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13 私は正しい
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翌週、ヴィクトリアはルロイが言っていた「仕事」の意味を知った。
国王の従弟であるウェセロス公爵…エリザベスの父…が、王位を狙って国王や王太子を暗殺しようとしていたとして捕らえられたのだ。
ルロイは謀反の証拠を得るためにエリザベスに近づき、公爵邸に出入りしていたのだった。いわば潜入捜査だ。
エリザベスも父親に加担して王宮の近衛兵などを味方に引き入れていたとして捕らえられ、ウェセロス公爵家は取り潰された。
「そういうことだったのね」
(でも、それを事前に知っていたとしても何も変わっていなかったわ。どちらにせよ私はレナード様との結婚を選んだでしょう。これまでの努力を無駄にはできない)
レナードが伯爵家に挨拶に来て正式に婚約が決まってからと言うもの、目に見えて言葉数が減ったヴィクトリアを心配して、アビゲイルが話しかける。
「お嬢様、本当にこれで良かったのですか?」
「ええ」
「ルロイ様とお嬢様は愛し合っておられるのに…」
アビゲイルには、ヴィクトリアが誰を愛しているのか、わかっていたのだ。
「愛ではご飯は食べられないのよ、アビゲイル。また借金で苦労するなんて絶対に嫌なの」
(私は彼のいいところを知りながらも、足りない部分を受け入れられなかった。どうしても。でも、それも含めて彼を愛して包み込んでくれる女性がきっといるわ。その方が彼も幸せ)
ランプレヒト公爵レナードとヴィクトリアは、公の場に二人で出席するようになり、ヴィクトリアは王宮内にある公爵邸にも出入りするようになった。
レナードといるときのヴィクトリアは、痛々しいほどに笑顔だ。ルロイのことを振り切ろうと、つとめて朗らかでいようと心掛けている。
ルロイはウェセロス公爵家事件が一段落した後、ギルバートに暇を願い領地に帰ってしまった。ヴィクトリアに会いたくないのだろう。
だからしばらく王都で会う可能性はないのだが、ヴィクトリアの頭の中にはいつもルロイがいて、背の高い黒髪の男性の後姿を見るたびに、「ルロイではないか」と思ってしまうのだ。
そんなヴィクトリアに、レナードは「首を長くして待っていたものが出来上がったんだ」と満面の笑みで話しかける。
「まあ、もしかして…」
「そう、これだよ」
レナードが差し出したのは、婚約指輪。大きな薄い水色の宝石の周りを、同じ色の小さな宝石がぐるりを囲む豪華なデザインだ。
「レナード様、これってまさか…」
「そう、ブルーダイヤモンドだ」
「こんなに大きいもの?それに周りにもこんなにたくさん」
「そうだ。探すのに少し苦労したよ。けれど、ヴィクトリアと言えば青だろう。だからどうしてもブルーダイヤモンドにしたかったんだ」
ダイヤモンドの中で最も希少価値が高いと言われるブルーダイヤモンドがふんだんに使われている。
この指輪ひとつで、屋敷どころか小さな伯爵領くらいなら買い取れそうだとヴィクトリアは息を呑む。
「気に入らない?」
「いえ!いいえ!あまりのことに驚いてしまいましたの。本当に素敵ですわ。こんな婚約指輪を贈られた女性は、この世界にかつて存在しなかったでしょうね」
「そうだろうね」
ヴィクトリアはにっこりと微笑む。
「ねえダーリン、はめてくださいますか?」
ダーリンと呼ばれてにんまりしたレナードが、「いいとも」とヴィクトリアの指に指輪をはめる。
「ぴったりですわ」
「よかった」
「手首ごと斬り落として奪われたりしないように気を付けますわ」
「ははは、物騒だね」
レナードはそのままヴィクトリアの手を引いて抱き寄せ、キスをした。
「これでわかったか?私は金に糸目はつけない。ヴィクトリアが喜ぶなら」
「ええ、大変よくわかりました」
「この屋敷も、ヴィクトリアの好きなように改装して構わない。亡くなった妻の趣味だから、少し古臭いだろう」
「そうですわね…今の雰囲気も素敵ですけれど、モダンにしてもいいかもしれません。いずれまた」
(万々歳じゃない、ヴィクトリア。レナード様は全て私のやりたいようにさせてくださる。そうよ、私の選択は間違ってないわ…私は正しい。正しい選択をしたのよ)
レナードが湿った雰囲気を纏ってヴィクトリアにキスをする。
首筋から鎖骨に舌が這い、ヴィクトリアは目を閉じた。
「このほくろ、セクシーだな」
その言葉がルロイを思い起こさせる。
(嫌だ…ルロイ以外にキスされるなんて…)
「今日はここに泊まるか?」
ヴィクトリアは目を開けて、精一杯の笑顔を引っ張り出して「いいえ」と言う。
「結婚まではお待ちになって。私を大切に想ってくださるなら。ね?」
「わかった。私の妻は身持ちが固いようだ」
「ええ。そのほうが安心でございましょう?」
「ああ。待つのも楽しみというものだ」
レナードが頬にキスをして、ヴィクトリアは彼にわからないようにふっと息を吐いた。
