私、貧乏貴族となんて結婚しないから!

こじまき

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7 それでもやっぱりあなたは無理

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ギルバートからはっきりと拒絶されて、ヴィクトリアはふらふらと庭に出た。顔に手をあてて溜息をつく。息が白い。

(寒い…でももう会場にはいたくないし)

カサリと音がして、ルロイの声がした。

「リア、ギルに振られたな」
「見てたのね」
「ああ」

(俺はいつもリアを見てるからな)

「慰めてやるよ」と言って肩を抱くルロイを、ヴィクトリアは振り払う。

「やめて」
「安心しろ、弱ってるところを襲ったりはしない。約束する」

優しい声に、ヴィクトリアはトテンと身体を委ねる。

肩を抱かれ、寄り添っていると温かい。思えば、幼い頃からルロイはいつもそうだった。普段は意地悪なのに、ヴィクトリアが本当に落ち込んでいる時は、こうやってそっとそばにいてくれたのだ。

だから、彼の前では弱音が出てしまう。

「私は王太子妃になりたくて生きてきたのに。平民に負けるなんて…」
「なんのためにギルと結婚したいんだ?」
「最も安定した生活のためよ」
「リア、そんな打算的な結婚に幸せはない。愛がないと…」
「殿下と同じこというのね。愛なんて不要よ。愛はお金を産まないし、安定した生活を約束するものでもない。そもそも、この世界に愛が存在してるかどうかも怪しいわ」

ルロイは肩を抱くのを止め、「おい、リア、いい加減にしろ」とヴィクトリアの顎を指で挟んで、顔を自分の方に向かせた。

真剣な、怒りを含んだ表情にヴィクトリアはドキリとする。

(本気で怒ってる…の?ルロイのこんな顔初めて見た…)

「愛はある。例えば、リアの今のご両親が…ダービートン伯爵ご夫妻がリアを引き取ってここまで育ててくださったのは、愛じゃないのか?同情や義務感だけのはずがない」
「それは…」

ダービートン伯爵が寄宿学校に迎えにきてくれたときの笑顔と涙、そしてそれ以降に与えてくれた温かい家庭的な環境。

子育て経験のない伯爵夫妻にとって、十歳の子ども…それもまったくの他人の子…を引き取ることは勇気がいっただろうに。

伯爵も、伯爵夫人も、ヴィクトリアと一緒に笑い、ときには叱り、ときには一緒に泣いて、手探りで、けれど愛情を注いで本当の親のように育ててくれた。

「そう…かもしれないわ…」
「だろ。それに、俺の中にも愛がある。リアへの愛が」
「え…」
「リア、愛してるんだ。俺は君を愛してる。十歳のときに出会ってからずっと。だから俺と結婚してくれ」

そう言ってルロイはヴィクトリアの頬を両手で挟んで口付けた。

欲望に満ちたそれとは違う、温かくて慈しむようなキス。

キスが終わっても、ルロイは手を離さない。

二人は唇が触れそうな距離で囁きあう。

「嘘よ。小さいことからずっと私をからかっていじめて、この間だって無理やりあんなことして…愛してるだなんて」
「ガキだった。好きなのに素直になれなかったんだ。それに、順序を間違ったのも謝る。六年ぶりに会ったら、仮面をつけててもわかるほど…驚くくらい綺麗になってて、我慢できなかった」

ルロイは赤くなって俯く。

「それに…一回したら止められなくて…家でもその…思い出して想像して…」

今度はヴィクトリアが赤くなって「やめてよ!」とルロイを叩いた。

「とにかく信じてくれ。リアを一生守るといった気持ちは本物だ」

ヴィクトリアは目を閉じた。

自分の胸に聞いてみる。答えは?

(嬉しい。その言葉を信じる)

「愛している人と以外、あんなことはしたくない。こういうことも」と言って、ルロイはヴィクトリアにまた優しくキスする。

(あったかい。ずっとこのままでいたいわ)

けれどヴィクトリアはルロイの身体をそっと押して離れた。

「だめよ。あなたと結婚するなんて考えられない。私は…だってそんなことしたら私の今までの努力は…ごめんなさい、ルロイ」
「リア…」

(安定したお金持ちを捕まえるために今まで血の滲むような努力をしてきたんだもの。もう貧乏生活には戻りたくないの。貧乏人となんて絶対結婚できない)

「肩を貸してくれてありがとう」と言い残してヴィクトリアは会場に戻ろうとするが、ルロイに腕を掴まれて、また隣に座らされる。

「考え直せ」
「無理よ」
「じゃあ身体にわからせてやる」

ルロイはヴィクトリアを抱きしめる。

「やめてっ、何もしないって言ったのにっ」

「リアにキスしたらやっぱり無理だった」と言って、ルロイはもう一度ヴィクトリアにキスする。

今度は深くて欲望に満ちたキスだ。舌を絡められて、ヴィクトリアは吐息を漏らす。

「は…ん…」

(なんでキスだけでこんなに気持ちよくなっちゃうの?続きを期待してしまう自分が恨めしい…)

