否定の檻(おり)

たま、

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「龍太、もう少し人の話を聞けるようになった方が良いよ」

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中学生の龍太の心には、人より優位に立ちたいという無意識が凝り固まっていた。
彼はあまり頭は良くなかったが、自分では利口だと思っていた。
彼はいつも誰かの話を聞くと、すぐに否定から入る。まるで癖のようだった。

・・・「いや、それは違う」「いや、それよりも」「そうじゃなくて」・・・


「いや、それは違うよ」と龍太は、幼馴染の彩香の旅行話に割り込んだ。
「でも、龍太...実際に私が見た光景なんだよ?」と彩香が反論する。 
「違う、俺の方が詳しいんだよ」と彼は強調し、誰にも頼まれていないのに観光地のあやふやな知識を一方的に語り始める。
彩香はため息をつき、言葉を止めた。


そして人々は彼との距離を取るようになった。
彼の友人だった同級生たちも、次第に龍太の「否定癖」に耐えられなくなっていた。


「お前、何でも否定するよな」とクラスメイトの健二が苦笑しながら言った。 
「いや、俺はちゃんと正しいことを言ってるだけだ」と龍太はいつものように否定した。
 健二は肩をすくめて黙り込み、それ以来、龍太とは話すことを避けるようになった。


そんな龍太の様子を、彩香は苦々しく見つめていた。
彼女は何度も彼に忠告した。 
「龍太、もう少し人の話を聞けるようになった方が良いよ。みんな困ってるから」と、優しく言った。
「いや、俺は間違ってない。それに、お前らが分かってないだけなんだ」と龍太は聞き入れない。


近所のおばさんも、龍太を避けるようになった。

ある日、彼女が何気なく話していた庭の手入れについて、龍太が口を挟んだ。 
「いや、それじゃ効率悪いよ。俺ならこうする」と、まだ中学生の彼がその場の思いつきの浅知恵を押し付けるように話し始めた。 

「そう…まあ、そうね」とおばさんは無理やり笑顔を作りながら、龍太との距離を少しずつ開けていった。


唯一、祖父だけが彼を気にかけ続けていた。
だが、ある日、祖父が庭先で昔話を語っていた時のことだった。 

「いや、そんな昔の話はどうでもいいんだよ、じいちゃん。今の時代は全然違うから」と龍太は無神経に話を遮った。 

祖父は目を伏せ、静かに言った。「そうか、そうだな、龍太。俺の話はもういいんだな」と。

その日を境に、祖父も彼に語りかけることをやめた。


孤独に気づいたのは、しばらく経ってからだった。龍太は一人で過ごす時間が増えていた。
誰も彼に話しかけず、誰も彼を求めていない。気にかけてくれた彩香すら、もう彼を見ていない。

「いや、俺は間違ってない」と彼は自分に言い聞かせるが、誰にも聞いてもらえないその声は、虚しく空気に消えていく。


龍太は人に話しかけるのが怖くなった。
自分が否定されるのが怖い。それは龍太がいつも人々にしていた事だったのに。

しかし誰かと話がしたかった。
家のセキセイインコに話しかけた。
「お前、おんなじ事しか喋れない。つまんない奴w」

セキセイインコがさえずった
「イヤ・チガウ...オマエ・ツマンナイヤツ」
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