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途切れる
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レイと付き合って、ユウカと仲良くなり、私の学校生活は変わった。いつだって周りに誰かがいて、寂しいということがない。ゴミ拾いは全校的な行事に発展して、私はそのリーダーとして忙しくもなった。
学校からの帰り道、レイが私の手を握ってふっと息をつく。
「みんなのナギになっちゃったな」
「そんなこと…」
あるかもしれないけど、全部レイのおかげだ。レイが声をかけてくれたなかったら、こんな風にならなかったんだから。「私にはレイだけだよ」と私はレイの耳元で囁いて、レイは照れ臭そうに笑う。
「そういえば、進路調査票もう書いた?私は東京の大学に行きたいんだ」
「そうなんだ」
「うちはお父さんもお母さんも高卒だから”大学なんて”って言われてたんだけど、ちゃんと勉強したいことがあるって説明したらわかってくれて、お金も出してくれることになったの」
「よかったじゃん」
「レイは…レイも東京だよね?」
「そうなんだけど…」
何だか歯切れが悪い。夕焼けに照らされた彼の目から今にも涙がこぼれてきそうに見えて、私たちの始まりの日を思い出す。彼は砂浜で泣いてた。
「もしかして、親と意見が合わないの?」
「…親父は弁護士になって自分の跡を継げって言うんだけどさ。俺は…」
私は彼が言葉を継ぐのをじっと待つ。
「作曲家…っていうか、音楽プロデューサーになりたいんだ。自分の曲を作りたい」
「素敵だね」
「でもギャンブルみたいなもんじゃん?才能があるかもわからないのに」
「何かで読んだよ。上を見たら自分よりすごい人はたくさんいる。だけど、”やりたい””やり続けたい”と思えることが何よりの才能だって」
レイはちょっと目を見開いた。
「お父さんと…よく話し合ってみたらどうかな?」
「ありがと」
それが、私とレイの最後の会話だった。
ーーー
その夜、家の電話が鳴って、お母さんが「えっ」という声を上げるのが聞こえた。電話を切ったお母さんはそのまま階段を上がって、私の部屋をノックする。
「ナギ」
「どしたの?」
「落ち着いて聞いてね。高坂レイ君が交通事故に遭って…亡くなったそうよ」
頭が真っ白になった。何かの冗談だと思った。ほんの数時間前まで一緒にいて、喋っていたのに。
お通夜はいつで、お葬式はいつで、どこでやるとか、お母さんの言葉なんて耳に入って来ない。
涙さえ出ない。
気付いたらレイの家で、寝かされているレイの前に立っていて、レイのお母さんに「お別れしてあげて」と声を掛けられていた。
嫌だ。お別れなんてしたくない。
「生き返って」
「なんで」
そう声をかけたくても、言葉ひとつ出てこない。
ただあまりに冷たい彼の身体が、もう私の問いかけには答えてはくれないことを、雄弁に語っていた。
お葬式で「お父さんと喧嘩して、家から飛び出したところを轢かれたらしい」という声が聞こえて、次の日から、私は砂浜に行けなくなった。
私のせいだ。あんな話をしなければ、レイは生きていたかもしれない。
学校からの帰り道、レイが私の手を握ってふっと息をつく。
「みんなのナギになっちゃったな」
「そんなこと…」
あるかもしれないけど、全部レイのおかげだ。レイが声をかけてくれたなかったら、こんな風にならなかったんだから。「私にはレイだけだよ」と私はレイの耳元で囁いて、レイは照れ臭そうに笑う。
「そういえば、進路調査票もう書いた?私は東京の大学に行きたいんだ」
「そうなんだ」
「うちはお父さんもお母さんも高卒だから”大学なんて”って言われてたんだけど、ちゃんと勉強したいことがあるって説明したらわかってくれて、お金も出してくれることになったの」
「よかったじゃん」
「レイは…レイも東京だよね?」
「そうなんだけど…」
何だか歯切れが悪い。夕焼けに照らされた彼の目から今にも涙がこぼれてきそうに見えて、私たちの始まりの日を思い出す。彼は砂浜で泣いてた。
「もしかして、親と意見が合わないの?」
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私は彼が言葉を継ぐのをじっと待つ。
「作曲家…っていうか、音楽プロデューサーになりたいんだ。自分の曲を作りたい」
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レイはちょっと目を見開いた。
「お父さんと…よく話し合ってみたらどうかな?」
「ありがと」
それが、私とレイの最後の会話だった。
ーーー
その夜、家の電話が鳴って、お母さんが「えっ」という声を上げるのが聞こえた。電話を切ったお母さんはそのまま階段を上がって、私の部屋をノックする。
「ナギ」
「どしたの?」
「落ち着いて聞いてね。高坂レイ君が交通事故に遭って…亡くなったそうよ」
頭が真っ白になった。何かの冗談だと思った。ほんの数時間前まで一緒にいて、喋っていたのに。
お通夜はいつで、お葬式はいつで、どこでやるとか、お母さんの言葉なんて耳に入って来ない。
涙さえ出ない。
気付いたらレイの家で、寝かされているレイの前に立っていて、レイのお母さんに「お別れしてあげて」と声を掛けられていた。
嫌だ。お別れなんてしたくない。
「生き返って」
「なんで」
そう声をかけたくても、言葉ひとつ出てこない。
ただあまりに冷たい彼の身体が、もう私の問いかけには答えてはくれないことを、雄弁に語っていた。
お葬式で「お父さんと喧嘩して、家から飛び出したところを轢かれたらしい」という声が聞こえて、次の日から、私は砂浜に行けなくなった。
私のせいだ。あんな話をしなければ、レイは生きていたかもしれない。
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