黒狼陛下は人質皇子に抱かれたい

こじまき

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24 孕みたい【ガイセル目線】

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幸せな日々というものは、どうして長く続かないのか。

カエルンブリアの皇帝…つまりマクシスの父親が流行り病であっけなく死に、マクシスの異母弟であるルキウスが帝位についた。その新皇帝から、書簡が届く。嫌な予感しかない。

《カエルンブリアがヴァルグランドに差し出す人質を交代させる》

「やられた…!」

マクシスを人質としてもらいうけるとき、条件はざっくりと「カエルンブリアの皇子であること」だった。冷遇されているマクシスをわざわざ名指しすれば、余計な勘繰りを生んでマクシスを危険にさらす危険があると思ったからだ。「カエルンブリアの皇子」という条件であっても、もっとも血筋で劣るマクシスが差し出されるという見立てもあった。

その「ゆるい条件」をルキウスに利用された。俺は歯噛みする。

《生まればかりの我が子ユリウスをノルへ送るゆえ、マクシスを還すように》

怒りで書簡を握りつぶしそうになり、外交官のシシが慌てて俺の手から書簡を取り上げる。あのクソ野郎は、まだ赤子の息子を…それも正妻たる皇后が産んだ子を差し出してまで、マクシスを取り戻す気なのか。

カエルンブリアの様子を探らせていた間者から「ルキウスがマクシスを蔑みながらも執着している」とは聞いていたが、これは想像を超えている。

「シシ、どうにかならないか」

シシは首を横に振った。わかってる。どうにもならないことは。ルキウスが何を考えているかさえ知らなければ、これはいたって正当な人質交代の要請に過ぎず、ヴァルグランドは拒否できない。拒否するなら戦争になる覚悟で…

マクシスの手がそっと俺の手に触れる。いつものように少しかさついていて、優しい。

「ガイセル、僕は還ります」
「マクシス、カエルンブリアに戻ればどうなるか…」

マクシスは頷いた。諦めたように、悟ったように。

「でも僕のせいでヴァルグランドのみんなに戦争をさせるわけにはいきません」
「ああ、マクシス…」
「僕なりの守り方です。守りたいんです。ここが…ここのみんなが本当に好きですから」

彼はそう言って微笑んだ。決意の光が宿っていて、もう何を言っても変わらないと悟る。

俺にはもう、「最後かもしれない」と思いながら彼に抱かれるしかできない。

「突いてっ…マクシスの形にしてくれっ…ん」
「ガイセル。あなたと過ごした時間は、僕の生涯で最も幸せな日々でした」
「やめろ…そんな言い方…」
「言わせてください。ここで得た思い出だけで、何があってもどこにいても僕は生きていける。生きることを諦めません」

涙がこぼれる。止めようとしても、堰を切ったように溢れてくる。

「ああっ、ガイセル…愛してる、ガイセルッ…」
「俺も愛してる…」
「ガイセルは僕がガイセルを救ったと言ったけど、本当は逆です。ありがとうございます、僕を救ってくれて」

マクシスは名残を惜しむように、何度も何度も俺を抱いて達する。毎回きちんと外に出して。

叶うはずのない、あり得ない望みが頭をもたげる。

「中に出してくれ、マクシス」
「ガイセル、中は…あとが辛くなります」

俺は脚をマクシスの身体に絡ませる。彼が逃げないように。どこにも行かせたくない。

「俺はマクシスの子を孕みたい。孕めたらいいのにっ…この身体にマクシスを残せたら…」
「ああ、ガイセル…っ」
「孕みたい、孕みたいっ…頼む…っ」

なんで俺は女じゃないんだろう。なんで俺は彼の子を宿せないんだろう。ガーネットとブルーサファイアのネックレスが、俺とマクシスの動きに合わせて揺れる。

マクシスは俺の中に精を吐いて果て、カエルンブリアへと還っていった。
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