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大雨
しおりを挟む「もしかして、まだ怖いの?
思い出すね、一緒に住んでいた時のこと」
頬に触れられて、唇が震えだす。
窓に雨粒がぶつかり、流れていくのが見えた。
「とりあえずベッドに移動しよう。
こんな仕事しているくらいだから、ベッドでセックスは出来るんでしょ」
「……い、や」
「今はお客さんだよ、俺は」
手を引かれてベッドに放り投げられる。
思い出したくもないことを、嫌でも思い出す。
"ゲームをしよう、蒼。
俺が入ってくる前に自分の部屋のドアが閉められなかったら、お仕置きだよ"
ーー4年前に母が死んでからの2年間、立花さんは、僕で実験をしていた。
心療内科の医師である彼は、
トラウマだとか、PTSDに関する研究をしていて、
その、実験体が欲しいといつも言っていた。
毎日、異なる時間で立花さんが二階の僕の部屋へやってくる。
部屋に入られる前に、ドアを閉めることが出来なければ、
"お仕置き"と称して様々なことをされていた。
深夜であれば、ベッドで寝ていては間に合わない。
ドアの横、壁を背にして眠り、
物音がすればドアを勢いよく閉め、抑えていた。
「顔色悪いね。トラウマになった?
怖い経験は、人間の心は壊す。
心療内科へ来る患者さんは、そんな人ばかりだ。
治療法を見つけるためには、まずトラウマという名の敵を知ること。
仕方ないね。
どんな治療も、誰かしらの犠牲のもと開発されていく。
俺は真面目だから、情報が欲しかったんだよ。
蒼には、トラウマを背負った実験体になってほしかったんだ」
「……いまも、深夜でもドアを閉めれる、から、何もしないで」
「2年たった今も?へぇ、ぐっすり眠れないの?
仕事で関西の方へ行っていたから、もう蒼とは2年も離れていたのに」
立花さんはいなくなり、一人暮らしを始めた。
それからもう、2年たつ。
「家も売却してたから、もう会えないと思ってたよ」
「……なにも、しないで。
出て行って……っ」
もう一度、ゲームをしたい。
無警戒に僕から入ってしまったから、もう一度、初めからゲームを。
そしたら、ドアの横で待機をするし、
立花さんが入ってこようものなら、ドアを抑えられる。
"蒼って、起きた時壁叩くよね"
柳瀬さんの言葉が浮かんだ。
仕方がないことだった。
横にあるドアを抑えるために叩くことは、もう癖になっている。
「出て行かないよ。
蒼がドア閉めるの上手になってからは、あまりお仕置きできてなかったから、楽しみだ。
さて、なにしよっか」
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