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第8話 アーゲラに住むマモノ
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――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「司祭。なぜ、司祭なぜなのですか、信じていたのに、なぜなのですか。……なぜ。」
「司祭、なぜ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、司祭、、どうして。」
アーゲラは真っ暗な場所にいた。そこは光を通さないどこまでも暗闇が続く場所だった。アーゲラはそこに独りだった。
ここはアーゲラの魂の部屋とでも言える場所。司祭に憑いていた怪異に自分の体を奪われた結果、アーゲラはこの場所に追いやられてしまった。世界と人と隔絶された場所。俯き座り込むアーゲラは失意に暮れていた。
???「なあ、体借りても良いか?」
どこからか聞こえた声。アーゲラは声の方を向いた。そこに立っていた者の顔はわからなかった。だが口をイーっと開け、ギザギザとした獣のような歯を露出させて笑っていた。真っ赤な髪は全く手入れがされておらず床に着き、上裸の素肌には禍々しい文様が見える。性別は男なのだと思われる、だがそもそも人間なのかすらもわからない。
「司祭を、助けたい。」
???「そのためなら借りても良いか?。」
「え、で、できるのか!?」アーゲラの声が尻上がりに上ずった。
???「可能性はある、だが保証はない」
「そうか、司祭はやはり。ああ、使ってくれ。どうなったってかまわない。」
???「ハハッそんな手荒な真似はしないさ。何、安心して溺れてれば良い。すぐに助けが来る。」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
司祭がアーゲラの腹部を腕で突き刺した後、アーゲラは涙を流し、ただ一点を見つめている。エノコは、アーゲラの体を揺すりながら「アーゲラ?ねえ、アーゲラ?!」と問いかけるが、返事が無く、アーゲラはされるがままだったアーゲラの口が開いた。
「ああ?」
「アーゲ、、」
「鬱陶しい!」
アーゲラに意識が戻る。嬉しく思う暇も安堵する暇もなく、アーゲラの拳がエノコに向かってくる。
「カルノーサ!エノコを!!」
「はい!」
ガウラの声に反応したカルノーサがエノコをアーゲラから引きはがし距離を取った。アーゲラの拳はエノコ当たることはなく空を切る。
聞こえた言葉はアーゲラの声だった、しかし怒りのままに発せられる声はまるで別人だった。
「アー、ゲラ?」
友も声で聞こえた恐ろしい言葉にエノコの目からは涙がこぼれた。
「何がどうなってるんすか?」
カルノーサとエノコの元に移動してきたガウラに、カルノーサが問う。
「あれが人間の体を乗っ取る”受肉”という行為だ。詳しく話している暇はない。カルノーサはエノコを守りつつ町人の避難誘導をしてくれ。」
「後で聞くっすからね!!」
受肉は完全に体を乗っ取られるまでに時間がある。いまならば捕縛することも難しくない。そう考えたガウラは、すぐに捕縛魔法の詠唱を始めた。
『主よ、我に力を与え賜え。
我は、忠誠を示し、心を授ける。
産まれよ、生花!絡め取れ、薔薇の蔓!!』
地面から生えた4本の白く輝く蔓が、地響きをあげながら怪異に縛りつく。
怪異はニヤリと笑い、捕縛魔法を簡単に引き裂いた。
「ブチィーン!」
受肉直後の怪異であれば問題なく捕縛できると確信していたガウラは驚きを隠せなかった。
「バカな!?」
「フッ。残念だったな人間。やはりこの体、どうやら当たりらしい。」
捕縛魔法を簡単に引き裂いた怪異がガウラに殴りかかる。
「死ねェ!」
怪異に操られているアーゲラの拳を、ガウラは両腕をクロスさせて受け、体を後ろに飛ばして威力を抑えた。
「ハハハハハッ動く、動くぞ!これならお前を簡単に殺せそうだ。」
怪異は体が思い通りに動くことが嬉しいのか悦に浸っている。その実、ガウラが受け身を取る形で攻撃を受けたことにも気が付いておらず、どうやって弄んでやろうかと考えているように舌なめずりをした。
対するガウラは捕縛にこそ失敗したものの、戦闘には余裕があることを今受けた攻撃で理解していた。
ガウラの専門は捕縛等の遠距離戦ではなく接近戦である。どうにかして無力化したいと考えるガウラは、持久戦に持ち込む考えをしていた。
