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1軒目 ―女神イーリスの店―
7杯目。お水をください。(2)
しおりを挟むタバコが机から落ちて床の上に散乱した。
大声で言い争う気配と、まるで何かが壊れたかのような異様な雰囲気に、せっかく店に戻り始めていた客達は戦々恐々とし、そそくさと退散し始める。
「あ、ありがとうございました。またのお越しを―――」
「ほら! お前も逃げんと大変なことになるぞ!!」
別のテーブルにいた別世界の元勇者一行が危機を察知し、ウェイターの首根っこを摑まえて店の扉をくぐる。店の中には、二人しか残らなかった―――。
が、当人たちはそのことに全く気付いていない。
「じゃあ、あんたが何処の田舎出だか知らない、つまらない男だってこと。彼女はゲーム上の設定だからってしょうがなく受け入れてたらしいけど、魔王を倒して一緒になった瞬間、夢が覚めたんでしょうね。だって設定だもの。吊り橋効果ってやつじゃないかしら。」
「おまっ、ちょっ! それってマジか!? フローレンスが俺に離婚届を書き残して去ったのは――――、いや、それより俺の親友のブルータスが俺の嫁寝取っただなんて聞いてない!」
「そりゃぁそうよねぇ。魔王を倒してしばらくして、急に流浪の旅で民を救いたいとか言って世界中を旅しているような親友ですもの。オホホ。そうすればあなたと顔を合わせなくてもいいわよ、って進言したのも。わ、た、し。」
「ブルータス! お前もか!! じゃなくて―――イーリス、てんめぇえええええええ」
ヤスオは爛々と怒りに目を光らせ、言葉を尖らせる。拳が握られ、力が入る。手の甲に青筋が浮かんだ。
「なによ! もともと彼女、ダッサイあんたのことなんて好きじゃなかったんだから、目を覚まさせてあげただけじゃない! 感謝されるべきでしょ? それとも恨まれる筋合いなんてないのよ!」
イーリスは胸を大きく寄せ上げ、たっぷりとした豊満な胸を強調する。すると、元勇者の鼻の下がほんの一瞬緩んだ。
「相変わらず、いいお胸・・・・じゃねぇえ! イーリス! すべての元凶はお前だったのか!」
「知らなかったの? 馬鹿な勇者ですこと。すべて私の手のひらの上で踊らされている事実にすら気づかなかったなんて。」
イーリスは嘲笑し、妖艶な笑みを浮かべながら言った。
「あなただって、さんざん・・・楽しんだじゃない。と、く、に」
イーリスはカウンターから身を乗り出し、蠱惑的な表情でヤスの頬に触れる。
「ニオドールの町では、よかったでしょぉ? 決戦前夜の、い、ち、や。」
その言葉を聞いて、ヤスの瞳が驚愕に見開かれた。
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