眠れない夜のお話

もこ

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大雨

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この人の顔は、昔を思い出す。
無理に目をそらすのに、脳裏にこびりついた立花さんの表情が、離れてくれない。

「そういえば、ホームページに酷く扱って欲しいって書いてあったけど、何であんな嘘つくの?
酷く扱われるセックス、あんなに嫌いだったじゃん」


ズボンの上から後孔を指で突かれて、身震いがした。
この人がお仕置きと称してやることは、大抵乱暴なセックスだった。


「やっぱり精神が壊れちゃったから?
精神が壊れた子にはありがちだよね。
いるいる、わざと嫌なことをされに行く人」

「……っ定期検診で、幸せ恐怖症、て、だから、も、許して」


心療内科で勤める立花さんがその病名を知らないはずもなく、
病気であれば許してもらえるのではないかと淡い期待を持つ。


「あーそっか。
確かに、そんな感じかもね。
幸せ恐怖症は厄介だよ。ひとつひとつ怖いことを取り除いていかないといけないし、中々治らない。
あーあ、幸せになれなくなっちゃったね」


柳瀬さんの書いた、小説を思った。
お互いがお互いを思いあった、幸せな物語。


幸せになることが怖くてたまらないのに、
幸せになんかなれるはずないって、分かっている。



「……っも、知ってる」

「あれ?涙浮かんできた?」



仕事柄、こうして馬乗りにされることも多いし、
昔みたく乱暴に犯されることも少なくはなかった。


「他の人にも乱暴に抱かれたりしてるだろうに、なんでそんな怯えてるの?
俺がトラウマの原因だから?」


あるのは、ただただ怖いという感情だった。


いつものお客さんと同じ。
いつも、僕を乱暴にする人たちと同じ。

だから、大丈夫。


言い聞かせてみるものの、震えは一向に止まらない。
感情を殺してセックスをするようになっていたのに、
この人は、どうしても怖い。



「嬉しいね。
精神を壊したものだけに与えられる"特別"だ」


ズボンを脱がされて、動かない体で必死に首を振る。


シャワーを浴びるのがルールとか、
ゴムをつけるのがルールとか、
色々引き延ばす算段はあったはずなのに、
そのどれもが、言葉にならない。
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