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6話
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時計の秒針は聴こえず、呼吸は止まり、心臓の鼓動も感じない。
時が進んでいることを示す基準が無い。
つまり時の流れは止まった。
あるのは脳内における記憶の流れと思考のみ。
走馬灯は意識が芽生え始めた小学生から始まった。
自分はどんな環境でも必ず平均以上の位置に居た。
決してトップにはなれないが、時間を掛ければ必ず中の上にはなれる。
自虐的とも言えるが、今の世の中ではそれが正解だと、負け惜しみでも無く本気でそう思っている。
成績もクラス内ポジションも、目立ちはしないが平均より少し上。
少しの優越感と安心を得ることが出来、且つリスクもプレッシャーも少ない。
そのポジションに行き着くまでは、どんなことでも自然と努力出来た。
そんな自分を早くから自己分析出来ていたので、選ぶ進路に迷いは無かった。
人生は実に合理的な選択の繰り返しだった。
頑張って背伸びして、ギリギリ手が届く場所。
どれだけ周りのレベルが高い環境でも、飛び込んでしまえば、いずれ自分はその環境で中の上になれる。
自らちょっと上のハードルに挑み続けた結果、そこそこ難関で有名な私立大学を現役合格し、東証1部上場の大手企業に就職。
既に世間で言われている平均年収は超えている。
大学時代からの彼女もいるが、夜の悪い遊びも密かに楽しみながら、20代らしい充実した日々を過ごしていた。
そう、ほんの一ヶ月前までは何の挫折もない順風満帆な人生だった。
走馬灯が現在に到達した。
・・・。
突然、朝がきた。
目蓋の裏に強い光を感じるし、朝らしい鳥の鳴き声が聞こえる。
全く寝た気はしなかったが、結局、普通に寝てしまったのだろう。
感覚的にはまだ早朝だろうが、ゆっくり重い目蓋を上げる。
見覚えのない白く発光した何もない天井が見える。
「・・・」
まだ夢の中だった。
夢の中特有の思うように動かない身体を起こす。
見回してみても記憶にない、全く見覚えのない部屋だった。
ベッドはラブホテルのそれよりも広く、この部屋唯一の大きな窓は少し開いていて、白いカーテンが気持ちよく、そよいでいる。
ときおり、窓の隙間からは風が吹きこみ、草木の匂いを乗せた澄んだ空気が入ってくる。
体感したことないほどに柔らかく沈むベッドが何とも気持ち良い。
深く息を吸い込んだ後、もう一度身体を倒し、ベッドと一体になって溶けるように、夢の中で二度寝を楽しんだ。
こんなにも爽やかで気持ちの良い朝は、今まで生きてきた中で経験したことがあっただろうか。
過去の記憶を思い返しながらゴロゴロする。
思い返す中、ふと最近の嫌な記憶が蘇った。
鈍い意識の中、今日の報告会は朝一の9時からで、資料印刷の為に1時間早く出社する必要があることを思い出してしまった。
『そういえば、目覚ましをセットしていなかったような』
不安になり、焦って目を開ける。
しかし、まだ夢から覚めておらず、景色も変わらない。
どうやったら起きるだろうかと思案しながらも、身体と意識が妙だ。
相変わらず身体は動かしにくいが、感覚と意識だけは妙にはっきりしている。
違和感を確かめるように、改めてゆっくり身体を起こす。
先ほどと変わらない、全く同じ光景。
気持ちよく泳いでいた白いカーテンが風で大きく捲り上がり、外の景色が見える。
芝生のように整った草が一面を淡い緑色に染め、花々が至るところで差し色になって映えている。
その光景は、考える行為を奪い去るほどに美しかったが、違和感があった。
空に人が浮かんでいた。
時が進んでいることを示す基準が無い。
つまり時の流れは止まった。
あるのは脳内における記憶の流れと思考のみ。
走馬灯は意識が芽生え始めた小学生から始まった。
自分はどんな環境でも必ず平均以上の位置に居た。
決してトップにはなれないが、時間を掛ければ必ず中の上にはなれる。
自虐的とも言えるが、今の世の中ではそれが正解だと、負け惜しみでも無く本気でそう思っている。
成績もクラス内ポジションも、目立ちはしないが平均より少し上。
少しの優越感と安心を得ることが出来、且つリスクもプレッシャーも少ない。
そのポジションに行き着くまでは、どんなことでも自然と努力出来た。
そんな自分を早くから自己分析出来ていたので、選ぶ進路に迷いは無かった。
人生は実に合理的な選択の繰り返しだった。
頑張って背伸びして、ギリギリ手が届く場所。
どれだけ周りのレベルが高い環境でも、飛び込んでしまえば、いずれ自分はその環境で中の上になれる。
自らちょっと上のハードルに挑み続けた結果、そこそこ難関で有名な私立大学を現役合格し、東証1部上場の大手企業に就職。
既に世間で言われている平均年収は超えている。
大学時代からの彼女もいるが、夜の悪い遊びも密かに楽しみながら、20代らしい充実した日々を過ごしていた。
そう、ほんの一ヶ月前までは何の挫折もない順風満帆な人生だった。
走馬灯が現在に到達した。
・・・。
突然、朝がきた。
目蓋の裏に強い光を感じるし、朝らしい鳥の鳴き声が聞こえる。
全く寝た気はしなかったが、結局、普通に寝てしまったのだろう。
感覚的にはまだ早朝だろうが、ゆっくり重い目蓋を上げる。
見覚えのない白く発光した何もない天井が見える。
「・・・」
まだ夢の中だった。
夢の中特有の思うように動かない身体を起こす。
見回してみても記憶にない、全く見覚えのない部屋だった。
ベッドはラブホテルのそれよりも広く、この部屋唯一の大きな窓は少し開いていて、白いカーテンが気持ちよく、そよいでいる。
ときおり、窓の隙間からは風が吹きこみ、草木の匂いを乗せた澄んだ空気が入ってくる。
体感したことないほどに柔らかく沈むベッドが何とも気持ち良い。
深く息を吸い込んだ後、もう一度身体を倒し、ベッドと一体になって溶けるように、夢の中で二度寝を楽しんだ。
こんなにも爽やかで気持ちの良い朝は、今まで生きてきた中で経験したことがあっただろうか。
過去の記憶を思い返しながらゴロゴロする。
思い返す中、ふと最近の嫌な記憶が蘇った。
鈍い意識の中、今日の報告会は朝一の9時からで、資料印刷の為に1時間早く出社する必要があることを思い出してしまった。
『そういえば、目覚ましをセットしていなかったような』
不安になり、焦って目を開ける。
しかし、まだ夢から覚めておらず、景色も変わらない。
どうやったら起きるだろうかと思案しながらも、身体と意識が妙だ。
相変わらず身体は動かしにくいが、感覚と意識だけは妙にはっきりしている。
違和感を確かめるように、改めてゆっくり身体を起こす。
先ほどと変わらない、全く同じ光景。
気持ちよく泳いでいた白いカーテンが風で大きく捲り上がり、外の景色が見える。
芝生のように整った草が一面を淡い緑色に染め、花々が至るところで差し色になって映えている。
その光景は、考える行為を奪い去るほどに美しかったが、違和感があった。
空に人が浮かんでいた。
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