玉の輿を狙う悪役ヒロインは不在です。だって私が欲しいのは王子じゃないから

こじまき

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存在しない令嬢

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マシー男爵令嬢ピエニなんて存在しない。

私は孤児院で虐待を受けていたところをリリディア様に助けられ、公爵邸で下働きをしていた、苗字もないただのピエニ。

リリディア様は同い年の私のことを気にかけてくれて、文字や計算を教えてくれ、メイドに格上げしてくれた。そして私はいつも彼女の髪を梳き、紅茶を淹れ、ときにはちょっとした愚痴まで聞いた。

誰よりも気高くて、優しくて、まじめで、勉強熱心で。国のことや民のこと、私には思いもつかないようなことをいつも考えていて。

ラッセル殿下のことなんて本当は好きじゃないのに、婚約者だからと尽くして、ちゃらんぽらんな王子を必死でフォローして。

ラッセル殿下が貴族学園の女子生徒に色目を使ったり浮気したりしてるってわかっても、「気位が高くて口うるさくて、話していると疲れる」と言われても、折れないで。

どれだけ悲しくて悔しくて泣いても、諦めないで。

誰よりも立派で美しくて努力を重ねてきた彼女が苦しむ姿を見ていると、心が千切れそうに痛かった。

「リリディア様、ラッセル殿下との婚約をなかったことにはできないんですか?」
「考えたこともないわ」

リリディア様は諦めていた。だけど私はもう、リリディア様の涙は見ていられなかった。

だからメイドの先輩が夢中になっていた小説を参考に、「身分の低い令嬢と恋に落ち、真実の愛に目覚めた王子が、恋人をいじめた悪役令嬢に婚約破棄を突きつける」というシナリオを考えた。

「ピエニ、うまくいくとは思えないけれど」
「絶対成功させてみせますから。リリディア様には幸せになっていただきたいんです。あのクソ王子の隣で、リリディア様が幸せになれるとは思えません」
「私が努力すれば、彼も改心するかも…」
「どれだけリリディア様が苦労すればあいつは改心するんですか?改心したところで、完全に信じられますか?リリディア様はいつも不安でいなきゃいけないじゃないですか」

私の言葉にリリディア様が小さく頷いてくれたのが、この「ざまぁ計画」の始まりだった。

私はリリディア様からもらったお小遣いで、男爵令嬢の身分を用意。外貨稼ぎのために簡単に爵位を売ってくれる隣国で助かった。

そして貴族学園に編入し、ラッセル殿下の理想通りの「健気で可愛くてちょっとドジっ子で、ひたすらに殿下をよいしょする庶民派令嬢」を演じた。

優秀すぎるリリディア様に勝手に劣等感を募らせていた彼の自尊心をくすぐって、彼の気持ちが自分に傾いてきたのを感じたら、「リリディア様にいじめられている」と嘘の情報を教える。

殿下は「健気で正直で可愛い、俺のピエニ」を簡単に信じ、裏を取りもせずに、リリディア様を悪役だと思い込んだ。

愚かすぎる。そんな王子に、リリディア様は絶対に渡さない。
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