君がいた砂浜

こじまき

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また始まる

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レイがいなくなってから、二年が経った。

私は大学生になって、東京の大学で海洋環境学を学んでいる。勉強の一環で海へ行くたびに、故郷の砂浜を思い出す。朝焼け、潮の香り、波の音、レイの笑顔。どれもまだ、胸の奥で生きている。

ううん。私がまだあの時間の中でだけ生きているんだ。曇りなく幸せだったあの日々の中で。

幸せだった日々に招待してくれるのか、レイが死んだことを私に思い出させるためなのか、成人式の案内が届いた。無視する勇気もなくて、久しぶりに実家へ戻る。

スーツ姿で晴れ着姿の友人たちと写真を撮る。お母さんにも元クラスメイトたちにも「ナギ、なんでスーツなの」と言われても、レイもいないのにおしゃれするつもりになんてなれない。

「ナギ」

振り返るとユウカだった。

「会えて嬉しい。帰るなら一緒にさ…海岸沿い、歩いて帰らない?」

久々のユウカの圧を懐かしく感じながら、私は頷く。スーツの私より、振袖に草履のユウカのほうが歩くのは大変だと思うけど。

「レイがいないのは、残念だよね」

その言葉に、こらえていた涙が込み上げてきた。もう黙っていられない。

「レイが死んだのは、私のせいなの」
「ナギ、それは違うよ」

違う。ユウカは知らないから無責任にそんなことが言えるんだ。

「違うの。私があの日、お父さんと話し合ってみたらってレイに言ったの…」
「知ってる」

私は顔を上げた。涙が頬を伝っていく。

「レイが死んだ日、家の近くで彼に会ったの。”夢を追ってるナギの隣に堂々と立てるようになりたい”って言ってた。”だから自分も、失敗してもいいから、まずは夢を追ってみる”って」

ユウカも泣いている。

「辛いよね。でもナギのせいじゃない。絶対ナギのせいじゃないから」

ユウカが手を繋いでくれて、二人で涙を拭いながら歩く。永遠に止まらないように思えた涙が、海風で少しずつ乾かされていく。

いつもゴミ拾いしていた砂浜が近づいてきて、人影がいくつも見えた。懐かしい声が、風に混じって聞こえる。

「こっちにプラゴミの袋くれー」
「蓋だと思ったら百円でしたー!」
「マスクゴミ多いの、今っぽいな」

見覚えのある顔ばかりだった。高校時代のクラスメイトたちが、みんなでゴミ拾いをしていた。あの頃のように、笑いながら、海をきれいにしていた。

私の足が止まる。

「これを見せたかったから誘ったんだ。レイが、ナギと私たちに残してくれたもの」

拾っても拾っても決してなくならないゴミのように、悲しみは消えない。

だけど同時にレイが生きた証も、確かに残ってる。

私はユウカに向かって頷いた。この気持ちは言葉にはできない。でもそれだけで通じる気がした。

「あ、ユウナギ来たー!」
「ナギはまじで久しぶりだねぇ」
「おいユウカ!振袖のままで来るとか、やる気ねえだろ」
「リーダー、早く早く!分別教えてー」

波は寄せては返す。それがまるで彼の声のように、優しくみんなの声を包む。

「行こ?」
「…うん」

久々に砂浜に下りて、砂を踏みしめる。

みんなが私を笑顔で迎えてくれる。

君がいた砂浜で、私の時間がまた動き出す。
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