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悪役ヒロインなんていません
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リリディア様が退場したあと、私はラッセル殿下に抱き寄せられた。
「ピエニ、もう終わった。もうリリディアのことは心配いらない。彼女が何をしてきても、俺が守ってやるからな」
いいえ、まだ終わっていません。リリディア様が望まれているように、仕上げをしないとね。だから言ってください。
小さな唇をほんの少し開き、赤い瞳で熱っぽく殿下を見つめると、彼は私の前で跪く。誰がどう見てもプロポーズの姿勢。婚約破棄の興奮も冷めやらぬ生徒たちが、熱い視線を私たちに注いでいる。
「玉の輿を狙う悪役ピンク髪ヒロイン」がついに目的を果たす。悪役令嬢を退場させた身分の低い男爵令嬢の、成り上がり恋愛劇のクライマックス。
さあ見せ場よ、ピエニ。
「ピエニ、君を心から愛してる。俺と結婚してくれ」
私が涙を一筋流して「はい」と答え、私たち二人が抱き合うのだと、誰もが思っている。
けれど。
「できません」
「…え?」
殿下が間抜けな声を上げる。私は自分に向かって差し出された彼の手を、ぴっと払いのけた。
「王子と男爵令嬢が結婚なんて、できるわけないじゃないですか」
「そ、そんな…!」
ざわめきが広がる。
「それに、感情に振り回されて公爵家のご令嬢との婚約を破棄するような王族と結婚なんて、したくもありません」
私は「そうですよね、ご令嬢方?」と周囲を見回す。生徒たちは目を見開き、誰もが言葉を失っている。
「こんな人と結婚したって、お先真っ暗じゃないですか。それに正直、私と結婚したところでまた浮気するでしょ」
殿下の顔はみるみる赤くなり、怒りと動揺で震え出す。
「ピエニ、俺を侮辱する気なのか…!」
「いいえ。ただ、一国民、一女性として当然の感情をお伝えしているだけですよ」
彼はゆっくりと立ち上がった。
「今までのこと…すべて嘘だったのか。俺を愛していると…」
私は満面の笑みで答える。
「ええ、プライドばっかり高くて口先だけのあなたのことなんて、好きになるはずないじゃないですか。それにリリディア様が私をいじめたっていうのも嘘。あんな高潔で優しい方が、いじめなんてするわけありません」
そしてもう一つ、真実を。
「それにそもそも、マシー男爵ピエニなんて存在すらしませんよ」
そう、玉の輿を狙う悪役ヒロインなんて、最初からいないの。
立ち上がったはずのラッセル殿下は、崩れ落ちた。
「わかります?あなたは身元もわからない女の言葉に踊らされて、婚約破棄まで突っ走ってしまった大馬鹿者だってこと」
笑みが意地悪くなってしまうのを、抑えきれない。
「国王陛下から、どんなお叱りが待ってるでしょうね?」
私は彼に背を向けて、自分がいるべき場所へと帰る。
ただ真っすぐに出口へと向かう自分の足音だけが聞こえた。
「ピエニ、もう終わった。もうリリディアのことは心配いらない。彼女が何をしてきても、俺が守ってやるからな」
いいえ、まだ終わっていません。リリディア様が望まれているように、仕上げをしないとね。だから言ってください。
小さな唇をほんの少し開き、赤い瞳で熱っぽく殿下を見つめると、彼は私の前で跪く。誰がどう見てもプロポーズの姿勢。婚約破棄の興奮も冷めやらぬ生徒たちが、熱い視線を私たちに注いでいる。
「玉の輿を狙う悪役ピンク髪ヒロイン」がついに目的を果たす。悪役令嬢を退場させた身分の低い男爵令嬢の、成り上がり恋愛劇のクライマックス。
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「ピエニ、君を心から愛してる。俺と結婚してくれ」
私が涙を一筋流して「はい」と答え、私たち二人が抱き合うのだと、誰もが思っている。
けれど。
「できません」
「…え?」
殿下が間抜けな声を上げる。私は自分に向かって差し出された彼の手を、ぴっと払いのけた。
「王子と男爵令嬢が結婚なんて、できるわけないじゃないですか」
「そ、そんな…!」
ざわめきが広がる。
「それに、感情に振り回されて公爵家のご令嬢との婚約を破棄するような王族と結婚なんて、したくもありません」
私は「そうですよね、ご令嬢方?」と周囲を見回す。生徒たちは目を見開き、誰もが言葉を失っている。
「こんな人と結婚したって、お先真っ暗じゃないですか。それに正直、私と結婚したところでまた浮気するでしょ」
殿下の顔はみるみる赤くなり、怒りと動揺で震え出す。
「ピエニ、俺を侮辱する気なのか…!」
「いいえ。ただ、一国民、一女性として当然の感情をお伝えしているだけですよ」
彼はゆっくりと立ち上がった。
「今までのこと…すべて嘘だったのか。俺を愛していると…」
私は満面の笑みで答える。
「ええ、プライドばっかり高くて口先だけのあなたのことなんて、好きになるはずないじゃないですか。それにリリディア様が私をいじめたっていうのも嘘。あんな高潔で優しい方が、いじめなんてするわけありません」
そしてもう一つ、真実を。
「それにそもそも、マシー男爵ピエニなんて存在すらしませんよ」
そう、玉の輿を狙う悪役ヒロインなんて、最初からいないの。
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「わかります?あなたは身元もわからない女の言葉に踊らされて、婚約破棄まで突っ走ってしまった大馬鹿者だってこと」
笑みが意地悪くなってしまうのを、抑えきれない。
「国王陛下から、どんなお叱りが待ってるでしょうね?」
私は彼に背を向けて、自分がいるべき場所へと帰る。
ただ真っすぐに出口へと向かう自分の足音だけが聞こえた。
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