私、貧乏貴族となんて結婚しないから!

こじまき

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14 青い餞別

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ヴィクトリアの結婚の準備が着々と進む中、王都屋敷にいるルロイの父、ノーフォーク伯爵が青い顔をしてダービートン邸にやってきた。

「使用人に暇を出すことにしたので、何人かダービートン邸で雇ってもらえないか」とヴィクトリアの養父に頼みに来たのだ。

「ノーフォークのおじ様、そんなに経済状況が悪いのですか?」
「ああ、そうなんだ。破産は目の前だよ。王都の屋敷も領地の本邸も抵当に入っているんだ。ルロイには本当に悪いことをした。今領地で農業指導や鉱山開発などを指揮してくれているんだが…ルロイの努力も無駄になってしまうだろう」
「そんな…」

(ルロイは伯爵家を立て直そうと頑張っているのに…)

「王都屋敷では二人、領地の本邸なら三人雇える」とダービートン伯爵から返事をもらったノーフォーク伯爵は、少し顔色を良くして帰っていった。

部屋に戻ったヴィクトリアは左手の薬指をじっと眺めて、口の堅さに定評のある宝石商を呼んだ。

生活に困った貴族から、高く宝石を買い取ってくれることで有名な男だ。

宝石商は彼女から渡されたものを凝視して「申し訳ございません、汗が…これほどのものは見たことがございません」と目を丸くする。

「ヴィクトリア様、本当にこれを?こんな素晴らしいものを?よろしいのですか?」
「ええ。元がこの指輪だと絶対わからないようにばらして、宝石を売ってほしいの。できれば国内ではなく外国で」
「相当な額になります」
「ええ、わかってるわ。すぐ売れそうかしら?」
「ええ、これだけ希少価値の高いものでしたらすぐにでも。ちょうどシュラーベンの王族からブルーダイヤモンドを探してほしいと依頼があったところですし」
「よかったわ。できるだけ高く売ってちょうだい」
「ええ、それはもう」

「けれど、本当に本当に本当によろしいのですか?」「これほどのものは二度と手に入りませんよ」と宝石商は何度も確認して、ヴィクトリアから婚約指輪を預かって帰っていった。

(私からのお餞別よ、ルロイ)

翌週、ノーフォーク伯爵家に匿名の誰かから多額の現金が届き、伯爵家はあっさり借金を完済した。

そしてヴィクトリアはわざと手を震わせながらレナードに手紙を書く。

「大切な婚約指輪を失くしてしまった、合わせる顔がない。どんなお詫びでもする」と。

書き終わった手紙にぽたぽたと水を垂らして、泣きながら書いたように見せる。

「怒っていないから屋敷においで」と返事が届き、ヴィクトリアは申し訳なさを前面に出した顔を鏡の前で猛特訓してから公爵邸に向かう。目薬を点し、瞳の潤みも完璧だ。

「レナード様…私…申し訳ございません…」
「可愛い、ヴィクトリア。泣かないで。怒っていないといっただろう」
「でも、大切な大切な指輪を…レナード様からの愛の証ですのに…」

「いいんだ、ヴィクトリア。指輪などただの物だ。伯爵邸に泥棒が入ったとして、君に怪我がなくて良かった」とレナードはヴィクトリアを抱きしめる。年相応に出た腹が、彼女との隙間をぴたりと埋める。

「けれど、うっかりさんには少しお仕置きをしなくてはいけないね」
「お仕置き…?」
「そう」

レナードはヴィクトリアの腰を掴んで、四つん這いにさせる。

「レナード様、結婚まではっ」
「そういうことはしないよ、ヴィクトリア。お尻を叩いてあげるだけ」
「えっ…」
「お尻を出して」
「ひ…やっ…鞭!?」

(レナード様、そういう趣味なの!?ルロイとならやってみたいけど…私が鞭を振るう方で。って、いや、そんなことを考えてる場合じゃないっ!)

「見た目や音ほど痛くないから大丈夫。私が全部教えてあげる。ちょうど結婚前に適性を試しておきたくてね。ああヴィクトリア、想像していた通りの綺麗な身体だ。赤みがきれいに出るだろうねぇ…」

(嫌、嫌、触らないで…!)

レナードの指が太腿を這う感触に、ヴィクトリアはただひたすら「早く終わって」と思いながら耐える。

レナードが鞭を振りあげ、ヴィクトリアが目をつぶったとき、部屋の外から「旦那様、王太子殿下がお見えです」と声がした。

「あーあ」と言いながら、レナードは立ち上がる。

「ヴィクトリア、続きはまた今度。今は一緒にギルバートに挨拶を」
「はい…」
「服装を整えて」
「ええ」

ほっとしながらギルバートに挨拶をして、ヴィクトリアはそそくさと後ろに下がる。

(殿下に救われたわ…でも本当に、いつかは続きをしなきゃいけないのね。こういうプレイもカーラ様に教えてもらわなきゃいけないかしら)

一通りレナードとの話が終わったギルバートは「ヴィクトリア、折り入って話がある。執務室に寄ってくれないかな。公爵、構いませんよね」とヴィクトリアを連れ出した。

「顔色が悪い。何かあったか?大丈夫か?」
「大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
「ヴィクトリア、本当にあの人と結婚していいのか?今ならまだ戻れる。ヴィクトリアが望まないのなら、結婚の申請を却下できる」

王家の血を引くレナードの結婚にあたっては、王族たちの許可が必要なのだ。ギルバートはそれを許可しないことができるとヴィクトリアに告げた。

「いいえ、殿下。私はレナード様と結婚いたします。私が望んだことなのです」
「本当に?」
「ええ…」

ギルバートはヴィクトリアを見送ってから溜息をつく。

「ルロイから聞いてた通りの強情だな」

(ヴィクトリアが公爵と婚約してしまったのは、私がルロイに頼んだ仕事のせいでもあるからな。何とか罪滅ぼししたいが、どうしたものか)
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