(いつかはレナード様と夜を過ごすときが来る。心の準備をしておかなきゃ)
国王の従弟であるウェセロス公爵…エリザベスの父…が、王位を狙って国王や王太子を暗殺しようとしていたとして捕らえられたのだ。
ルロイは謀反の証拠を得るためにエリザベスに近づき、公爵邸に出入りしていたのだった。いわば潜入捜査だ。
エリザベスも父親に加担して王宮の近衛兵などを味方に引き入れていたとして捕らえられ、ウェセロス公爵家は取り潰された。
「そういうことだったのね」
(でも、それを事前に知っていたとしても何も変わっていなかったわ。どちらにせよ私はレナード様との結婚を選んだでしょう。これまでの努力を無駄にはできない)
レナードが伯爵家に挨拶に来て正式に婚約が決まってからと言うもの、目に見えて言葉数が減ったヴィクトリアを心配して、アビゲイルが話しかける。
「お嬢様、本当にこれで良かったのですか?」
「ええ」
「ルロイ様とお嬢様は愛し合っておられるのに…」
アビゲイルには、ヴィクトリアが誰を愛しているのか、わかっていたのだ。
「愛ではご飯は食べられないのよ、アビゲイル。また借金で苦労するなんて絶対に嫌なの」
(私は彼のいいところを知りながらも、足りない部分を受け入れられなかった。どうしても。でも、それも含めて彼を愛して包み込んでくれる女性がきっといるわ。その方が彼も幸せ)
ランプレヒト公爵レナードとヴィクトリアは、公の場に二人で出席するようになり、ヴィクトリアは王宮内にある公爵邸にも出入りするようになった。
レナードといるときのヴィクトリアは、痛々しいほどに笑顔だ。ルロイのことを振り切ろうと、つとめて朗らかでいようと心掛けている。
ルロイはウェセロス公爵家事件が一段落した後、ギルバートに暇を願い領地に帰ってしまった。ヴィクトリアに会いたくないのだろう。
だからしばらく王都で会う可能性はないのだが、ヴィクトリアの頭の中にはいつもルロイがいて、背の高い黒髪の男性の後姿を見るたびに、「ルロイではないか」と思ってしまうのだ。
そんなヴィクトリアに、レナードは「首を長くして待っていたものが出来上がったんだ」と満面の笑みで話しかける。
「まあ、もしかして…」
「そう、これだよ」
レナードが差し出したのは、婚約指輪。大きな薄い水色の宝石の周りを、同じ色の小さな宝石がぐるりを囲む豪華なデザインだ。
「レナード様、これってまさか…」
「そう、ブルーダイヤモンドだ」
「こんなに大きいもの?それに周りにもこんなにたくさん」
「そうだ。探すのに少し苦労したよ。けれど、ヴィクトリアと言えば青だろう。だからどうしてもブルーダイヤモンドにしたかったんだ」
ダイヤモンドの中で最も希少価値が高いと言われるブルーダイヤモンドがふんだんに使われている。
この指輪ひとつで、屋敷どころか小さな伯爵領くらいなら買い取れそうだとヴィクトリアは息を呑む。
「気に入らない?」
「いえ!いいえ!あまりのことに驚いてしまいましたの。本当に素敵ですわ。こんな婚約指輪を贈られた女性は、この世界にかつて存在しなかったでしょうね」
「そうだろうね」
ヴィクトリアはにっこりと微笑む。
「ねえダーリン、はめてくださいますか?」
ダーリンと呼ばれてにんまりしたレナードが、「いいとも」とヴィクトリアの指に指輪をはめる。
「ぴったりですわ」
「よかった」
「手首ごと斬り落として奪われたりしないように気を付けますわ」
「ははは、物騒だね」
レナードはそのままヴィクトリアの手を引いて抱き寄せ、キスをした。
「これでわかったか?私は金に糸目はつけない。ヴィクトリアが喜ぶなら」
「ええ、大変よくわかりました」
「この屋敷も、ヴィクトリアの好きなように改装して構わない。亡くなった妻の趣味だから、少し古臭いだろう」
「そうですわね…今の雰囲気も素敵ですけれど、モダンにしてもいいかもしれません。いずれまた」
(万々歳じゃない、ヴィクトリア。レナード様は全て私のやりたいようにさせてくださる。そうよ、私の選択は間違ってないわ…私は正しい。正しい選択をしたのよ)
レナードが湿った雰囲気を纏ってヴィクトリアにキスをする。
首筋から鎖骨に舌が這い、ヴィクトリアは目を閉じた。
「このほくろ、セクシーだな」
その言葉がルロイを思い起こさせる。
(嫌だ…ルロイ以外にキスされるなんて…)
「今日はここに泊まるか?」
ヴィクトリアは目を開けて、精一杯の笑顔を引っ張り出して「いいえ」と言う。
「結婚まではお待ちになって。私を大切に想ってくださるなら。ね?」
「わかった。私の妻は身持ちが固いようだ」
「ええ。そのほうが安心でございましょう?」
「ああ。待つのも楽しみというものだ」
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(いつかはレナード様と夜を過ごすときが来る。心の準備をしておかなきゃ)
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