君がいた砂浜

こじまき

文字の大きさ
6 / 7

途切れる

しおりを挟む
レイと付き合って、ユウカと仲良くなり、私の学校生活は変わった。いつだって周りに誰かがいて、寂しいということがない。ゴミ拾いは全校的な行事に発展して、私はそのリーダーとして忙しくもなった。

学校からの帰り道、レイが私の手を握ってふっと息をつく。

「みんなのナギになっちゃったな」
「そんなこと…」

あるかもしれないけど、全部レイのおかげだ。レイが声をかけてくれたなかったら、こんな風にならなかったんだから。「私にはレイだけだよ」と私はレイの耳元で囁いて、レイは照れ臭そうに笑う。

「そういえば、進路調査票もう書いた?私は東京の大学に行きたいんだ」
「そうなんだ」
「うちはお父さんもお母さんも高卒だから”大学なんて”って言われてたんだけど、ちゃんと勉強したいことがあるって説明したらわかってくれて、お金も出してくれることになったの」
「よかったじゃん」
「レイは…レイも東京だよね?」
「そうなんだけど…」

何だか歯切れが悪い。夕焼けに照らされた彼の目から今にも涙がこぼれてきそうに見えて、私たちの始まりの日を思い出す。彼は砂浜で泣いてた。

「もしかして、親と意見が合わないの?」
「…親父は弁護士になって自分の跡を継げって言うんだけどさ。俺は…」

私は彼が言葉を継ぐのをじっと待つ。

「作曲家…っていうか、音楽プロデューサーになりたいんだ。自分の曲を作りたい」
「素敵だね」
「でもギャンブルみたいなもんじゃん?才能があるかもわからないのに」
「何かで読んだよ。上を見たら自分よりすごい人はたくさんいる。だけど、”やりたい””やり続けたい”と思えることが何よりの才能だって」

レイはちょっと目を見開いた。

「お父さんと…よく話し合ってみたらどうかな?」
「ありがと」

それが、私とレイの最後の会話だった。

ーーー

その夜、家の電話が鳴って、お母さんが「えっ」という声を上げるのが聞こえた。電話を切ったお母さんはそのまま階段を上がって、私の部屋をノックする。

「ナギ」
「どしたの?」
「落ち着いて聞いてね。高坂レイ君が交通事故に遭って…亡くなったそうよ」

頭が真っ白になった。何かの冗談だと思った。ほんの数時間前まで一緒にいて、喋っていたのに。

お通夜はいつで、お葬式はいつで、どこでやるとか、お母さんの言葉なんて耳に入って来ない。

涙さえ出ない。

気付いたらレイの家で、寝かされているレイの前に立っていて、レイのお母さんに「お別れしてあげて」と声を掛けられていた。

嫌だ。お別れなんてしたくない。

「生き返って」

「なんで」

そう声をかけたくても、言葉ひとつ出てこない。

ただあまりに冷たい彼の身体が、もう私の問いかけには答えてはくれないことを、雄弁に語っていた。

お葬式で「お父さんと喧嘩して、家から飛び出したところを轢かれたらしい」という声が聞こえて、次の日から、私は砂浜に行けなくなった。

私のせいだ。あんな話をしなければ、レイは生きていたかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お人形令嬢の私はヤンデレ義兄から逃げられない

白黒
恋愛
お人形のように綺麗だと言われるアリスはある日義兄ができる。 義兄のレイモンドは幼い頃よりのトラウマで次第に少し歪んだ愛情をアリスに向けるようになる。 義兄の溺愛に少し悩むアリス…。 二人の行き着く先は…!?

君の名を

凛子
恋愛
隙間風は嵐となる予感がした――

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

12年目の恋物語

真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。 だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。 すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。 2人が結ばれるまでの物語。 第一部「12年目の恋物語」完結 第二部「13年目のやさしい願い」完結 第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中 ※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。

俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛

ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎 潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。 大学卒業後、海外に留学した。 過去の恋愛にトラウマを抱えていた。 そんな時、気になる女性社員と巡り会う。 八神あやか 村藤コーポレーション社員の四十歳。 過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。 恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。 そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に...... 八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。

同居人の一輝くんは、ちょっぴり不器用でちょっぴり危険⁉

朝陽七彩
恋愛
突然。 同居することになった。 幼なじみの一輝くんと。 一輝くんは大人しくて子羊みたいな子。 ……だったはず。 なのに。 「結菜ちゃん、一緒に寝よ」 えっ⁉ 「結菜ちゃん、こっちにおいで」 そんなの恥ずかしいよっ。 「結菜ちゃんのこと、どうしようもなく、 ほしくてほしくてたまらない」 そんなにドキドキさせないでっ‼ 今までの子羊のような一輝くん。 そうではなく。 オオカミになってしまっているっ⁉ 。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・* 如月結菜(きさらぎ ゆな) 高校三年生 恋愛に鈍感 椎名一輝(しいな いつき) 高校一年生 本当は恋愛に慣れていない 。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・* オオカミになっている。 そのときの一輝くんは。 「一緒にお風呂に入ったら教えてあげる」 一緒にっ⁉ そんなの恥ずかしいよっ。 恥ずかしくなる。 そんな言葉をサラッと言ったり。 それに。 少しイジワル。 だけど。 一輝くんは。 不器用なところもある。 そして一生懸命。 優しいところもたくさんある。 そんな一輝くんが。 「僕は結菜ちゃんのこと誰にも渡したくない」 「そんなに可愛いと理性が破壊寸前になる」 なんて言うから。 余計に恥ずかしくなるし緊張してしまう。 子羊の部分とオオカミの部分。 それらにはギャップがある。 だから戸惑ってしまう。 それだけではない。 そのギャップが。 ドキドキさせる。 虜にさせる。 それは一輝くんの魅力。 そんな一輝くんの魅力。 それに溺れてしまう。 もう一輝くんの魅力から……? ♡何が起こるかわからない⁉♡

カラフル

凛子
恋愛
いつも笑顔の同期のあいつ。

お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚

ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。 五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。 ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。 年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。 慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。 二人の恋の行方は……

処理中です...