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嫌な客
しおりを挟む時間が過ぎると、体をふらつかせながら神崎さんの車へと向かう。
別に嫌でもないのに、こんなに体が消耗してしまうのは何故なのだろう。
熱が治りきっていないとかあるのだろうか。
家にはもちろん体温計なんてないし、分からなかった。
車に乗り込むと、大きく息を吐いてもたれた。
「大丈夫ですか?蒼さん。
次は一時間後ですが、どうします?」
「車の中でゆっくりさせて」
「はい、分かりました。
車内もう少し暖かくします?」
「いや、十分」
神崎さんはこれが仕事だから、
僕を気遣ってくれるし心配したフリだってしてくれる。
本当はこんな気遣いいらないのだけれど、
神崎さんがいないと成り立たないし、
有難いと思って受けなければならない。
「欲しいものとかあります?
コンビニで買ってきますよ」
「……水が、のみたい」
「分かりました」
車の揺れに気持ち悪さを覚える。
荒木さんの家を出る前に中の物は全て出してきたはずなのに、
まだ内部に残っているような気さえした。
「そういえば、柳瀬さんでしたっけ、昨日の人」
「……うん」
「キャンセル待ちに登録してましたよ」
「……へぇ」
突然相手側の都合で予定がキャンセルになった際にキャンセル待ちの人に連絡が行き、
希望する人の中から先着で会うことができるという制度があった。
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