その時、なぜかアーゲラの顔色が曇り、存在しない何かと話しているような声が聞こえた。
「司祭。なぜ、司祭なぜなのですか、信じていたのに、なぜなのですか。……なぜ。」
「司祭、なぜ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、司祭、、どうして。」
アーゲラは真っ暗な場所にいた。そこは光を通さないどこまでも暗闇が続く場所だった。アーゲラはそこに独りだった。
ここはアーゲラの魂の部屋とでも言える場所。司祭に憑いていた怪異に自分の体を奪われた結果、アーゲラはこの場所に追いやられてしまった。世界と人と隔絶された場所。俯き座り込むアーゲラは失意に暮れていた。
???「なあ、体借りても良いか?」
どこからか聞こえた声。アーゲラは声の方を向いた。そこに立っていた者の顔はわからなかった。だが口をイーっと開け、ギザギザとした獣のような歯を露出させて笑っていた。真っ赤な髪は全く手入れがされておらず床に着き、上裸の素肌には禍々しい文様が見える。性別は男なのだと思われる、だがそもそも人間なのかすらもわからない。
「司祭を、助けたい。」
???「そのためなら借りても良いか?。」
「え、で、できるのか!?」アーゲラの声が尻上がりに上ずった。
???「可能性はある、だが保証はない」
「そうか、司祭はやはり。ああ、使ってくれ。どうなったってかまわない。」
???「ハハッそんな手荒な真似はしないさ。何、安心して溺れてれば良い。すぐに助けが来る。」
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司祭がアーゲラの腹部を腕で突き刺した後、アーゲラは涙を流し、ただ一点を見つめている。エノコは、アーゲラの体を揺すりながら「アーゲラ?ねえ、アーゲラ?!」と問いかけるが、返事が無く、アーゲラはされるがままだったアーゲラの口が開いた。
「ああ?」
「アーゲ、、」
「鬱陶しい!」
アーゲラに意識が戻る。嬉しく思う暇も安堵する暇もなく、アーゲラの拳がエノコに向かってくる。
「カルノーサ!エノコを!!」
「はい!」
ガウラの声に反応したカルノーサがエノコをアーゲラから引きはがし距離を取った。アーゲラの拳はエノコ当たることはなく空を切る。
聞こえた言葉はアーゲラの声だった、しかし怒りのままに発せられる声はまるで別人だった。
「アー、ゲラ?」
友も声で聞こえた恐ろしい言葉にエノコの目からは涙がこぼれた。
「何がどうなってるんすか?」
カルノーサとエノコの元に移動してきたガウラに、カルノーサが問う。
「あれが人間の体を乗っ取る”受肉”という行為だ。詳しく話している暇はない。カルノーサはエノコを守りつつ町人の避難誘導をしてくれ。」
「後で聞くっすからね!!」
受肉は完全に体を乗っ取られるまでに時間がある。いまならば捕縛することも難しくない。そう考えたガウラは、すぐに捕縛魔法の詠唱を始めた。
『主よ、我に力を与え賜え。
我は、忠誠を示し、心を授ける。
産まれよ、生花!絡め取れ、薔薇の蔓!!』
地面から生えた4本の白く輝く蔓が、地響きをあげながら怪異に縛りつく。
怪異はニヤリと笑い、捕縛魔法を簡単に引き裂いた。
「ブチィーン!」
受肉直後の怪異であれば問題なく捕縛できると確信していたガウラは驚きを隠せなかった。
「バカな!?」
「フッ。残念だったな人間。やはりこの体、どうやら当たりらしい。」
捕縛魔法を簡単に引き裂いた怪異がガウラに殴りかかる。
「死ねェ!」
怪異に操られているアーゲラの拳を、ガウラは両腕をクロスさせて受け、体を後ろに飛ばして威力を抑えた。
「ハハハハハッ動く、動くぞ!これならお前を簡単に殺せそうだ。」
怪異は体が思い通りに動くことが嬉しいのか悦に浸っている。その実、ガウラが受け身を取る形で攻撃を受けたことにも気が付いておらず、どうやって弄んでやろうかと考えているように舌なめずりをした。
対するガウラは捕縛にこそ失敗したものの、戦闘には余裕があることを今受けた攻撃で理解していた。
ガウラの専門は捕縛等の遠距離戦ではなく接近戦である。どうにかして無力化したいと考えるガウラは、持久戦に持ち込む考えをしていた。
その時、なぜかアーゲラの顔色が曇り、存在しない何かと話しているような声が聞こえた。
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