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隣国の王女殿下
終わりと始まり・完
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あれからわたしは名ばかりのリリアイラー王国の第1王女となった。わたしが居なくても国は成り立つそうで、早く結婚相手を見つけて嫁げと現国王であるキーラン兄様に言われた。
そんなこんなで事が落ち着き、わたしはデヴィン王子と共に、同じ馬車で帰国している。アリシア様は、天命を受けたという声を上げたシャオンが自国の医療研究者に作らせた薬によって回復されたそうだ。それを聞いた時、わたしは安堵すると共にその場に崩れ落ちた。そして、生まれてこの方、滅多に出さなかった涙を流した。その時、背中を擦ってくれたデヴィン王子の手は温かかった。
馬車に揺られながら、わたしはベール越しにちらりとデヴィン王子を見た。ついこの間、自身が好きだと自覚した相手が目の前に、しかも2人っきりで居ると思うと、胸が高鳴り頬に熱が集まる。すると、それまで閉じられていた綺麗な彼の唇が開けられ、声が発せられた。
「アリーヤ、君なら気付いているかもしれない。私は君に好意を抱いている」
「………」
これまで、うっすらと感じていたこ事。自意識過剰かもしれないと、きめつけるのはずっと保留にしていた。それは、この恋心が叶わず自分が傷つくのを防ぐ為だったのかもしれない。そんな事を本人から聞くと、それまでとはまるで重みが違う。わたしはそっと顔を伏せた。
「好きだ、愛している。恋心等の感情を今まで抱いた事が無い為、これらの言葉はしっくり来ない。私の君への気持ちを言葉で表すのはとても難しい。けれどこれだけは言える。私は他の誰でもない君に、アリーヤに、私の隣に居て欲しい。第1王子である私でも無く、次期王である私でも無く。ただ1人の平凡な人間である、デヴィン・ハーディング・レノムスティアの隣に」
視界の中へ差し出された手を、わたしは見つめ唾を飲み込む。そして、恐る恐るその手を握った。
「っ……はいっ」
その手は、温かく、そして、心地よかった。
しばらく馬車に揺られ、王宮に着いたわたし達は国王や王妃に連絡するよりも先にこれからの計画を立てた。デヴィン王子が第1王子であるのと同様に、わたしは今では第1王女だ。国王、王妃と顔を合わせるまでに案を考えておきたい。そして一刻も早くアリシア様と会いたいという理由で、わたしは頭をフル回転させる。勿論、精神的な意味で。物理的な意味だったら今頃足元に生首が転がっているだろう。恐ろしや。
「ひとまず、父上や母上の説得の大方はその金色の瞳でどうにかなるだろう。ならないのは貴族達の反発だな」
「学園で既にある程度の人脈は作っておりますが、あくまでもある程度ですから」
取り敢えず今のうちに、高位貴族の側仕えの人脈を広げるという事でそこは解散した。立ち上がると、まだ座ったままのデヴィン王子に手を引かれた。そのまま抱き締められる。
「ずっと……こうしたかった……」
そう泣きそうな声で言うデヴィン王子の背中に、わたしは手を回す。
「っ……わたしもです、デヴィン王子…」
「ねぇ……御願い、デヴィンって呼んで」
「ッ………!!」
そう言って首元に頭を擦り寄せるデヴィン王子に、わたしの顔はとても熱くなる。深呼吸をし、彼の耳元でそっと呟いた。
「……デ、デヴィン……」
「………」
わたしが彼の名前を言った時、その場に沈黙が流れた。気持ち悪かっただろうかと、思わず息を飲む。
「あ、あの、今のやっぱ無しで……っ?!」
その時、わたしの唇に彼の唇が当たった。頭の中が?!でいっぱいになる中、顔を離したデヴィン王子…デヴィンは心の底からであろう笑顔を浮かべた。
「アリーヤ」
いつも通りの呼び方は、いつも以上にわたしの胸を高鳴らせたのだった。
そんなこんなで事が落ち着き、わたしはデヴィン王子と共に、同じ馬車で帰国している。アリシア様は、天命を受けたという声を上げたシャオンが自国の医療研究者に作らせた薬によって回復されたそうだ。それを聞いた時、わたしは安堵すると共にその場に崩れ落ちた。そして、生まれてこの方、滅多に出さなかった涙を流した。その時、背中を擦ってくれたデヴィン王子の手は温かかった。
馬車に揺られながら、わたしはベール越しにちらりとデヴィン王子を見た。ついこの間、自身が好きだと自覚した相手が目の前に、しかも2人っきりで居ると思うと、胸が高鳴り頬に熱が集まる。すると、それまで閉じられていた綺麗な彼の唇が開けられ、声が発せられた。
「アリーヤ、君なら気付いているかもしれない。私は君に好意を抱いている」
「………」
これまで、うっすらと感じていたこ事。自意識過剰かもしれないと、きめつけるのはずっと保留にしていた。それは、この恋心が叶わず自分が傷つくのを防ぐ為だったのかもしれない。そんな事を本人から聞くと、それまでとはまるで重みが違う。わたしはそっと顔を伏せた。
「好きだ、愛している。恋心等の感情を今まで抱いた事が無い為、これらの言葉はしっくり来ない。私の君への気持ちを言葉で表すのはとても難しい。けれどこれだけは言える。私は他の誰でもない君に、アリーヤに、私の隣に居て欲しい。第1王子である私でも無く、次期王である私でも無く。ただ1人の平凡な人間である、デヴィン・ハーディング・レノムスティアの隣に」
視界の中へ差し出された手を、わたしは見つめ唾を飲み込む。そして、恐る恐るその手を握った。
「っ……はいっ」
その手は、温かく、そして、心地よかった。
しばらく馬車に揺られ、王宮に着いたわたし達は国王や王妃に連絡するよりも先にこれからの計画を立てた。デヴィン王子が第1王子であるのと同様に、わたしは今では第1王女だ。国王、王妃と顔を合わせるまでに案を考えておきたい。そして一刻も早くアリシア様と会いたいという理由で、わたしは頭をフル回転させる。勿論、精神的な意味で。物理的な意味だったら今頃足元に生首が転がっているだろう。恐ろしや。
「ひとまず、父上や母上の説得の大方はその金色の瞳でどうにかなるだろう。ならないのは貴族達の反発だな」
「学園で既にある程度の人脈は作っておりますが、あくまでもある程度ですから」
取り敢えず今のうちに、高位貴族の側仕えの人脈を広げるという事でそこは解散した。立ち上がると、まだ座ったままのデヴィン王子に手を引かれた。そのまま抱き締められる。
「ずっと……こうしたかった……」
そう泣きそうな声で言うデヴィン王子の背中に、わたしは手を回す。
「っ……わたしもです、デヴィン王子…」
「ねぇ……御願い、デヴィンって呼んで」
「ッ………!!」
そう言って首元に頭を擦り寄せるデヴィン王子に、わたしの顔はとても熱くなる。深呼吸をし、彼の耳元でそっと呟いた。
「……デ、デヴィン……」
「………」
わたしが彼の名前を言った時、その場に沈黙が流れた。気持ち悪かっただろうかと、思わず息を飲む。
「あ、あの、今のやっぱ無しで……っ?!」
その時、わたしの唇に彼の唇が当たった。頭の中が?!でいっぱいになる中、顔を離したデヴィン王子…デヴィンは心の底からであろう笑顔を浮かべた。
「アリーヤ」
いつも通りの呼び方は、いつも以上にわたしの胸を高鳴らせたのだった。
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