをこなし、レアなスキルを身に付けた。
仲間を集め、ギルドを大きくした。
全ては家族の期待に応えるために。
自分の存在証明のために。
5大ギルドとして、地球は知られる存在になった。
いつしか、右胸にはあざが浮き上がり、能力の高い者から発するオーラを感じ取る様になった。
私は救世主になれた。
そう思った。
「ガイア、お前が今日から地球のギルドマスターじゃ」
大祖先様は私に全てを託した。
つづく
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