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嫌な客
しおりを挟む「……できれば、もう会いたくないなぁ」
「そうですか。
でも、あなたのためには悪い客ではなさそうですけどね。
話聞いている感じ」
「……何、言ってんの」
「すみません」
車が止まると、神崎さんは急いで水を買って来てくれる。
それを一口、口に含んでから、疲労を忘れたいというように僕は目を閉じた。
ーーそのまま数分の間、眠ってしまっていたようだ。
最近は長い時間しっかりとした睡眠がとれず、
どちらかと言えば短い時間を数回眠っていた。
目が覚めたら、神崎さんは車の外で何やら電話をしていた。
携帯を見ると、眠っていたのは30分程度のようだった。
「蒼さん。
次のお客様、急な仕事でキャンセルされるようなので、
キャンセル待ちから埋めました」
「良い……けど」
確かに僕は、客のキャンセルがあれば誰でも良いからその場で見つけてもらうようにしていた。
「その結果、残念ですが、柳瀬さんに決まりました」
それでも少し口ごもったのは、嫌な予感がしたからだと思う。
「……昨日の今日じゃん。
他の人いなかったの」
「6時間希望とのことなので。
1番稼げるかと。
それに不動の一位を納めている蒼さんなら、選り好みはしないと思いまして」
「……あっそ」
大きな溜息を吐く。
昨日は、体調不良なところを見せた後、変に気遣われて眠ってしまった。
さすがに今日は昨日程の体調不良はないし、異常に優しくされたりはしないと思うけど。
大体、昨日の3時間で懲りずに、6時間も時間をとる変わり者だ。
金持ちで、傲慢に決まっている。
今日はヘトヘトになる程セックスされるはずだった。
ーー嫌、だなぁ。
それでも昨日の柔らかな表情が目に浮かべば、
どこまでも会いたくないような気持ちになった。
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