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13 子だくさんになりつつある
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疲れていたのだろう、ご飯を食べてお風呂に入ったら、男性も男の子もすぐ眠ってしまった。男性のパジャマはおじいちゃんから借りたのでつんつるてんだが、ないよりましだろう。男の子にはクリスタちゃんのネグリジェを着てもらったら、可愛すぎた。
「サティ、あいつら、いつまで置いとくつもりだ?」
「お父さんの体調がしっかり回復するまでだね」
「いつになるかわからないじゃないか」
うん、これは。知らない人が泊ってて不安なのもあるだろうけど、家族の日常やバランスが壊れそうで怖がっているんじゃないかな。私は「大丈夫」とテオくんを抱きしめた。途端にテオくんは真っ赤になって離れる。
「急に…っ!なんだよ!?」
「不安なのかなと思って。大丈夫、私たちは家族でしょ。あの人たちがしばらく滞在したところで何も変わらないよ」
「家族…」
「うん、家族」
テオくんの真っ赤な目を覗き込む。ルビーのようで本当にきれいだ。出会ったときの刺すような鋭い光は消えて、あたたかな灯りのような赤になっている。照れ臭いのか、彼はふいっと顔を背けた。思春期男子だねぇ。おやすみ。
翌朝、高貴な男性はビシッともともとの服に着替えて起きてきて、テオくんが火魔法を上手に使ってお湯を沸かしているのを見て目を丸くする。「上手に魔力を使っているでしょ。ここへ来てから魔力暴走を起こしたことはないんですよ」と説明すると、彼は静かに頷いた。
創造神さんにリクエストした「瓶の中で無限に生成されるお高めインスタントコーヒー」を出すと、「何だ、この黒い飲み物は」と言いながら恐る恐る匂いを嗅ぎ、最初にちょっと口をつけ、それから目を見開いて飲み干した。この世界に新たなカフェイン中毒者が誕生したことを祝す。
コーヒーのお代わりを注いであげると、彼は今度はゆっくりと口をつけて、マグを置いた。その所作ひとつひとつが上品だ。
「サティ殿、折り入ってお願いがあるのだが」
「なんでしょうか」
「どうか何も聞かずに、あの子を…レオを、ここで預かっていただけないか」
「…お父さん、それはできません」
何も聞かずに預かるだなんて、できるわけない。
預かるなら最低でも、親御さんの名前、住所、緊急連絡先、持病、アレルギーの有無、いつお迎えが来るのかなどなど知らせておいてほしいことがある。レオくんが「自分は捨てられて、迎えが来るあてがない」なんて思われないように。
彼は「アロイス・ヴィルヘルム」と名乗り、「アロイスと呼んでほしい」と言った。変な間があったから偽名かもしれないけど、まあよしとする。
「ご住所は?」
「家は…今は決まった家はない」
「ではレオくんに何かあってご連絡したいときはどうすれば?」
「ベルント伯爵に連絡してくれればいい」
「ここの大領主の、伯爵様にですかっ!?」
「そうだ」
「伯爵様とお知り合いなら、ここじゃなくて伯爵様のお屋敷で預かってもらえばいいんじゃないですか?ここよりずっと快適でしょ?知らんけど」
「目立つのは困るのだ。誰にも知られず安全で安心できる場所に預けたい」
え、なに?実はアロイスさんにはレオくんのお母さんのほかに奥様がいて、レオくんは不倫の末に生まれた隠し子だとか?なにしてくれてんの、このイケメン。イケメンだからって許されないんだけど。
「できるだけ早く引き取れるように努力する。それに、できるだけ頻繁に会いに来る」
うん。隠し子だけどちゃんと認知して引き取ろうとしているのね。それなら、まあ…
「わかりました。では責任をもってお預かりしますね」
アロイスさんはほっとしたように微笑んで、私の手をとった。
その笑みが反則級に光を纏っていて、うちでお風呂に入ってうちの石鹸を使ったはずなのに、嗅いだこともないいい匂いがして、心臓が変な音を立てたのは秘密。園児の保護者にときめくなんて罪深い。
「報酬はあの金貨で大丈夫だろうか。追加で必要なら…」
「大丈夫です!あれだけあれば、十分すぎるほど十分にやっていけます!」
「サティ殿、あなたに会えて本当によかった」
ああもう、そういうセリフをその顔で私の手を優しく握って、額に押し付けながら言わないで。会ったばかりで別に好きでもない不倫野郎なのに、ついドキッとしてしまう。
アロイスさんはレオくんと長い時間話し合って、長い時間抱き合って、私の前で跪いて手の甲にキスをしてここから去って行った。一連の流れで受け入れてしまったけど、手の甲にキスって何?