「好きだろ、俺のキス」
「ん…」
「顔が溶けてる。綺麗だ、リア」

ルロイはヴィクトリアの中に手を入れた。キスで溶かされているから、スルリと入る。

「いや!こんなところでだめっ。誰か来たら…」
「この寒さだ、誰も来ない」
「でも外でなんてっ」
「興奮するだろ?暖まるにもちょうどいい」
「あっ…やだぁ…んんっ」

ヴィクトリアは自分の指を噛んで声が出ないように堪える。

(でも声を抑えれば抑えるほど興奮しちゃう…)

「いいところ、ここか?」
「は…ひっ…」
「ここなのか?」

ヴィクトリアは必死で頷く。ルロイは中に入れる指を増やした。

「ああっ…」
「リア、横向け」

横を向いたヴィクトリアにリロイはキスする。それから首筋のほくろに舌を這わせた。ヴィクトリアの身体がゾクゾクと震える。

(こんなところでだめなのに…誰か来たら私もルロイも終わりだわ…なのにこんなに気持ちよくて…止めたくない)

「んんっああ…」
「指だけでイキそうなのか?」
「ん…」
「イキたいのか?」

ガクガクと頷くヴィクトリアにルロイは「言葉で」と要求する。意地悪な目だ。言わないと終わらない。

「イカせて、お願い」
「何で?」
「んんっ、指でっ」
「どんな指で?どんな風に?」
「ああっもうっ!太くてヤラしい指で中と外と同時に擦って、水音いっぱい立ててイカせてよっ」
「了解」

中と花弁を同時に責められて、ヴィクトリアはベンチの上で頭を大きく後ろにそらしながら達してしまった。

白い息を吐きながら呼吸を整えているヴィクトリアに、ルロイが顔を近づける。

欲情している顔。そしてヴィクトリアに、自分の股間を触らせる。

「悪い、リア…」
「なに…ちょっと待って、まさか…嘘でしょ?」

(だめだめ!こんなところで最後までするなんて!)

「リアのイキ顔見るだけで我慢しようと思ってたけど、無理だ。もう限界」

ルロイはものを出し、暴れるヴィクトリアを組み敷く。

「だめよ、ルロイ」
「だめじゃない。ほんとは欲しいだろ」

(ああ、そうよ。これが欲しい…けど、こんなところでなんて)

「欲しい」などとは言えないヴィクトリアを、ルロイは欲望に満ちた目で見つめ、ニヤリと笑って挿し込んだ。

「ああっ、挿入っちゃっ…んんっんっあ」
「声抑えろ、リア」
「ん…ルロイのばか…」
「そうだ、俺はばかだよ。ばかみたいに愛してる」

突かれて、ヴィクトリアは快楽に溺れていく。身体を痙攣させて、必死で声を抑えるしかできない。

(ああなんで…前より気持ちいい…私、このシチュエーションに興奮してるの?)

「ああ、リア…リアの中最高だよ」

ルロイがヴィクトリアの目を真っ直ぐ見つめながら言う。

「リア、愛してる」
「あっ…ひ…」
「締まった。言われたら嬉しいか?なら何度でも言ってやる。愛してる、リア」
「要らない…」 
「リアが骨の髄から理解するまで言うぞ。愛してる、心から」

「もう要らないってば!」と叫んで目を閉じるヴィクトリアに、ルロイは目を開けて自分を見るように言う。

目をつぶったまま首を振るヴィクトリアの耳に、口を近づける。

「身体はそう言ってない。どんどん締まる。愛してる、愛してるよリア。俺が愛してるのはリアだけだ。これまでもこれからもずっとだ」

(やめて…言わないで…)

「締まってる。絡みついて締めつけてくるよ」
「ああっ…も…だめ…ルゥ…」
「ああ、それは反則だってっ…俺もイク」
「ひ…んっ…ああああっ」

ルロイが精を吐き出し、ヴィクトリアは身体を古させた。

情事の後、ヴィクトリアは化粧と髪をさっと直して、ルロイを睨みつけてそそくさと会場に戻った。

次々に申し込まれるダンスの誘いを、何事もなかったかのようにせっせとさばく。

「アルフレッド様、私などと踊ってソフィア様にお叱りを受けませんこと?」
「ソフィアとは最近疎遠でね」
「あら、でしたら今は私にとってはチャンスかしら?」
「ああ、そうとも」

「まあ、ランス様。あの湖畔の屋敷をお買い求めになったの?前国王陛下がパックスリバー侯爵夫人にお与えになったあのお屋敷を?」
「そうだよ。大枚はたいたが、その価値はあるね。屋敷そのものも景観も素晴らしい」
「ぜひ一度お招きくださいな」
「もちろん!ヴィクトリアなら大歓迎だよ。泊まっていくかい?」
「まあ、それは結婚前の男女にはあるまじきことですわ」
「ヴィクトリアは品行方正だなぁ…何とかガードを崩したいんだけどね」
「ほほ…」
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