まだ手の甲に熱を感じつつ、ぼんやりとアロイスさんを見送りながら「レオくん、大丈夫だからね」というと、レオくんが小さな手で私の手をぎゅっと握ってくれて、我にかえる。ぼんやりしている場合じゃない。この子をしっかり育てないと。
こうして、私たちの家族は、またひとり増えた。おじいちゃんとおばあちゃんが笑う。
「サティ、また子どもを拾ったのかい?」
「拾ったんじゃないよ、預かったの」
「ふふ、どっちにしても子だくさんだね」
「…そうだね」
「サティ、あいつら、いつまで置いとくつもりだ?」
「お父さんの体調がしっかり回復するまでだね」
「いつになるかわからないじゃないか」
うん、これは。知らない人が泊ってて不安なのもあるだろうけど、家族の日常やバランスが壊れそうで怖がっているんじゃないかな。私は「大丈夫」とテオくんを抱きしめた。途端にテオくんは真っ赤になって離れる。
「急に…っ!なんだよ!?」
「不安なのかなと思って。大丈夫、私たちは家族でしょ。あの人たちがしばらく滞在したところで何も変わらないよ」
「家族…」
「うん、家族」
テオくんの真っ赤な目を覗き込む。ルビーのようで本当にきれいだ。出会ったときの刺すような鋭い光は消えて、あたたかな灯りのような赤になっている。照れ臭いのか、彼はふいっと顔を背けた。思春期男子だねぇ。おやすみ。
翌朝、高貴な男性はビシッともともとの服に着替えて起きてきて、テオくんが火魔法を上手に使ってお湯を沸かしているのを見て目を丸くする。「上手に魔力を使っているでしょ。ここへ来てから魔力暴走を起こしたことはないんですよ」と説明すると、彼は静かに頷いた。
創造神さんにリクエストした「瓶の中で無限に生成されるお高めインスタントコーヒー」を出すと、「何だ、この黒い飲み物は」と言いながら恐る恐る匂いを嗅ぎ、最初にちょっと口をつけ、それから目を見開いて飲み干した。この世界に新たなカフェイン中毒者が誕生したことを祝す。
コーヒーのお代わりを注いであげると、彼は今度はゆっくりと口をつけて、マグを置いた。その所作ひとつひとつが上品だ。
「サティ殿、折り入ってお願いがあるのだが」
「なんでしょうか」
「どうか何も聞かずに、あの子を…レオを、ここで預かっていただけないか」
「…お父さん、それはできません」
何も聞かずに預かるだなんて、できるわけない。
預かるなら最低でも、親御さんの名前、住所、緊急連絡先、持病、アレルギーの有無、いつお迎えが来るのかなどなど知らせておいてほしいことがある。レオくんが「自分は捨てられて、迎えが来るあてがない」なんて思われないように。
彼は「アロイス・ヴィルヘルム」と名乗り、「アロイスと呼んでほしい」と言った。変な間があったから偽名かもしれないけど、まあよしとする。
「ご住所は?」
「家は…今は決まった家はない」
「ではレオくんに何かあってご連絡したいときはどうすれば?」
「ベルント伯爵に連絡してくれればいい」
「ここの大領主の、伯爵様にですかっ!?」
「そうだ」
「伯爵様とお知り合いなら、ここじゃなくて伯爵様のお屋敷で預かってもらえばいいんじゃないですか?ここよりずっと快適でしょ?知らんけど」
「目立つのは困るのだ。誰にも知られず安全で安心できる場所に預けたい」
え、なに?実はアロイスさんにはレオくんのお母さんのほかに奥様がいて、レオくんは不倫の末に生まれた隠し子だとか?なにしてくれてんの、このイケメン。イケメンだからって許されないんだけど。
「できるだけ早く引き取れるように努力する。それに、できるだけ頻繁に会いに来る」
うん。隠し子だけどちゃんと認知して引き取ろうとしているのね。それなら、まあ…
「わかりました。では責任をもってお預かりしますね」
アロイスさんはほっとしたように微笑んで、私の手をとった。
その笑みが反則級に光を纏っていて、うちでお風呂に入ってうちの石鹸を使ったはずなのに、嗅いだこともないいい匂いがして、心臓が変な音を立てたのは秘密。園児の保護者にときめくなんて罪深い。
「報酬はあの金貨で大丈夫だろうか。追加で必要なら…」
「大丈夫です!あれだけあれば、十分すぎるほど十分にやっていけます!」
「サティ殿、あなたに会えて本当によかった」
ああもう、そういうセリフをその顔で私の手を優しく握って、額に押し付けながら言わないで。会ったばかりで別に好きでもない不倫野郎なのに、ついドキッとしてしまう。
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まだ手の甲に熱を感じつつ、ぼんやりとアロイスさんを見送りながら「レオくん、大丈夫だからね」というと、レオくんが小さな手で私の手をぎゅっと握ってくれて、我にかえる。ぼんやりしている場合じゃない。この子をしっかり育てないと。
こうして、私たちの家族は、またひとり増えた。おじいちゃんとおばあちゃんが笑う。
「サティ、また子どもを拾ったのかい?」
「拾ったんじゃないよ、預かったの」
「ふふ、どっちにしても子だくさんだね」
「…そうだね」
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